書籍雑談所 LOG 002

書籍雑談所の2000年02月05日から2000年08月12日までのログです。


2000年08月12日:08時34分16秒
『MISTERジパング:1』(椎名高志) / 銅大
 
 戦国時代の英雄、豊臣秀吉の若い頃を描いた歴史 漫画……か? そう見せかけた歴史改変SFか?
 どうも、なんとなく後者のよーな気分が。
 
 いずれにせよ、戦国時代について「分かった上で ホラを吹いている」という感触が実にGOOD。
 
 特に、そのへんは登場人物のセリフ回しに現れて おりまして、基本は標準語です。名古屋弁なんか使 いません。現代語や外来語もガンガン使います。
 
 で、その上で、たとえば忍者について
 
「『情報屋』とか『情報戦術・戦略家』ぐらいがも ともとのニュアンスかな。今の時代、旅人や行商人 の話ってのはものすごく貴重な情報だから、それに 通じてることはすごい利点よ」
 
 などとヒロインの女の子に喋らせたりしておりま す。
 
 また、蜂須賀一家を木曽川沿いの土豪として登場 させて主人公(日吉)とコネはらせてたり。(こー ゆーのが後の「墨俣の一夜城」ネタに生きてくる)
 先が楽しみな作品であります。
2000年08月10日:13時38分51秒
『日経サイエンス9月号』 / 銅大
 
 サイエンスとありますが、博物学的なところもあり、 内容は面白いです。
 
 今回の特集は二つ。
・ニュースでも話題の『ヒトゲノム解読 次の展開』
 
 解析技術などの話が掲載してあります。
 この技術を市場経済の元で発展させていくと──
 金持ちだけが自分や子供の遺伝子をいじって、壮健 で知的水準が高く、寿命が長く、美しい存在になると いうデストピアな未来が(笑)
 
・サイエンスとはちょっと違う『様相変わる戦争』
 
 内戦や民族紛争が主体になったりして、これまでの 国家が政治の延長で行ってきた戦争とは様相が変わっ てきている近年の戦争にスポットをあてています。
 巻き込まれた民間人の死傷のトップは『突撃用ライ フル』──素直に『アサルト・ライフル』と書けばい いのに──だそうです。AK47はアンゴラで15ド ルで中古品が購入可能だとか。
 他にも、子供の兵士(なんと7才とかも!)の話が 出ており、戦争のイヤな面がたくさん見られます。
2000年08月08日:23時22分12秒
『本番台本』(ギャビン・ライアル) / 銅大
 
 『本番台本』(ギャビン・ライアル/ハヤカワ・ミステリ文庫)
 
 この本は、航空冒険小説の傑作です。
 
 内容はそれほど複雑ではありません。
 自家用の双発プロペラ機をローンを払いながら
(なんともトラベラー的です)中米/南米で飛ばし ている、元イギリス空軍のパイロットが主人公。
 
 朝鮮戦争でもミグを3機撃墜したことがある、 なんともプロフェッショナルな感じのする男です。
 
 で、この男が自分の思惑とは別に、とある小国 の内乱に巻き込まれてしまうわけです。
 
 作家のギャビン・ライアルは自身もパイロット だったことがあるため、表現や演出のそこかしこ にパイロットらしさが出ていて楽しく読めます。
 
 宇宙物のSF−RPGのシナリオネタにも使え ます。
 
 ぜひご一読あれ。
2000年08月03日:00時12分17秒
『氷山空母を撃沈せよ!』(伊吹秀明/沖一) / 銅大
 
 この本は徳間ノベルズから出版された『氷山空母を撃沈せよ!』 のコミック版です。
 
 なぜに、原作ではなくコミック版をお薦めするかといいますと、 やはりタイトルにもある『氷山空母:ハボクック』の絵的な凄さ というのが実に良い感じだからです。
 
 基準排水量850万9500トン。
 全長1700メートル。
 (※いずれも自然増減ありというのがおかしい)
 搭載機数1000機。
 
 もーなんというか、イロモノもここにきわまれりという奴です。
 
 こげな化け物に対抗する日本軍も、またイロモノ寸前の作戦を 敢行。実に良い感じでございます。
 
 学研から出ておりますので、ちょっとした息抜きにどうぞ。
 なんせ、氷の塊の空母ですから涼を感じることもできるでしょう。
 
2000年08月02日:22時55分20秒
『斜線都市』(グレッグ・ベア) / 銅大
 
 『ブラッドミュージック』とかで有名(そうか?)な グレッグ・ベアの新作(といっても出版は5月)です。
 
 『女王天使』とかの歴史の流れにあり、
 
 ・仮想現実
 ・思考体
 ・心理治癒
 ・微細工学
 
 などのSF的なイロイロが、これでもかという ぐらい詰め込まれています。
 このあたりはさすがベア先生。
 
 というか、詰め込みすぎでSF好き以外はちょっとつらいかも。
 
 もし、『女王天使』とかを読まれていない人は さきにそちらを読むことをお薦めします。
 
 いや、最初としては『凍月』の方がとっつきやすいかな?

2000年07月30日:22時33分21秒
『銃と魔法』(川崎康宏) / 銅大
 これは、本日購入した本ではありません。
 というか、購入したのは平成6年の1月ですな。
 
 なんでこーゆー本を引っ張り出して読んだかといい ますと。まぁ、ちょっと部屋の掃除をしておりまして。
 
 ひょいと見つけたわけでございます。
 
 何しろ、明日はエアコンの取り付け工事で、業者の方が来られるのですが。
 今のままでは本を踏み台にしないとエアコンが取り付けられない状況でして。
 
 おお、こんな所にFM−7が(!)
 まだ捨ててなかったか。
 
 あ、いやそれはともかく。
 
 この本ですが、この世界とはちょっと違う架空の 世界を舞台として魔法やらエルフやらドワーフやら が存在しております。
 
 んで、主人公はエルフの刑事とドワーフの刑事。
 どっちも寿命が長いものだから最古参なくせに、 階級は下というのが笑えます。
 
 内容は彼らがどたばたする刑事物コメディ。
 小説として見た場合は、あまりに散漫です。
 登場人物もむやみやたらに多いし。
 でも、なんとなくこー、社会の雰囲気が面白くて 楽しく読めてしまうのです。
 
 古本屋で見つけたら、読んでみてはいかがでしょう?
 ちょっと変わった読後感が味わえるかと。
 
2000年07月27日:21時33分27秒
『銀河博物誌1 ピニェルの振り子』(野尻抱介) / 銅大
 
 まずは一言。
 
 「買いましょう」
 
 どこか分からない宇宙。
 そこには、地球から複製されてきた人々が、あちこちの 惑星で生活していました。
 なぜ?
 どうして?
 それは分かりません。
 ですが、人々はたくましく生き続け、星から星へと旅を 続け、様々な物を見つけ、観察し、記録しています。
 
 19世紀レベルの文明・文化を持ち、宇宙を旅していく物語。
 それが、この作品です。
 
 とりあえず、第一巻は一人の元気な少年が、
 一人の少女に恋をして(また、その少女の性格がヒドイ のです。もう萌え萌え)
 様々な冒険をするという物語でございます。
 
 ソノラマ文庫:ISBN4−257−76887−8
2000年07月24日:01時32分11秒
歴史群像 / 混沌太郎
この雑誌は私も好きで、毎号買っています。
沖縄やガリポリも良いですが、43号で一般的歴史ファンに一番アピールするのは「真田三代」でしょうね。
この記事は、39号の「信州真田家二五〇年の大計」、41号の「信州上田城」「決戦!大阪の陣」を合わせて読むと面白さが倍増するのです。

RPGerにとっては、「ローマ軍団史」以外にも、陣形について述べた「テルシオvs.三兵戦術」(残念ながら4ページだけ)とか「戦国鉄炮隊、前へ!」等は有用かも知れません。
ああ、それを言ったら42号の「斜行戦術」とか「ヘリボーン戦術大研究」も私には参考になりました。
まあ42号なら「漢中争奪戦」が一番好きですが…

