ライトノベル雑談所 LOG 001
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ライトノベル雑談所の2002年03月30日から2002年06月29日までのログです。
2002年06月29日:23時29分04秒
『ダーク・バイオレッツ』 / sf
霊を見ることしかできない少年が主人公、霊を触ることしかできない少女がヒロイン。怪異を引き起こす強敵に巻き込まれつつ出会い、事件を解決すべく頑張るお話。ちょっとした能力のある一般人に過ぎないのは、最近のライトノベルには珍しいと思いますが、品良く使われてるかな。
最終的解決方法が伏線はあったものの秘密兵器を使うタイプのものなので、もちっと創意工夫だけであったほうが良かったなあ。そのあたりは電撃hp掲載の外伝小説では多少改善されていたと思います。
2002年06月29日:16時16分50秒
てきとー書評、12冊更新 / 彬兄
ライトノベル中心のかる〜い読書感想日記、てきとー書評を更新しました。
今回追加した書評は以下の12冊です。気になるタイトルなどあれば参考にどうぞ。
新ソードワールドリプレイ4 狙え!魅惑の大出世
水の牢獄
リアルバウトハイスクール9
十八番街の迷い猫
僕の血を吸わないでザ・コミック
スターダストイレギュラーズ
ディープナイト・ランニング 容赦なしっ!
アリソン
遊々パラダイス2 おツキさまと踊ろう
クロスカディア2 影メグル地ノ邂逅者タチ
なずな姫様SOS2 目に入らないよ紋どころ
電詞都市DT(デトロイト) 上
2002年06月06日:18時56分24秒
『どうせおれは全知全能 無法の軍神・甲賀三郎』沢田直大 / sf
大胆な題名に期待しましたが、思ったよりも普通の話というのが、印象。舞台は平安時代ですが、語り口はまったくまじめな平安物ではなくて、地口や現代語ギャグをまじえた、コミカルな風味。
主人公は軍神の生まれ変わりで、それが発覚してから実家でも崇められたりしていづらい日々を過ごし、剣と鏡の精を供にして家出。武威ではなく知恵と愛で人々の問題を解決しようとするものの、いかんせん脳筋でうかつなので上手くいかない。そんななか、悲劇を背負った女との出会いを経て、封じられた蛇族の思惑に搦め取られていくが、正論とまっすぐな心根を貫き、考えかたが成長していく。という感じで、全体としてはジュブナイルにあるような成長譚を青年がやるという感じの話です。
妙に軽薄なところに反発しなければ、わりと手慣れた感じに楽しめると思います。
2002年06月02日:19時47分22秒
『十八番街の迷い猫 夕なぎの街』渡辺まさき / sf
第13回ファンタジア長編小説大賞の最終選考作品。
舞台は和風で近代っぽい魔法のある世界。主人公サイドは、錬金術師男、機能に謎の多い人形娘、謎の過去を持つ世慣れた少女。酒場がメインの舞台で、店員が主人公群。
女性陣の秘密が話を駆動しており、連作短編的に話を積み重ねて、最後に大きな話に持っていく感じです。「ふつうの人間でないことがもたらす事件を、度胸と特殊能力で解決」という感じかな。
危機感やなんかはいまいち強くないし、展開にも流暢とはいえないとこはありますが。なんというかTRPGのキャラ小説に近い印象です。
2002年05月24日:18時11分46秒
Re: A君(17)の戦争 / sf
まだ2は購入してないので、とりあえず書誌データを。
ライトなノリとガジェット、軽快な語り口。なのに、戦争はまとも、怨念はみっちりという怪作。「いじめられっこは魔族の国を救えるか!?」という感じですか。
オタクの妄想を具現したような魔族の国を救えるのは、現代日本では「居なくなっても問題ない」存在であった主人公だけ。とか書くと、願望充足小説っぽいですが、それがゆえの苦悩や状況、そして魔族と人間の形をとって再現された「いじめの構図」など、むしろ児童文学で見かけるようなテーマ表現に近い部分も。
