文芸広報:2002年06月分


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文芸広報:2002年06月分


文芸広報:銅大の読書万歳:邪馬台国はどこですか?

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銅大の読書万歳:邪馬台国はどこですか?

■銅大の読書万歳(57)
作品名:邪馬台国はどこですか?
作者:鯨統一朗
出版:創元推理文庫
ISBN:4-488-42201-2

 邪馬台国はどこにあったか?
 大上段に構えると、喧嘩腰にならざるをえないこの話題。あれやこれやと史
書やら古墳やら遺跡やらを引っ張り出してああだこうだとがなりあう羽目にな
る。

 それを酒場の馬鹿話にしてしまったところに、この作品の勝因がある。

 登場人物は四人。
 酒場のバーテンダーで、歴史には素人。読者視点をつとめてくれる松永。
 探偵役で、ひょうひょうとしたそぶりながら、切れ者の宮田六郎。
 その宮田と丁々発止の掛け合いをしながら物語を進行させる早乙女静香。
 宮田と静香の間に立ち、中立な立場で歴史の蘊蓄を補完する三谷教授。

 物語はこの四人が酒を飲み肴をつまんで(松永は出す立場であるが)歴史バト
ルを繰り広げる形式をとっている。

 あれですな。ミステリとしては読書万歳第18回で紹介した『黒後家蜘蛛の会』
にたいへん近い。ユーモア系で短編であるところも一緒だ。どうにも私はこう
いうのに弱いらしい。

 扱われる歴史の題材がまたふるっている。一本ずつ紹介していこう。

■「悟りを開いたのはいつですか?」
 アジア圏を中心に広く信仰されている宗教、仏教。
 その仏教の開祖である仏陀はいつ悟りを開いたのか。
 宮田六郎は一刀両断に切って捨てる。
「仏陀は悟りを開いてなんかいないよ」
 おいおい、そりゃあちょっと待ってくれ。「仏」陀が悟りを開いたから「仏」
教なんじゃないのか?
 歴史バトル、開幕、開幕。

■「邪馬台国はどこですか?」
 三世紀に日本を代表する国家であったはずの邪馬台国。これがどこにあった
のかは、実はまだ分かっていない。
 まぁ大きく分けて九州説と畿内説に分類され、今でもいろいろと本や学説が
発表されていたりなんかする。
 そこで宮田六郎が一言。
「邪馬台国は東北にあった」
 などとぬかすものだから、喧喧諤諤のおおさわぎ。

■「聖徳太子はだれですか?」
 かつて日本のお札にも印刷されていたほどの日本史上の代表人物、聖徳太子。
 小学生でも知っているこの人物に対しても宮田六郎は容赦がない。
「聖徳太子は架空の人物だった」
 はい? じゃあ法隆寺を建てたのはいったい誰なんだ?
 日本最古の史書の一つ、日本書紀に隠された真実に対し、宮田六郎が迫る。

■「謀反の動機はなんですか?」
 明智光秀の本能寺の変によって、織田信長は日本統一の寸前にその一生を終
えた。
 突然とも言える、光秀謀反の理由は何か。
 その背後で、誰か別の人物がうごめいていたのではないか。
 しばしば取りざたされる陰謀説を歯牙にもかけずに宮田六郎。
「信長の死は自殺だった」
 そりゃなんぼなんでも突拍子すぎやしませんかー?!

■「維新が起きたのはなぜですか?」
 明治維新。
 Googleでこの単語で検索するといきなり56800件もヒットする近代日本の大
革命。
 坂本龍馬、西郷隆盛、高杉晋作などなど実に魅力的なキャラクターも勢揃い
のこの明治維新。
 ちなみに私は大村益次郎が好きなんだけどね。「いやー今日は暑いですねー」
と挨拶されて「夏は暑いのが当たり前です」などと大まじめに答える天才軍略
家なんだけど。
 これら絢爛豪華な維新の元勲たちをさしおいて。宮田六郎が大まじめに、
「明治維新はたった一人の人物によって成し遂げられた」
 なんて言っちゃうもんだからまたまた話は盛り上がってくる。

■「奇跡はどのようになされたのですか?」
 えーと。
 さすがにこれはやばいんじゃないだろーか。
 なんといってもお題が十字軍やら宗教裁判やらで悪名高い(おい)キリスト教
である。
 しかも、その要とも言うべきイエスの復活である。
 たとえ信じてなくても黙っていればいいものを、宮田六郎は堂々と持論を展
開する。
「イエスの復活は真実だった」
 だから黒い物も白と……は? 真実ですと?