ところで、有坂純さんと言えば、「新書英雄伝」。
TACTICSの終焉とともに終わった(まさかどこかで続いていたりはしてなかったですよね?)のを残念に思ったものです。
2000年07月23日:18時29分10秒
『星方武侠アウトロースター 雲海のエルドラド』(堺三保) / 銅大
 自称「SFなんでも屋」による、
 コミック(そこそこ面白い)やらアニメ(見てない) やら小説(読んだが人には勧めない)になった作品の 外伝的な小説。
 
 小品。TVシリーズの1話を見ているよーな気分。
 ついでに、主人公の蘊蓄たれがちと鼻につく。
 そういうキャラではないよーな気がするのだが。
 
2000年07月23日:18時24分07秒
『フェアリーランド・クロニクル 銀の剣』(嬉野秋彦) / 銅大
 
 集英社スーパーダッシュ文庫という、新しい
文庫シリーズの一冊。
 
 それにしても……書くペースが尋常ではない。
 
 一年に一二冊出してたりしないか? この作者。
 
 内容・文体については良くも悪くも嬉野調。
 『ホルス・マスター』が許せるならこれも許せる。
 許せないなら、諦めた方がまし。
 
 
2000年07月23日:18時20分22秒
『名誉を越えた闘い』(ろくごまるに) / 銅大
 
 デビュー作品である「食前絶後」で、
 
 「分かった。旦那の作品は何も言わず買わせてもらうわ」
 
 と私に決意させたろくごまるにさんのシリーズ、
 「封仙娘娘追宝録」の短編集3冊目。
 長編の方はどーにもパワーダウン気味だが、短編の方の 切れ味は相変わらず。
 様々な宝貝(ぱおぺい)とそれを巡る人とを上手に調理 した職人技をごらんあれ。
2000年07月20日:17時29分00秒
『歴史群像 夏〜秋号』(学研) / 銅大
 
 こーとりあえず読む物もなかったので、佐藤大輔の
『皇国の守護者』でも取り出して主人公の地獄巡りを 楽しもうかと思い
 
 いや、それでもなんか新刊はないかしらと、近くの 本屋までテクテクと徒歩15分。汗ダクダク。
 
 で、見つけたのが学研の『歴史群像 夏〜秋号』で す。特集は「沖縄1945」……やっぱり地獄巡りか。
 
 記事は、他にも「ガリポリ上陸作戦」……なんか、 いっそ爽快ですな。ここまで来ると。
 
 で、「ローマ軍団史」というのに心ひかれたので すが、ページ数が8ページとは残念。でも、有坂純 さんの文章は相変わらず面白い。
 
 執筆者のレベルもそこそこ高く、良い雑誌です。
 軍事史とかに興味がある方はどうぞごらんあれ。
 
2000年07月17日:19時45分09秒
『電撃! ドイツ戦車軍団』(高荷義之) / 銅大
 
 『電撃! ドイツ戦車軍団』(高荷義之)
 この本は、
 『21世紀ブックス』というシリーズで 主婦と生活社が提供しております……
 って、知っている人がどれだけいるのやら。
 
 実は、この本は友人が古本屋で購入したもので、 出版は昭和47年。おお、巻末の写真の高荷さん や、師匠の小松崎さんがお若い(笑)
 
 中身は、タイトル通り、ドイツ戦車の図鑑のよ うなものですが、田宮模型の箱絵になった奴が掲 載してあります。
 
 「当時、良くここまで調べたよなあ」って感じ で、やはり参考文献は海外物が多いですね。
 
 まぁ、この本が何より楽しいのはタイガー戦車 の図解を当時のレーシングカー(こちらも無意味 に図解入り)と比較して『約64台分の重量!』 とか書いちゃってる部分でしょうか。
 
 当時らしいっちゃ、らしいですわな。
 
 他にも、『敵の砲弾をはねかえせ!!』とか『骨になるまで戦うぞ!』とか、みょーに熱い 煽り文句が随所にあるのが楽しいですね。
 
 これで古本屋で1000円というのは安いぞ。
2000年07月16日:19時39分37秒
「放送禁止歌」 / stealth
「放送禁止歌」という本が出ていたので、買ってみました。
去年、深夜でドキュメンタリーにしたプロデューサーが、そのいきさつと背景を記しています。

なぎら健壱、泉谷しげる、岡林信康などの作品にスポットを当て、メディアによる過剰な自主規制と、報道関係者の思考麻痺を問う作品になっています。
実は、放送に適さない歌はあっても、放送禁止の歌はなかった・・・というのは驚きでした。

著者:森達也 監修:デーブ・スペクター
発行:解放出版社(!) \1800
ISBN 4-7592-5410-2
2000年07月16日:15時56分35秒
本日購入した本 / 銅大
 『消えた少年』(東直巳/ハヤカワ文庫)
 和製ハードボイルドの中でも、個人的にとても好き なシリーズ。
 男ってぇのは、やはりちょっとうぬぼれてて、カッコ つけるのが好きな生き物なのですよ。
 この次の作品はまだハードカバーなんだよな。どうしよう。
2000年07月14日:18時25分31秒
銅大 / 先日購入した本のリスト
 
『日経サイエンス 8月号』(日経サイエンス社)
 小惑星だのエイズ問題だの、いろいろと興味深い お話が満載。
 知覚と認知のサイエンスというのは、RPGにも何か使えないだろうかと考えてみたり。
 
『ファントムウィザード』(大森葵/角川書店)
 コミック。表紙の女の子のお尻にひかれて購入。
 決して、男の子が可愛らしくていじめがいがあ りそうだから購入したわけではない。
 内容はたいへんインモラルな雰囲気が漂ってい てよろしい。
 この調子でいくところまでいってしまうことを 強く希望。
 
2000年07月08日:17時07分26秒
本日購入した本のリスト / 銅大

 『巡洋戦艦〈ナイキ〉出撃!(上)(下)』(ディヴィッド・ウェーバー/ハヤカワ文庫)
  紅の勇者オナー・ハリントンのシリーズ3巻め。おそらく、今回も地獄巡りなんだろーな、と考えつつ購入。
 
 『星虫』(岩本隆雄/ソノラマ文庫)
  前に出ていたものを加筆修正したというので再び購入。この本をSFというよりファンタジーだと思うのは私の心が狭いからか。
 
 『夏の魔術』(田中芳樹/講談社)
  これもまた、前に出ていたものが加筆修正したというので再び購入。 というか、あとがきに『春の魔術』を年内に手をつけると書いていたのをみて、何も考えずにレジに持っていったというのが正しい。 私としては珍しく、作品としてよりもキャラ萌えで購入する数少ない本の一つである。 頼む、年内に出してくれぇ。他の2冊も買わせていただくから。
 
 『少年名探偵虹北恭助の冒険』(はやみねかおる/講談社)
  念のため言っておくと、決して「12才の少年が主人公」だから購入したのではない。絶対。
  ……なんだ、その疑わしそうな目は。
 
 『ダブルブリッドIII』(中村恵里加/電撃文庫)
  1,2,3とけっこーなハイペースである。 問題は作品内の展開がスローなことか(笑) あとがきに「いくら物忌みしたって、鎖は逆位置のままだ!」 と書いてあるのが笑える。たしかに、これはブレイド・オブ・アルカナを知らないと意味不明だ。

(sf:ローマ数字は環境依存のシステム外字なので利用しないでください。修正しました)


2000年05月07日:23時38分49秒
Re:『アナザ・ヘヴン』に関する話(というか茶々) / PALM-12
食べること雑談所のネタにするには気持ち悪い内容なので、こっちでレスさせていただきますね(笑)
 
◆Re:『アナザ・ヘヴン』に関する話(というか茶々) / E.Rさん
>……うわー、ばらけちゃって料理しにくそう、とか思った己って………
 
 ……ボクも思いました(;^^)
 
 個人的には、人間の脳の食材的に類似品である羊の脳みそや鯛の白子を考えてみると、、焼きうどんは出来ないのじゃないのかと思います。 もちろん、できる方法があるのかもしれませんが、、親や友人にも相談してみましたが、ソースに混ぜるぐらいしか調理法は思いつきませんでした。。。
#子羊の脳みそなんて、木綿豆腐よりちょっと柔らかい感じの食べ物ですから(;^^)
 