1では、自らの戦うべき理由を見いだし、決断を行い、リーダーとしての責務を理解するという展開ですか。今後のA君の成長を期待したいところです。
2002年05月23日:21時54分21秒
『吸血鬼のおしごと』鈴木鈴 / sf
使い魔の猫と貧乏暮らしをしている吸血鬼のもとに、転がり込んで来たのは幽霊と修道女。ほのぼのと誤解とすれちがい、考えの変化を経て、それぞれに因縁の絡む闇に巣食うモノとの対決に至る話です。
それなりにらしく掘り下げてあるのはいいし、猫を魅力的に書こうとしているのは頑張ってますが、それに比べると女の子が浮いて弱い感があります。あと解決されていない伏線が多すぎで、シリーズにしよう意識が勝ちすぎかな。吸血鬼の葛藤が薄いのもあって、主人公は猫のツキになってますかね。
全体に女の子たちはわけがわからないまま動いてるので、現代退魔ものの悲劇の NPCっぽい印象ですかね。過去の悲劇とからめて事件への参与の動機づけや巻き込まれの原因とするあたりは、最近のTRPG向きの展開かも。
2002年05月22日:01時27分18秒
『A君(17)の戦争2 かえらざるとき』 豪屋大介 / 銅大
『A君(17)の戦争2 かえらざるとき』
著者:佐藤大輔……もとい、豪屋大介
出版:富士見ファンタジア文庫
ISBN4-8291-1430-4
異世界転移戦争物、第二弾でございます。
異世界でファンタジーですから、
美女!(どーん)
美少女!(どどーん)
美幼女!!(どどどーん)
は当然として、実にユニークかつ面白いキャラがてんこもりでございます。
中でもユニークなのは主人公の小野寺剛士君と
その当座の敵であるシレイラ王女でしょうか。
いずれも性格はきれいさっぱり破綻しておりまして、その破綻ぶり、尋常でなさぶりは読んでいてだいじょーぶか、こいつ、と、読者が心配になるくらいでございます。
しかし、甘く見てはいけません。
この作品、けっこうハードに戦争物語をやっております。
というか、語り口調のしっちゃかめっちゃかぶりに騙されるとあれですが、実に理路整然、構成もきちんとした戦争小説です。
そこらのおつむのぬるい仮想戦記小説読んでいるよりは役に立ちますよ。いやまじで。
……おつむのぬるくない仮想戦記小説がどれほどの役に立つかは置いておいてね。
ま、それはともかく物語も動き始めてきたようであります。
キャラクターの顔見せもだいたい終わったかな、って感じで。
でもね。おそらく戦争はこの世界の本当の「問題」の中のほんの一部。
はたして戦争の向こう側にある「問題」を解決することができるか、ちんちくりん主人公!
実は、ホモ兄貴にもけっこう期待してたりするんだがねっ!
2002年05月16日:07時45分32秒
『第61魔法分隊』伊都工平 / sf
技術的な魔法の存在する世界を舞台とした、強大な魔法兵器に絡んだ陰謀と抗争……を背景に、ある都市の魔法警察的な部隊のメンバーの成長を描く作品。青春だなー。親離れかも知れない。
口絵の登場人物紹介を頭に叩き込んで読みはじめると、二転三転どんどん変わっていく人間関係。伏線を生かして、それぞれの持つ隠されていた真の姿が明かされていき、それが人格的成長に繋がる展開になってます。
2002年05月15日:14時13分40秒
『宇宙捜査艦《ギガンテス》』二階堂黎人 / sf
どこに書くかはちょっと迷ったけど、デュアルだし、内容の傾向からして、こちらでいいかなと。
古典的スペースオペラっぽい舞台設定のなかで、捜査専任の艦の乗組員たちが、自組織に未加盟の国家を舞台に、宇宙ステーションでの密室殺人に絡んだ陰謀を暴くSFミステリ。トリックは入門向けの易しい物かな、と思います。
作者は新本格派のミステリ作家の二階堂黎人。SFも好きだったのか、と驚くかたも居るかも知れませんが、手塚治虫ファンクラブ初代会長ですし、SFマガジンにローダンシリーズの宣伝記事を書いたりもしていました。