 このように。
 いずれもひねりのきいた逸品ぞろい。あなたも登場人物たちと一緒に酒を飲
みながら、歴史に思いをはせてみてはどうだろうか。


銅大(あかがね・だい):週末ライター     mailto:akagane@mb.infoweb.ne.jp
著者ページ: 銅大のRPGてんやわんや    http://www.trpg.net/user/akagane/



sfよりコメント

 たしかに「酒場の馬鹿話にしてしまったところに、この作品の勝因がある」
というのはいい視点だなあと感心してしまいました。


 創元推理文庫『邪馬台国はどこですか?』鯨統一郎
 ISBN4-488-42201-2 本体価格520円 文庫判316ページ 発行年月1998年05月発行
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-sf0023&bibid=01568478
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488422012/trpgnet0e-22

 酒場での歴史漫談という形式の歴史ミステリ。
 突拍子もなく見える結論を、歴史事実や文献をうまいこと利用して、それら
しく見せてしまう剛腕ぶりがステキ。ミステリってのは隙きのない組み立てよ
りも、それらしく思えてしまうように情報を提供、論理を組みたてることにあ
るんだなあと痛感しました。


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文芸広報:銅大の読書万歳:惑星カレスの魔女

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銅大の読書万歳:惑星カレスの魔女

■銅大の読書万歳(58)
作品名:惑星カレスの魔女
作者:ジェイムズ・H・シュミッツ
出版:創元推理文庫
ISBN:4-488-70801-3

 正直に告白しよう。
 本書がかつて新潮文庫から出版された時に、購入したのは表紙のイラストが
宮崎駿さんだったからである。
 しかしながら。
 もしも今、私がこの本を二冊とも(そうです。同じ本と知りながら創元推理
版も買いました)なくした場合どうするか。
 私は表紙がついていようがなかろうが、ためらわずに買い直すだろう。

 それだけの価値が、この本にはあると思うからだ。

 とはいえ。

 題材がすごいっ! とか
 驚天動地のどんでん返しがっ! とか
 本に麻薬が仕掛けられていてつい次の頁をめくりたくなるぅ! とかいった

 もう、読まずにはいられない本というわけではない。

 ネタは普通で。
 キャラも普通で。
 展開も普通で。
 オチも普通である。

 なるように流れていって、最後はなるようになっちゃうのである。読み手と
してはただ、流されるがままにページをめくっていけばよろしい。

 ただそれだけの事が、快感になるのである。

 いったいどんな本なんだ、と不安に思っている諸兄のために、とりあえず、
この作品にレッテルだけでもはっておこう。

 「癒し系スペースオペラ」(ぺったり)

 物語は次のように始まる。

 借金を返すために、商業宇宙船で商売の旅を続ける主人公のパウサート船長
は、無事、金もたまりはれて故郷へと凱旋する途中の星で。
 惑星カレスの魔女(ウィッチ)と関わり合いになってしまう。
 この三人の魔女、いずれも幼い少女たちであるが、それゆえに魔法の力(超
能力)の使いどころをしょっちゅう間違える。おかげでパウサート船長の生活
はしっちゃかめっちゃかにかき回される。商売の儲けもふいになる。あげく船
長は故郷の婚約者にも裏切られ、ただ一人失意の船出……とはならない。
 三人の魔女の一人。10才のゴスが密航していたのである。
 10才の少女というのは、おわかりいただけるかと思うが怖い物なしである。
 それが10才の魔女ときた日には、地獄の閻魔大王だって避けて通るだろう。
 その10才の魔女が、パウサート船長に堂々と宣言する。

 これから自分がそばにいるから大丈夫だと。

 どのくらいの期間いるのかというと、その答えがもうふるっている。

「わたしが結婚適齢期になる寸前までよ!」
「ああ、そりゃ、まあ……」 #男性諸君。この場合他に何が言えるかね?#
「わたしは全部決めたの」
「みんながカレスであなたに奥さんを見つけてやらなければいけない、と話を
はじめたときからよ。わたしはすぐに、わたしがなるわ、って言ったの」

 かくして、世の中にちょっとうといが掛け値なしに善人なパウサート船長と、
その『保護者』であるゴスによる、冒険の旅が始まるのである。
 波瀾万丈、アクションシーン満載とは言わないが、レッテルで書いたように
『癒し系』であるため、安心して読む事ができる。

 刺激の強い、とんがった作品ばかり読んで疲れた脳をリフレッシュさせるの
に最適の一冊。

 あなたの本棚にもどうだろうか。


銅大(あかがね・だい):週末ライター     mailto:akagane@mb.infoweb.ne.jp
著者ページ: 銅大のRPGてんやわんや    http://www.trpg.net/user/akagane/



sfよりコメント


 創元SF文庫『惑星カレスの魔女』著:ジェイムズ・H・シュミッツ 訳:鎌田三平
 ISBN4-488-70801-3 本体価格700円 文庫判429ページ 1996年11月発行
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-sf0023&bibid=01364499
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488708013/trpgnet0e-22

 どんどんエスカレートする事態、次々あらわれる強敵と襲いかかる窮地。そ
れを知恵と度胸と意外な力でどんと片づけていく。小気味良いスペースオペラ。
 いまだとライトノベル系のお手本ともなる作品ですね。まあ原作は1966年、
最初に翻訳されたのも1987年。実際これに感銘を受け影響を受けた作家も多い
のではないでしょうか。


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創刊: 1997年07月15日 発行間隔: 毎週火金曜日情報号+随時
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