 ではでは
2000年05月05日:12時07分25秒
Re:『アナザ・ヘヴン』に関する話(というか茶々) / E.R
PALM-2さんへ。
己は『アナザ・ヘヴン』を、見ても読んでもいないのですが。

ふと。

> 被害者の脳をシチューにしたり、グラタンにしたり、うどん焼きにしたりする連続殺人が起こるわけですね。

……うわー、ばらけちゃって料理しにくそう、とか思った己って………
(なんとなく蟹味噌を連想したらしい<おい)

ではでは。
2000年05月01日:23時39分10秒
『アナザ・ヘヴン』に関する話(;^^) / PALM-12
#どうも、前の「はじめてのファンタジー」関連は、ありがとうございました。
 
 いま、『アナザ・ヘヴン』の小説のはじめの方を読んでいるのですが、カニバリズム的な事件の話が出て来ます。
 被害者の脳をシチューにしたり、グラタンにしたり、うどん焼きにしたりする連続殺人が起こるわけですね。
 
 この犯罪の動機に対する見解として「頭が良くなりたいから、脳みそを食べる」と言うものがあり、PALM-12も言われるまでなくもそうだと考えていました。
 
 で、そのことをガールフレンドに話したのですね。
 
 笑われました(笑)
 
 「そんな訳ない。 美味しいから料理して食べてるに決まってる。 頭が良くなりたかったら、生で食べるはずやもん」と。
 
 なんだか、頭をハンマーで殴られた気分です(;^^)
 少しでもサイコ系に詳しいと思っていた自分が恥ずかしくなりました。
 とりあえず、『アナザ・ヘヴン』を最後まで読んでみて、彼女の言う通りでないコトを願ってます。
#もちろん、違ったからって、彼女が飯田譲治よりスゴイかもしれないコトは否定できないのですが(;^^)
 
 ではでは
2000年04月29日:21時45分35秒
コミュニケーション論概説などの参考図書 / 鍼原神無〔はりはら・かんな〕
 「20世紀言語学概説などの推薦図書」 (当掲示板,カンナ記,2000年04月27日:10時56分15秒) 、では石頭さんのお問い合わせに応える型で、「言語理論、構造理論」などの概説書、初学者向けの書籍を紹介しました。
 
 後、TRPGの実践に直接役立つし、TRPGについて考えるのにも役立つ分野に、コミュニケーション論があります。今回はその関係の推薦図書をご紹介します。
 
 ただ、現代的なコミュニケーション論を理解するには、一般教養レベルで構わないから、20世紀言語学の概要を理解する必要がある、ってのは事実です。これはどうしようもありません。
 
 で、今回は、初学者向けのコミュニケーション論の概説書で推薦できるものをご紹介します。
 前提として、先にご紹介した、『言語学とは何か』(岩波新書、田中克彦、著)、だけは読んでおく必要がある、とします。
 
宍戸通庸、著,『コミュニケーションの構図 ことばがわかること』,みらい,Tokyo,1998.
ISBN4-944111-44-4 C03080
 A5判、135頁、本体1,714円。
 この本の内容には、いわゆる情報理論を踏まえて(踏まえるだけで主題的に検討されてはいません)、自然言語のコミュニケーションと人工言語のコミュニケーションと、どこが近似で、どこが違うか論じらてる部分があります。これ自然言語によるコミュニケーションの性質を理解するには、重要なトピックのひとつです。
 他にも、生成文法や認知言語学など、ソシュール言語学とはやや異なるトレンドへの目配りも適格と思います。

田中春美+田中幸子、編著,『社会言語学への招待 社会・文化・コミュニケーション』 ,ミネルヴァ書房,Tokyo,1998.
ISBN4-623-02629-9 C3087
 A5判、211頁、本体2,500円。
 この本は、大学の専門課程で社会言語学に進もうとする学生向けに編まれた入門書です。とゆう事は、大学1年生程度の一般教養があれば読めるレベルで編まれているって事です。
 
 社会言語学は、言語学の内でも比較的新しい分野なので、守備範囲が少し不明瞭な面もあります。
 けれど、初学者が守備範囲を展望できるよう、親切に編まれています。

=おまけ=
 おまけとして紹介する本はオプションです。
 コミュニケーション論とは関係ありません。
 
 「20世紀言語学概説などの推薦図書」で紹介した『ソシュール小事典』とかを読んで、もし混乱してきたら、ぜひ読むとよい本です
 
ロイ・ハリス、タルボット・J・テイラー、共著,斎藤伸治、滝沢直宏、共訳,『言語論のランドマーク ソクラテスからソシュールまで』,大修館書店,Tokyo,1997.
ISBN4-469-21215-6 C3080
 四六判、ハードカヴァー、本文332頁、本体2,400円。
 
 332頁に14章ですので、単純計算では、1章あたり、23〜4頁。
 題材の割には手ごろな長さにまとめられると思います。
 原典からの抜粋が豊富な点が特徴です。 
 読みづらい文章ではありませんが、フォローしている歴史が広汎(ソクラテスからソシュールまで)なので、通読するには、少しだけ歯応えがあるかもしれません。
 
 でも、この本を通読すると、1.「言語やコミュニケーションについての、過去の考え方のヴァリエーションが理解できる」、そのうえで、2.「ソシュール言語学の何が革新的だったかよくわかる」、の2大メリットがあります。
 結果として、つまらない、いい加減な言語理論・コミュニケーション論にたぶらかされないですむ、“耐性”がつくと思います。←コレが最大のメリットだったりして。

2000年04月27日:10時56分15秒
お礼>推薦図書 / 石頭
どうも。>カンナ殿。

自分が読んだ言語学関連図書は「文学部唯野教授」(筒井康隆著)ぐらいなので(^^;、大変参考になります。どうもでした(__)。
2000年04月27日:10時49分00秒
20世紀言語学概説などの推薦図書 / 鍼原神無〔はりはら・かんな〕
@石頭さんWrote (「【自然言語】了解です>システムの定義」,TRPG総合研究室,2000年04月25日:23時32分27秒)
 >ハリハラ殿の推薦されます、初心者むけの言語理論、構造理論などの本がありましたら、教えてください。ちと勉強したくなったので。
 
 わかりました。
 次の4冊を推薦します。どれも、自信を持って推薦できます。
 もし・読んでつまらなかったら、定価で引き取ってもよいです(石頭さん限定、各1冊まで:笑)。いや、それくらい自信を持ってお勧めする、って話ですけど。
 
 1.田中克彦、著,『言語学とは何か』(岩波新書303),岩波書店,Tokyo,1993.
 ISBN4-00-430303-6 C0280
 
 2.橋爪大三郎、著,『はじめての構造主義』(講談社現代新書898),講談社,Tokyo,1988.
 ISBN4-06-148898-8 C0210
 
 3.丸山圭三郎、編,『ソシュール小事典』,大修館書店,Tokyo,1985.
 ISBN4-469-04243-9 C3580
 
 4.立川健二、山田広昭、共著,『現代言語論 ソシュール フロイト ヴィドゲンシュタイン』(ワードマップシリーズ),新曜社,Tokyo,1990.
 ISBN4-7885-0372-7 C1010

 
 1.2.は、一般教養レベルの概説書です。どちらも、概説書としては大変よくできていると思います。読み易いし。
 
 3.ですが、「(20世紀言語学の)初学者はまず、この本を読むべき」、って意見をよく聞きます。アタシもそのように思います。
 「小事典」って書名ですけど、内容は次のような構成になっています。
 
=『ソシュール小事典』内容構成=
 I.ソシュールの生涯
 II.ソシュール理論の基本概念
 III.『一般言語学講義』と原資料の間
 IV.ソシュールとその時代
 V.『講義』の影響とソシュール学
 VI.ソシュール理論の継承と発展
 VII.ソシュールを読むために
 VIII.ソシュール用語解説
 その他付録.(ソシュール著作一覧、索引など)

 実は、辞典形式で編纂されてるのは「VIII.ソシュール用語解説」のパートだけです(笑)。
 
 他の章は、学術書らしからぬ読み物調が基調になってます(章の主題によっては少し硬いパートもありますが)。
 おそらく、これは初学者を意識した編纂方針の結実と思います。
 