全体として、いいのかそれで、というくらいにアリガチな古いスペースオペラを踏襲してます。レンズマンからはバーゲンホルムやQXやシオナイトなど、ローダンからはテルコニットなど、火星シリーズからはバスルーム型ロボットなど、元ネタはいろいろ。
スペースオペラ的な舞台設定の必然性などは、それほど高いようには思えませんけど。スペースオペラが好きなんだという気持ちが伝わる作品でした。
2002年05月12日:18時20分14秒
『幽霊は身元不明―Dear My Ghost2』矢崎存美 / sf
1巻で事件を解決した主人公と、それで心霊捜査の能力があると思われてしまった姉は、旧家の「遺伝子照合でも確認された元家出息子が、自分は別人だと主張する」という謎を追うことに。
誰なのかわからない幽霊と対立しつつ、幽霊と人間と、それぞれの過去の出会い・思いを探し当てていくことで謎を解くという話です。これもまた、TRPGのシナリオっぽい展開ですね。旧家の館+情報収集先が舞台ですし。
人物がしっくりと来るほどには掘り下げられなかった感じはありますが、結果としてはミスリードに生きていたのかも知れません。おばさんの生きの良さは、1巻同様に上手いかな。
2002年05月10日:20時18分50秒
『並列バイオ』秋口ぎぐる / sf
第十回ファンタジア長編小説大賞審査員特別賞作品。
アクションは派手で、頑張ってるけどドツボにはまりつつ最後はうまく組み合わせて望みの一部をかなえるプロットで、いい感じです。
ただ文章は、読みづらいし。セリフでとんとん進めるばかりで「現在の状況」の定着させかたが弱いのはあります。小説としては色々と難が多いのも確かです。
とはいえゲテモノな仕掛け・登場事物は、私好みで。あれだけで、すべてを許せてしまう気分。脱出速度蛙がうまく使われていてステキです。
2002年05月09日:18時09分57秒
『悪魔のミカタ2 インヴィジブルエア』うえお久光 / sf
特殊能力のルール内+物理法則での応用を駆使した対決ものです。特殊能力がマジックアイテムで付与されるあたりは、シリーズ継続上、かなり便利そうですね。
全体に、前回は弱めだったキャラの変さは、だいぶ強化されてます。名家の地域影響力とか、派手な無茶さとか。
もうすこし、他の連中の一巻で死んだヒロインへの思いを掘り下げてやると、より良い感じだったかなと思います。
2002年05月08日:14時28分57秒
『幽霊は行方不明―Dear My Ghost』矢崎存美 / sf
幽霊が見えて会話できる弟が、占い好きで信じ込んで行動にでる口の達者な姉に振り回され、発見してしまった死体にまつわる事件を追う、という話。登場人物は、少し変わってはいるけど、どれも「たまに見かける」「知りあいに似たようなのが実在する」程度に収まってると思います。
引き回しの構図、口先三寸とコネで渡る捜査、霊との交渉でも特殊能力により強力な強制力はないあたりなどなど、軽量ルールによる現代オカルトミステリ仕立てシナリオ向けの展開。穏当で「ほんとにありそう」な雰囲気で、「ありがちなライトノベル的心霊アクションやホラー」ではないですね。
小説としては、引きずり回し型な分、どうしても主人公のモチベーションやサスペンスが弱いのは確かですが。そのだれたような放り出した態度の主人公が、引きずり回されて事件の解決に力を貸す羽目になるあたりとか、成果をわがことにしてしまう姉とか、ほのかな恋愛関係など含めて、モラトリアムな学生らしい雰囲気をかもしだしてるような気もします。
2002年05月08日:12時18分29秒
bk1に講談社X文庫 最新刊入荷 / sf
販売仲介しているオンライン書店ビーケーワン(7000円以上の注文は国内送料無料)にて2002年04月の講談社X文庫が入荷しております。
2002年05月07日:12時18分20秒
『悪魔のミカタ 魔法カメラ』うえお久光 / sf
第8回電撃ゲーム小説大賞銀賞作品。
表紙や紹介では、ギャルゲー風の展開が想像されますが、中身は予想よりはきっちり。浮ついただけでない「決断の重みと罠」がメインテーマとして、悪魔と願いを題材にする意味のある仕掛けに。書き方や文章には微妙に難もあるけど、全体としては良くできてますね。