 アタシはこの本読んだのが遅くて、数年余計な事に悩んでロスしました。読むまで、いろいろ勘違いもしてましたし。
 絶対お勧め。って、ゆーかニホン語で、20世紀の言語論について考え様とするなら必読。繰り返しますが、初学者向けに編纂された内容です。
 
 4.は、できれば3.と併読されるとよいとは思います(が、好き好きでしょう)。
 「キーワードの解説集」ってコンセプトで出されてる一般向け概説書シリーズの1冊です。
 キーワードごとの解説はコンパクトで、読みやすいと思います。
 あちこち飛び飛びに読んでっても楽しいです。(もちろん通読しても読み応えあり)
 
 20世紀の言語学・言語論の射程・カバー範囲を、一般教養レベルで展望しようとするなら、最適の1冊と思います。
 
 後、人名辞典、思想辞典の類も座右にあるとなおよいとは思います。
 とりあえず、次の1冊がハンディでよいと思います。
 
 5.今村仁司、編,『現代思想ピープル101』(Handbookシリーズ),新書館,Tokyo,1994.
 ISBN4-403-25003-3 C0030

 
 思想辞典の方は、石頭さんが、どうゆう方面に興味を持ってゆかれるか、でチョイスが変わってくると思います。
 
 今回推薦しました4+1冊の内、2冊の新書本(「1」、「2」)は、普通の新書本価格帯。
 「3」は、多分今でも、2,000円〜2,500円くらいかと思いました。
 「4」「5」は、1,500円くらいかなー。
2000年04月18日:22時15分08秒
RPGゲームマスター大全 / MO(モー)
こんちわー。RPGに役に立つ本を思い出しまして。
「RPGゲームマスター大全」
著 者:山北 篤
発行所:新紀元社
発効日:1995/2/28初版発行
ISBN:4-88317-249-X

1、ゲーム分類
2、プレイヤー管理
3、キャラクター管理
4、パーチティー管理
5、シナリオ作成
6、マスタリング
7、シナリオ終了
8、キャンペーン
9、世界創造
10、プレイ環境
付録
1、シナリオ
  作成チャート
2、欠陥プレイヤーに
  ならない為に
と、役に立つ、まとまった本でした。

さて、あなたのRPGのベストな参考書は?

ついでに【最初のファンタジー小説】は、印象の強さにより
「ウオーターシップダウンのうさぎ達」かな?
2000年03月21日:02時53分26秒
【回答】一番最初というと / 紙魚砂
 どうも、こちらでは初めまして。
 それ以前にもファンタジーと言えるような話を読んではいたんですが、「幻想性」とかをはっきり意識した最初の本は、

「二人のイーダ」(灰谷健次郎)

です。一応あとで実写版も見たけど…
 落丁本で、空白のページが何ページかあって、妙に想像力をかき立てられた記憶があります。
 しゃべる椅子が好きだったかなぁ…。でわ。
2000年03月21日:02時07分52秒
【回答】一番最初を今思うと / SOW
 どーも、こんばんわ。
 ここには初めて寄らせていただきます。SOWです。

 今現在の自分的ファンタジーは、TRPGのためのファンタジー設定の部屋 LOG 003にも書きましたが、キチク・・・じゃなくて菊地秀行の<新宿>を舞台とした一連の作品です。最近、キワドイ描写がヘナチョコになって悶々としてます。
 で、最初は何だったか、今になって考えますと、小学生のときに読んだ山田風太郎の「魔界転生」であろうと思います。
 以来、「切支丹」「伴天連」と聞いたり、読んだりするとなぜかいかがわしい気分になり、ちょっとわくわくするンです。
 誰か、「(超)伝奇時代小説風RPG」とか作ってくれたりしないかな、と今、ちょっとだけ思ってたりして
2000年03月20日:02時45分14秒
【回答】私の読んできたファンタジー / KN
>ファンタジー小説の原風景
 もはや、原風景が何であったのかすら思い出せません。
 ただ、ドリトル先生や雨月物語、南総里見八犬伝、西遊記などをよく読んでいた覚えがあります。
 どこから、これがファンタジーだと意識して読み出したのかは、わかりませんし、一つに絞る思い切りもないので、好きなファンタジーを並べて、お茶を濁させていただきます。
 
 アイスランドサガ(新潮)・・・図書館にたまたまあった、1000ページ近いハードカバー。あえて言うならこれが原風景に最も近いと思います。「ヴォルスンガサガ」「グレティルのサガ」が、文庫版と比して、完本といってもいい形で収録されています。
 闇の城(早川 タニス・リー)・・・私も、タニス・リーの全作品といいたいのですが、「影に歌えば」「バースグレイブ」など、未見のものもあるので、あえて1作品を挙げます(迷ったのは、「アヴィリスの妖杯」と「死霊の都」)。リアとリルーンの恋物語のような気もしますが、両者のあり方がファンタジーを醸し出しています。
 カルカッソンヌ(ちくま ロード・ダンセイニ)・・・ 『妖精族の娘』の収録作品。「サクノス〜」がでたので、表題作以外からはこれをおすすめしたいです。感想すらネタバレになりかねない短編ですので、省略。
 アイルの書(早川 ナンシー・スプリンガー)・・・既出ですが、各冊が単独で十分な出来を持って完結しており、巻を追うに従って変わりゆく世界が、個人的には外したくないです。カバーイラストも美麗ですが、画風故に敬遠する人もおりました。
 死神と二剣士(創元 フリッツ・ライバー)・・・ファファード&グレイマウザーのシリーズ中、訳出されたものからは、これが一番好きです。二人の比較的軽めの冒険が、ランクマーの魅力と共に描かれています。(残りも訳出してもらいたいが、ほぼ絶望的か?)
 地獄に堕ちたものディルヴィッシュ(創元 ロジャー・ゼラズニイ)・・・私にとって魅力があるのは、主人公よりも乗騎ブラックです。様々な台詞をはいてくれる、短編集がより魅力的に描かれていると思います。長編の方が、活躍しますが。
 魔法都市ライアヴェック(社会思想社)・・・短編競作集です。シェアードワールドの一形態ですが、各短編のつながりの濃淡が、雑然とした都市の雰囲気を漂わせています。ほとんどが尻切れトンボになってしまったA&Fのなかでは、最良と思います。
 送り雛は瑠璃色の(社会思想社 思緒雄二)・・・ここでは反則技のゲームブックですが、この独特な感覚は絶対に外せないと思います。まだ市中在庫を入手可能と言うことで、日本風ファンタジーを求めるなら、なんとしてでも手に入れてもらいたいです。
 魔法王国シムルグント(不詳)・・・まず手に入らないと思いますし、私も諸般の事情で手放しており、後悔しています。世界設定集ということで、これも反則的ですが、短編小説が載っているので一応入れさせて下さい。独特の世界とアイテム・魔法が、美しい世界を作り上げています。
 まだまだあるけど量を重ねても読みづらいので、この辺で。なお、下二つと一番上は、入手難易度を考えると、別格だと思います。
 ざっと並べてみると、短編が多いことと、理屈より感覚で選んでることしかわかりませんね。
2000年03月20日:00時59分41秒
【回答】最初のファンタジー小説 / HELL
 
 小説・ドラゴンクエスト3 そして伝説へ
 
 作者は高屋敷英世。おそらく私が最初に読んだファンタジー小説です。ファンタジーじゃなくてゲーム小説だと言われそうですが、けっこうダークファンタジー的です。特に朝が永遠に来ないアレフガルドの世界観は結構好きです。みどころはゲームにはない魔法使い姉妹の確執でしょうか。
2000年03月19日:23時30分25秒
【回答】速水を成すファンタジー小説たち / 速水螺旋人
 中学校ぐらいの時まではファンタジーをバカにしてたんですよね、速水。
 SFやノンフィクションに比べると「子供っぽい」気がしていたのですよ。ヤなガキです(笑)。
 ドリトル先生とかアーサー王、エンデとか好きだったくせにねえ。
 
 で、はじめてファンタジーと意識して読んだのがタニス・リーの『死の王』でした。ハマりました。
 考えてみれば、とんでもないところからファンタジーに入ったものです(苦笑)。
 
 で、いくつか魂のファンタジー小説を挙げてみますと……。
 
 ■総合……タニス・リーの全作品。
 やはり、原初体験というのは一番鮮烈なものです(笑)。
 「平らな地球シリーズ」が白眉でしょうけど、ピンで読むなら『幻魔の虜囚』かな。パラディスの2冊も捨てがたいけど……。
 
 ■ワクワクするもの……ロバート・E・ハワード「コナン」シリーズ
 エンターテイメントで一番大事な「ワクワク感」でコナンに優るものはありません。
 ザッツエロス&バイオレンス! 読むと元気が出ます。
 
 ■行きたくなる世界……エリック・V・ラストベーダー『月下の戦士』
 この話に登場する都市シャ=アン=セイはファンタジー小説の中でももっとも魅力的な都会でしょう。
 足元に路地裏の敷石を感じます。女戦士チイサイもかわいいよね。
 
 ■キャラ萌えする話(笑)……ジャック・ヨーヴィル『ドラッケンフェルズ』
 主人公、外見16歳の吸血鬼ジュヌヴィエーヴ。他に言葉は要るまい(笑)。
 
 ■ストーリーを楽しむ……ティム・パワーズ『アヌビスの門』『幻影の航海』
 映画化するならぜひティム・バートンに!
 『幻影の航海』は、珍しい真正面からのブードゥーものだったりします。
 
 ■異世界の違和感を楽しむ……ジャック・ヴァンス『竜を駆る種族』、ジーン・ウルフ「新しい太陽の書」シリーズ
 すらすら入るような世界も良いですが、座り心地の悪い世界を味わうのも読み物の醍醐味です。どっちも分類はSFっぽいですが。
 ヴァンスならSFマガジンに昔掲載された『奇跡なす者たち』も大好きですね。
 
 ■デスクライトだけで読む……F・マリオン・クロフォード『妖霊ハーリド』
 無論、『千一夜物語』に挑むのも問題なし。
 
 ■魔法に酔う……ジョン・ベレアーズ『霜のなかの顔』
 
 ……なんだかワケ分からなくなってきましたが、いや、まだまだあるんだけど、こんなんかなあ(悩)。
 日本のがないね。イカン(汗)。
2000年03月19日:04時36分54秒
【答え】私の最高のファンタジー小説。 / 石頭@最近こんな答えばっかし
飢狼伝。
2000年03月19日:01時35分15秒
[質問の答え]『骨のダイスを転がそう』って誰が書いたんだっけ?(Re:私のファンタジー小説 ) / 鍼原神無〔はりはら・かんな〕
#アタシこーゆーアンケートって絶対、ひとつに絞れないんですよねー。
#絞らないってゆーか(笑)。
 
 TRPGのためのファンタジー設定の部屋 LOG 003でも書いたんですけど。
 ロード・ダンセイニの『ペガーナの神々』
 ピーター・S・ビーグルの『最後のユニコ−ン』
 トム・リーミィの『サンディエゴ・ライトフット・スー』
 
 このあたりですねー。
 あー、後あれ誰のだっけなー雑誌で読んだ短編で『骨のダイスを転がそう』ってゆーの。
 うーん、思い出せない。
#ところで、みなさんTRPGのためのファンタジー設定の部屋にも投稿よろしく☆
2000年03月19日:01時29分00秒
【回答】私のファンタジー小説 / Prof.M
原風景というとちょっと違うかもしれませんが… といったとこでしょうか。あと,ファンタジーのようで実わSFだった「グラマリエの魔法家族」ってのもありますが。
#どうもSF臭のあるのが好みらしい<自分
2000年03月19日:00時25分11秒
【質問の答え】私のファンタジー小説 / 数の子
 こんばんわ。数の子です。
 
>ファンタジー小説の原風景
 実は、私もあまり古典的ファンタジーを読んだクチではないんで、参考までにということで。(^^;
 ・魔法の国ザンス シリーズ
 ・アイルの書 シリーズ
 ↑あたりが強いかも...。どちらもハヤカワFT文庫です。
 
 ちょっと脱線しますが、最近見て衝撃が強かった(原点入りした)のは、「絵物語ホビット」だったりします。
 トールキンの「ホビット」をウェルゼンの美しい水彩イラストでマンガ風にしたものです。
 これは本気でオススメ! キレイだし解りやすいしで、もう!
 
 でわでわ。
2000年03月18日:23時42分25秒
【質問】あなたのファンタジー小説はなんですか? / PALM-12
 どうも、PALM-12です。
 
 で、皆さんに質問なんですが、「これが自分にとってのファンタジー小説だ!」という小説を教えていただけないでしょうか?
 
 質問の理由は、簡単でTRPGのためのファンタジー設定の部屋でファンタジー観の話をしてるんですが(ボクはよってないですけど)、古典というか、ファンタジー小説の原風景ってなんだろう? と思ったためです。
#実はコナンすら読んだことがないのですが、、ハワードは、クトゥルフの短編でバカっぽかったの読んでないのです(;^^)
 よろしくお願いします。
 
 ちなみにボクは、R・E・フィーストの「魔術師の帝国(リフトウォー・サーガ)」です。 理由は、始めて読んだファンタジーだったせいかな(;^^)。 次がトールキンの「ホビットの冒険」、マカヴォイの「世界のレンズ」と続きます。
#ちなみに友人に聞いたところ「ファファード&マウザーシリーズ」だそうです。
 
 ではでは
2000年03月03日:09時47分05秒
プランニングハウス社が… / d-mura
あぁ、「ファンタジーの森」いいシリーズだったのに… うさぎ屋本舗参照。
2000年02月22日:13時10分33秒
アメリカ大衆文芸論『アメリカン・ヒーロー伝説』 / 鍼原神無〔はりはら・かんな〕
 ロス・マクドナルドや、ダシール・ハメットのハード・ボイルド小説の翻訳で知られる、小鷹信光さんの『アメリカン・ヒーロー伝説』。
 
 エドガー・アラン・ポーの書いた推理小説と広義のミステリーの話題から、作家と作品の謎にふれた「<探偵小説の父>が遺した名探偵 悲運のヒーロー、オーギュスト・デュパン」からはじまる12章。

 ダイム・ノヴェル、ウエスタン・ヒーローのストーリー、犯罪実話、セミ・ノンフィクション、そして、アメリカの大衆出版とジャーナリズムの関係、について語ってゆくこの本。一言でなんと説明したらよいか、少し迷う内容です。
 
 「一八四〇年代から、一九一〇年代までの、アメリカ大衆文芸史の素描」。そう言ってしまうことは簡単なんです。間違いではないですし。
 でも、それだけですませられないような内容が、この本には含まれていると思います。
 
 1840年代〜1910年代まで、足掛け80年間の作家、キャラクター、出版人、それから、犯罪実話の主役になった実在人物たちに犯罪実話に熱中した無数の大衆。これらの郡像を、258ページの文庫本で扱う以上、素描にしかならないのは当然です。
 もんだいは、素描のタッチですよね。
 
 『アメリカン・ヒーロー伝説』を、大衆文芸史の概説書として読もうとすると、解説などにやや不親切な点がみられます。
 言及されてる作家や作品について、ちょっと説明不充分かな、みたいな記述も散見されます。ですので、文芸研究書として読むわけにもいきません。
 
 この本の価値はもっと別のところにあるんです。
 昭和十一年(一九三六年)生まれの私は、思春期をはさんだ、六、七年間、アメリカの映画の強い影響をうけ、正直いってその傷痕はいまも完全に治癒しいない。
 建国二百年の<アメリカ>の歴史を、鮮烈なスクリーンに映して、白紙同然の私の頭のなかにや来付いたアメリカ映画。その教宣的な洗礼を疑うまえに、少年だった私はただ偉大なる娯楽〔エンタテインメント〕そのものとしてのアメリカに無抵抗に惹きつけられてしまったのだ。

第3章「大衆ヒーローの誕生 民話の英雄ニック・カーター」より


 
 アメリカの夢が失われ、民話のヒーローたちがとうに過去の遺物となり、アメリカが私にとって巨大なジョークにすぎないことがわかったいまとなっても、なお私はアメリカに心を惹かれ、かかわりをもちつづけようとしている。そのかかわりかたと関心とが、この本のすべてだといってもいい。

「まえがき」より


 
 1980年に単行本刊行されたときの題名は、『ハードボイルド以前 アメリカが愛したヒーローたち』。文庫版の『アメリカン・ヒーロー伝説』よりも、前の題名の方が内容への示唆は明瞭だったように思います。
 
 1936年生まれの著者は、敗戦の年1945年には、9歳。
 16〜18歳になったのは、’52〜’54年ですよね。
 ケネディ大統領がベトナムに軍を派遣した’60年には、24歳です。
 
 「アメリカ映画の強い影響」が「いまも完全に治癒していない」「傷痕」だ、って感じ方が、ただのアメリカ大衆文芸史概説、に納まらない内容をこの本に与えていると思います。
 
 そうした著者が、アメリカを「巨大なジョーク」と感じても、なお「かかわりをもちつづけようとしている」屈折した愛情の在り方を読みとってゆくところが、この本の読みどころと思います。その辺のウンチク本と同じような読み方をしては、もったいない本と思います。
 
 「屈折した愛情」は、まず、今は忘れ去られたような大衆文芸のヒーローたちに注がれています。それから、無数の読者たち。
 けれど、その無数の読者大衆は、同時に扇情的な犯罪実話に悪趣味な興味・関心を注ぐ存在でもあることも書かれています。
 
 今アタシたちが、実際に生きて暮らしてるこの国にも同型の状況がみられますよね。
 そうした読者・大衆と大衆文芸のヒーローたちの間にいる、作者や出版人への著者の理解にも鋭敏なものがみられます。
 その辺を語り口から読み解いてゆことのが、この本を読む楽しみにつながってゆくと思います。
 
 大衆のヒーロー、と読者、それから、作家、出版人が含まれてるアメリカ社会、その在り方が、著者にとって「巨大なジョーク」であるかのように思えるのかもしれません。
 
 この本の最終章(第12章)は「西部の男は、いつハードボイルド私立探偵に変身したか ウエスタン・ヒーローの伝統」と題されています。
 西へ西へとさすらいながら行きついたウェスト・コーストが、自由な男の行き止まりの街だった。そこでフロンティアは閉ざされていた。誕生と同時に負わされていたこの悲劇性から私立探偵ヒーローを解き放つ力が、一九二〇年代以降のアメリカにあったろうか?どうやらそれが、<私のアメリカ>と私自身に課せられた新たなテーマであるように思える。

第12章「西部の男は、いつハードボイルド私立探偵に変身したか ウエスタン・ヒーローの伝統」より


 最後で著者が得た新しい課題は、後に『アメリカ語を愛した男たち』(ちくま文庫)って本に実を結んでいます。
小鷹信光、著,『アメリカン・ヒーロー伝説』(ちくま文庫 こ-14-2),築摩書房,Tokyo.
ISBN4-480-03546-X C0198

2000年02月14日:00時41分15秒
小説『狂気の果て』 / 鍼原神無〔はりはら・かんな〕
◆ポリス・ストーリーの名手、D・L・リンジー
 『狂気の果て』(原題“Body of truth”)の著者、デイヴィッド・L・リンジーってアメリカの作家が、ニホンでどんなふうに評価されてるのか、アタシはよく知らないです。けど、リンジーって、同時代のポリス・ストーリーの名手、ではないかと思います。
 
 もしかしたらアメリカ語かな(?)、とか思うんですけど、「ストーリー」って、よく、「実話」ってニュアンスで使われます。
 昔のアメリカ映画やTVドラマを観てると、よく登場人物がよく、電話に“I’ve got story.”って告げたり、 “I’m going to send the story. OK? Write down.”とか叫んだりしてます(最近はFaxやパソ通があるんで、電話シーンって昔ほどはないですね)。
 
 アメリカでは、初期の新聞、それからパルプ雑誌では(後、イエロー・ジャーナリズムって、呼ばれる新聞とかでは今でも)、いろいろな性質の犯罪実話が提供されていたし・されている、んです。
 こーゆー“犯罪実話”とその市場って、ある種、アメリカのクライム・ストーリー、ポリス・ストーリーの源泉のひとつなのですね。
 
 例えば、何度か、TVドラマや映画になってるアンタッチャブルの物語ですけど、エリオット・ネス名義で書かれてる実話本がありますよね(ニホン語版もあるこの本、ホントにネス本人が書いたのか、アタシは疑わしい気もするんですけど。ゴースト・ライターがいたって証拠もないみたいですが)。
 
 と、ゆーわけなので、アメリカのポリス・ストーリー、クライム・ストーリーを、ただ、警察小説、犯罪小説って訳しちゃうと、そこに含まれてるニュアンスが見失われます。
 例えばSF小説が、アメリカ語で、サイエンス・フィクションとかサイエンティフィック・フィクションとかゆわれてるような、「フィクション」と、「ストーリー」はまた別種類の物語類型、って意識されてる、そーゆーニュアンスですね。
 
◆『狂気の果て』
 さて、『狂気の果て』は、テキサス出身の作家、リンジーが描く、ポリス・ストーリー連作(個々の作品の独立性の強いシリーズ)の1冊、ととりあえずは、言ってみます。
 ヒューストン警察殺人課のヘイドンを主人公にしたこの作品は、けれど、ポリス・ストーリーの枠からはみ出してるところがあります。
 連作初期作の『噛みついた女』(新潮文庫)や『殺しのVTR』(扶桑社ミステリー)にも、ジャンル定型からの逸脱要素はあるんですけど、それほど目立ってなかった気もします。アタシが思うに、この『狂気の果て』って、連作の内でもひとつ突き抜けた達成なのではないかな。 
 大企業社長の娘、リーナ・マーラーが、平和部隊の任務から帰国してしばらく後、姿を消した。
 物語は、捜査を担当していたヒューストン警察のヘイドン刑事が、失踪の数ヵ月後、リーナの母親と会見するシーンからはじまります。
 ヘイドンは、母親から、娘がグアテマラにいる、と聞かされます。
 今は私立探偵をしているヘイドンの元同僚が、リーナの父に雇われ探し出したのだとゆう話です。
 
 そして、元同僚もグアテマラからヘイドン本人に宛に国際電話をかけてきます。
 本国〔ステーツ〕で、失踪は誘拐か、死亡事故か、と騒がれているリーナ・マーラーは、自分の意志でグアテマラに戻っていた。
 しかしリーナは、現地で何かのトラブルに巻き込まれ、アメリカ大使館の助力も仰げない状況に陥っている、とゆう。
 
 かつての同僚の慫慂に応えて、ヘイドンは、グアテマラに飛ぶことにする。
 しかし、彼はヒューストン市警の刑事としてではなく、休暇中の一アメリカ市民として、現地に入らざるを得なかった。

 1992年に発表されたこの作品。
 麻薬戦争とも呼ばれた状況を踏まえて、グアテマラの様子はかなり陰惨なもの、として描写されています。
 アタシも不勉強で、ラテン・アメリカの同時代の社会情勢、その事実性が作品内にどこまで反映・構築されてるのか、判断しきれません。もちろん、まったくの虚構ではない、と思われはしますけど。
 
 一方、主人公のヘイドン刑事は、ポリス・ストーリーの主人公にしては、メイン・トレンドからちょっとはずれたとこがあります。
 ポリス・ストーリーにもカップ・モノ(警官題材)、とディテクティブ・モノ(刑事題材)があるのですが(後、分署モノなんてのもありますよね)。カップ・モノの場合はほとんど、ディテクティブ・モノでもだいたいは、主人公や主要人物って、中流階層より下、の出身の方が目立ちます。
#ちなみに、アンタッチャブルってゆーのはFed(連邦捜査官)だったので、COP(警官)とも、Detective(刑事)とも違いますよね。
#エリオット・ネスとかは、やっぱりエリートな人、なわけです。
 
 で、マトモな警官や刑事は安月給に喘いでる、とかが、ポリス・ストーリー、メイン・トレンドの定型って言えるでしょう(アメリカの景気が持ち直してる状況で、この辺変わって来てる・変わってゆくの・かもしれませんけどネ)。
 
 主人公のヘイドン刑事は、親の代からの家に、親の代からの使用人を使いながら暮らしている人物で、妻も友人と建設業の小さな事務所をやってるって設定です。ですから、一番慎ましい有産階級、と言えます。
 イタリア語のエッセイの翻訳が趣味、とかの設定からも、ありがちなポリス・ストーリーによく出てくる人物より、グッとハイソな匂いのする人物です。
 
 で、そんな彼の立場に極・近い観点から語られるグアテマラの状況。これが、どこまで、事実性を虚構の内に構築してて、どこからが、アメリカ人的偏見であるのか、アタシとかに判断がつかないのですね。
 
 ところで、物語が進むにつれ、作品内での事実性の再構築よりも、小説にとってはより重要な、物語内容が暗示されてゆきます
 国家警察犯罪捜査局、陸軍情報部、国境警察、無数の私兵集団、これらが処刑部隊として制度化されている非・民主的な国、(と語られる)作中のグアテマラでは、あらゆる人物が、自己保身や様々な思惑から、真実のすべてを語ることを避けようとします。
 主人公も、不本意ながら、徐々にそのような言動を採らざるを得なくなってゆきます。
 
 様々な人々の様々な観点から語られる断片的な真実の錯乱は、まったく真実性の無い言葉よりも人を混乱させます。
 
 この作品で語られているのは、自分の責任とも言い難い事情のために、自ら真実を見喪っていってしまう何人もの人物達の悲劇です。
 
◆“Body of truth”
 『狂気の果て』の翻訳者の人は、文庫本のあとがきで、原題“Body of truth”のことを、「直訳すれば“真実の塊”といった意味です」と書いてられます。
 これは、翻訳家ってプロフェッションからの苦心した発言、ではいかなーって気がします(私見)。
 アタシとか、翻訳家ではないですから(笑)、“Body of truth”の含みは、「真実の本体・本性」って感じでは(?)、とか思っちゃいます。
 
 『狂気の果て』読解に際しては、背景情報にすぎないですけど。
 ヘイドン刑事を主人公にする、リンジーの一連のポリス・ストーリーでは、アメリカ南部の先進的大都会ヒューストンを舞台にして、麻薬売買や連続殺人のような犯罪と、そうした犯罪を呼び込んでしまう社会態勢、それと、犯罪によって侵食される個人生活といった物語世界が一貫して描かれています。
 
 テキサス出身のジャーナリストであった著者が舞台にヒューストンを選んだのには、地縁的偶然要因も関わってはいるでしょう。
 けれどこの作家は、連作の舞台、保守的な南部アメリカの内の先進都市を克明に描く事で、アメリカで暮らす同時代のにんげんの生活の条件、みたいなものの描出に一貫して取り組んで来ています。
 
 『狂気の果て』の舞台がグアテマラに設定されたこと、そこに主人公が一市民として登場すること、これらは決して偶然ではないと思われます。
 連作の初期作で、麻薬売買や組織犯罪を巡る物語に取り組んでいるうちに、作家は、アメリカでの同時代のにんげんの生活の条件が、国内だけで完結しているわけではない事に気づいてしまったのではないか? それで、どうしても、ラテン・アメリカの国を舞台にした物語を書かないわけにいかなうなったのではないか? そんな気がしてきます。
 
 グアテマラで再び失踪していたリーナ・マーラー。
 主人公が錯綜した糸ともつれ合うようにして行方を追ってゆく彼女が、アメリカ大使館に助力を求めないのはなぜか。
 グアテマラを非・民主的で野蛮な社会と観るアメリカ人の観点が、惑乱しながら崩れてゆくようなドラマが、主人公の物語です。 
 
人は、真実を求めながらも虚偽以外の無いものをも所有できない……
 
 有名な哲学書からの引用を、巻頭エピグラムに飾る『狂気の果て』は、ポリス・ストーリーから随分逸脱しまくっています。
 連作中の異色作、といってよいかもしれません。
 この物語は、スパイ・アクションとも、スパイ・スリラーとも違う。エスピオナージュの世界に触れてしまった市民の惑乱を主題的に描いた小説です。
 
 D・L・リンジー、著,『狂気の果て』(新潮文庫リ-7-5),新潮社.
 ISBN4-10-225205-3 C0197
2000年02月10日:10時26分40秒
評伝『パリの王様たち』(ちと長い) / 鍼原神無〔はりはら・かんな〕
 この本ちょっと前に買ってあったんだけど、最近、「創作小説雑談所」でジュンブンガクとかの話題が出たもんで、ちょっと読んでみました。
#「純文学と娯楽小説の違いって?」 (創作小説雑談所,彬兄さん記,2000年02月02日:18時21分55秒)
 「Re:Re:純文学と娯楽小説の違い」 (創作小説雑談所,カンナ記,2000年02月03日:13時18分57秒)
 
 『パリの王様たち ユゴー・デュマ・バルザック 三大文豪大物くらべ』は、オ・モ・シ・ロ・イ。
 大爆笑の一冊です☆

 
 『レ・ミゼラブル』(『嗚呼無常』)のユゴー。
 『岩窟王』のデュマ(大デュマ)。
 「人間喜劇」のバルザック。
 
 この三人は、みんな1800年を挟んで生まれて、多少の差はあるけど1830年前後にデヴューしたのね。
 みんな幼少時にナポレオン戦争の高揚とナポレオンの敗退を目の当たりにしてる。
 だもんで、三人ともナポレオン・マニアだった・らしい。

引用≫
 彼らは、名声、金、女、といった世俗的欲望とは無縁だったどころか、むしろそうした欲望の権化だったといったほうがいい。
  〔中略〕
 すなわち彼らはこうした欲望「にもかかわらず」大傑作を残したのではなく、それがあったが「ゆえに」かくほどまでの偉業をなしとげたのであったと。
 
 演劇と新聞小説でバンバン設けた金で、大邸宅を建てて、モンテ・クリスト城とか名づけた大デュマ(おろかだ:笑)。
 毎日宴会やって、十億円以上稼いだ(ホントはいくらくらい稼いだのかよくわからないらしー:笑)のに、ぜーんぶ使いきっちゃった(驚)。
 
 晩年、息子の小デュマ(←『椿姫』の作者)に曰く、「息子よ、世間の連中はオレの事を浪費家とゆうがな。ホレみろここに金貨が2枚ある。オレがパリにはじめて来たときも丁度金貨2枚しか持ってなかったんだぞ」
 クゥ〜ッ、かっこいぃ☆(笑)
 
 新聞小説の契約金前渡しで1億円くらい手に入れると、ヤタッ、って感じで2億円くらい使っちゃう(笑)バルザック。
 
 息子に先立たれて孫がオトナになってもオンナ道楽をやめなくって。しかもドンドン、セックス賛美の詩のネタにしちゃって、自選先週に入れちゃうユゴー。
 
 自分のセックス体験を詩作のネタにするとかゆーと、なんとなくニホンの私小説作家みたいだけど、『パリの王様たち』に引用されてる詩は少なくとも、私小説的ではないですねー。
 
 涙も流すが、まもなくほほえみ、いきつくところは恍惚境。
 言うことなんかありゃしない。

 (『ユゴー詩集』辻昶,稲垣直樹、訳)
 
 いやはや・なんとも(笑)。
 
 ようするに「我こそはペンのナポレオンたらん」ってゆー、誇大妄想の大家が三大文豪なの、ってまー、そーゆー観点(苦笑)の評伝です
 
 アタシは知らなかったけど、『パリの王様』ってデュマの評伝が有名なんだそうで。
 それで三人の評伝だから『パリの王様たち』。
 
 ちなみに、さっきのデュマ父子の話は逸話であって、ウソかホントかわからないんだけど。この本、そうした逸話も、ちゃんと「これは逸話」って断わったうえで、積極的に収録してある。
 同時代の人とかに、三大文豪がどんなイメージで観られてたか、の一端とかが想像できるし、これはこれでよいです。
 
 ちょっと間違えると、とんでもなく悪趣味な内容になっちゃいそうなこの評伝。
 読後感も爽快になってるのは、まず第一に三大文豪が揃いも揃って大バカ者・もとい・大モノだから。
 
 それに著者は、三大文豪の大物ぶりを愛しちゃってる感じがします。
 
 それから、ただ「世俗的な欲望」のネタだけをほじくってるわかではなくって、1.「文豪の欲望と創作の関連」、2.「文豪の欲望と社会環境の関連」をちゃんと追いかけてる。
 
 まー、それやこれやで、笑える・けれど読みがいのある本になってます。
 
 高校とかでやる大学受験用の文学史って、ホントにダメダメで。
 いろいろあるんだけど、特にダメなのが順番史観(←仮称)。
 「古典主義があって、ロマン主義が来て、写実主義になりました」とか、そーゆーの。
 
 ホントは、ロマン主義と写実主義はお互いに意識しあって対抗しあいながら、どっちも「古典主義なんかクソクラエ」運動だったりしたんだよね。
 「ロマン主義と写実主義の対抗」自体が、古典主義を時代遅れにしたと思う。多分。
 
 んで、アタシはバルザックって、「初期はロマン派だったけど、後期は写実的傾向を強めた」とか言われた記憶があったんだけど、この本読んだら、どーも疑わしいなー、これ(笑)。まー、断言はしませんけど。バルザック読み直す楽しみが増えました(笑)。
 
 それとかね、新聞の一般化と創作の関係とかね、受験用文学史ではもんだいにもしてないですよね。
 その辺の事もこの評伝はちゃんと押さえてます。
 
 えーっと、余計なお世話かもしれませんけど。
 序章を退屈に思う人は多い気がします。
 それから人によっては1章の出だしもちょっと退屈かも。
 でも、1章〜2章のどこかで、ゼッタイ「ニヤリ」と笑うはず、と思う。
 
 とりあえず序章とか最初の方は斜め読みで構わないと思う(断言)。
 「ニヤリ」と来たとこから、本式に読みはじめて、「ワッハッハ」と来たあたりで、チョコってもどって、最初に読み飛ばした序章とかもちゃんと読むとよい・のではないかなー。多分。
 
 笑えて、しかも、文学史のイメージが変わる評伝☆ オ・ス・ス・メ☆
 
 鹿島茂、著,『パリの王様たち ユゴー・デュマ・バルザック 三大文豪大物くらべ』(文春文庫か−15−2),文藝春秋社.
 ISBN4 -16-759001-8
2000年02月07日:14時48分40秒
小説『レッド・ドラゴン』上・下巻 / 鍼原神無〔はりはら・かんな〕
 『レッド・ドラゴン』(原題“RED DRAGON”)は、『羊たちの沈黙』の作者、トマス・ハリスによる小説。 
 新潮文庫版「羊たち〜」の解説によれば、『レッド・ドラゴン』が「羊たち〜」の前作にあたるようです。
#小説『羊たちの沈黙』については、書籍雑談所 LOG 001、にレヴュー(のつもり)を投稿してあります。
#よろしければお読みください。
#「小説『羊たちの沈黙』(長いです)」 (書籍雑談所 LOG 001,カンナ記,2000年02月05日:21時25分25秒)
 
 満月の週末ごとに、中流家庭に押し入り、家族全員を惨殺する犯行を繰り返す殺人犯。
 物語は、この凶行の犯人を追うFBI捜査班の責任者が、引退していた捜査官ウィル・グレアムを捜査にひき出そうと折衝しているところから始まります。
 
 ストーリーの大枠は、殺人犯と捜査官、追う者の追跡と、追われるもの犯行の話。
 日本語版文庫、上・下巻が54の章に分けられています。ひとつひとつは決して長いとはいえない各章を大まかに観れば、捜査陣側の物語と、犯人側の物語がほぼ交互に語られる構成になっています。追う者と、追われる者のサスペンスを盛り上げるプロット的な仕掛けですね。
 
 タイトルの「レッド・ドラゴン」とは、ウィリアム・ブレイクが聖書に取材した水彩画に描いた、神話的な怪物の事。物語中では、連続殺人犯人が「自分のなるべき者」として、神のように崇める想像上のキャラクターとして語られます。
 
 ウィル・グレアムを捜査に引き出そうとするFBIのクロフォードは、『羊たちの沈黙』では、女主人公クラリス・スターリングの上官として登場しています。
 また、ウィル・グレアム本人は、やはり、「羊たち〜」に登場する、“人喰い”ハンニバル・レクター博士を逮捕した前歴の持ち主でもあります(作中、本人は「自分が逮捕したわけではない」と語るのですけど)。
 
 「驚くべき視覚的記憶」を持つ「直感像所有者」、「感情移入能力」と「投影能力」に優れているとされるグレアムは、犯罪者プロファイリングの専門家なのですが、単に優れたプロファイル技術を見込まれて捜査に担ぎ出されるのみではありません。
 
 ジャック・クロフォードは、声こそグレアムだが、その話し方がクロフォード自身の話し方とリズムと構文がそっくりなのにきづいた。彼はグレアムが前にもほかの人たちを相手に、相手と同じ話し方とリズムで話しているのを聞いたことがある。会話に熱中するとグレアムはよく相手の話し方と同じ調子になってしまうのだ、はじめクロフォードは彼がわざとそうしているのだ……話のリズムを相手と同じように調整するのがてなのだと思っていた。
 が、あとあとになってクロフォードはグレアムが知らず知らずのうちにそうやっているのだ……ときどきそれをやめようとしながら、やはりやめられないのだとわかった。

 
 日本語版『レッド・ドラゴン』の翻訳者は、あとがきで、物語中の殺人犯を作品の主人公とする解釈を述べています。この解釈は間違いではないですが、やや曖昧です。
 この小説は、最終的には人格分裂の危機に襲われる殺人犯の思考を、追跡者グレアムが嫌々ながら理解してゆく経緯・葛藤が、ストーリー上のサスペンスを投して描出された物語内容を持っていますので。
 
 下巻、最終章の末尾は、次のように締めくくられます。
 
 グレアムは自分の中にも殺人を犯すあらゆる要素があることを知りすぎるほど知っていた……おそらく慈悲の要素だってそうだ。
 しかし殺人という行為を不愉快ながらも充分理解していた。
 人類の偉大な肉体の中で……文明を志向する人間の心の中で、われわれが自分自身でコントロールしているよこしまな衝動や、そうした衝動の暗い本能的な知覚が、肉体が入らせまいと防衛するヴィールスのように機能するのだろうか。
 昔ながらのおそろしい衝動が、ワクチンを作るヴィールスなのだろうか。
 ――そうだ、おれはシャイローを誤解していた。シャイローは取り憑かれてなどいない……取り憑かれているのが人間なんだ……シャイローは何とも思っちゃいないのだ……

 
 「シャイロー」とゆうのは、南北戦争の激戦地が史跡公園になっている土地の名です。
 グレアムはかつて、この公園を訪れたときに、かつての激戦を思い「シャイローは取り憑かれていて、その美しさも半旗のように不吉だと思った」のですが。
 しかし、小説の結末の時点で彼は、病院のベッドの上での曖昧に混濁した思考の内に「取り憑かれているのは人間であって、自然ではない」、つまり「殺人とは、極めてにんげん的なもんだいなんだ」との理解に到達しているわけです。
 
 そして、その理解に達する経緯は苦しみに満ちた物語です。
 また、小説を読んできた読者は、こうした理解に達したからといって、ウィル・グレアムの生活の苦しみが軽減されるわけでもないことを知っていることでしょう。
 
 サイコ・サスペンスとも呼ばれる、小説『レッド・ドラゴン』の作品主題は、復讐心と慈悲、悪意と哀れみとに引き裂かれた人物の悲劇を、別の人物がいかに理解するか・し得るか、そうした物語内容がストーリー上のサスペンスを通して描出されたもの、と言えます。
 
 トマス・ハリス、著,『レッド・ドラゴン』上・下巻(ハヤカワNV文庫,NV554・NV555),早川書房.
 ISBN4-15-040554-9 C0197
 ISBN4-15-040555-7 C0197
2000年02月05日:21時48分12秒
書籍雑談所 LOG 001 / sf
 書籍雑談所 LOG 001として1996年9月29日から2000年02月05日までのログを切り出しました。
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