最初にミステリとして書きはじめたということもあってか、謎と仕掛けと組み立ては新人のライトノベルとしては上手く回ってると思います。特殊な力も限定されており、工夫をこらしあうところが良い点。
登場人物が話中で他人に言われるほど変には見えないとか、頭がいいというわりに抜けてるとこも散見とか。組んだ構成を機能させること優先で、論理的演繹やあり得る可能性を潰すのが上手くできてないという難もありますけど。続編では多少改善されています。
2002年04月29日:23時51分16秒
「妖精作戦」他 笹本祐一 / Prof.M
- 「妖精作戦」
- 「ハレーション・ゴースト 妖精作戦 PART II」
- 「カーニバル・ナイト 妖精作戦 PART III」
- 「ラスト・レター 妖精作戦 PART IV」
あと番外として,
以上,朝日ソノラマ文庫所収。表紙が,平野 俊弘によるものと,御米 椎による新装版の2種類あり(もう一種類あるという話もありますが,そちらは未確認)。
「彗星狩り」の著者の処女作。1984年に第1刷がでてますから,既に20念近く前の作品になります。
話自体は,「駅で偶然会った女の子が…」といった,いわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」。初めはごく普通の学園から始まるものの,登場人物達の思惑が絡み合った結果,あっさり地球を通り越し,月,その彼方まで広がっていきます。
全4巻,ただし,第2巻は,本編とは独立した,学園祭を舞台にした騒動,第3巻と4巻は,一つの話の前半と後半をなし,話と舞台はさらに広がり,哀しいクライマックスへと。
#第2巻「ハレーション・ゴースト」は,作中の人物の台詞ではありませんが,映画『ビューティフル・ドリーマー』を観ていると,さらに楽しめることでしょう。
#『スターダスト・シティ』(全2巻)には,「妖精作戦」の主人公達が,直接は出てきませんけれども,『ハレーション・ゴースト』の後日談ともとれるのですよねぇ…
著者の映画への指向,機械への愛着が顕著に出ており,後の「ARIEL」や「バーンストーマー」,「星のパイロット」シリーズの原点を見ることが出来ます。ぜひご一読を。
2002年04月26日:18時39分59秒
bk1に角川スニーカー文庫入荷 / sf
販売仲介しているオンライン書店ビーケーワン(7000円以上の注文は国内送料無料)にて2002年05月01日の角川スニーカー文庫が入荷しております。
2002年04月19日:19時00分35秒
てきとー書評、5冊更新 / 彬兄
ライトノベル中心のかる〜い読書感想日記、てきとー書評を更新しました。
今回追加した書評は以下の5冊です。気になるタイトルなどあれば参考にどうぞ。
悪魔のミカタ
インフィニティ・ゼロ
新ロードス島戦記3 黒翼の邪竜
フォーマイダーリン! 月夜は無邪気に竜退治
シンフォニアグリーン
2002年04月14日:22時36分27秒
風の歌、星の道のイメージアルバム / 彬兄
直接ライトノベルとは関係ないんですが……。
実は私、冴木忍さんの小説は好きで、文庫になってる分はほとんどすべて持ってます。件のイメージアルバムも持っています。
実は、小説版の完結よりもかなり後になって出たもので、主人公のソード役に上田祐二さん、ヒロインのレティシア役に当時はほぼ無名だった堀江由衣さん、後のラブひなコンビの他に塩沢兼人さん、置鮎龍太郎さん、島津冴子さん、浅川悠さん等々、すごい声優陣です。
おまけで付いている小説では、意外なところで他の冴木作品とのつながりが見えたりと、いろいろ美味しいですよ、これ。
ううむ、ほとんど小説とは関係ないなぁ……。
2002年04月14日:11時07分17秒
Re: 風の歌星の道 / sf
2002年04月09日:18時56分57秒 風の歌星の道 / たゆ関連。
気がつくと最初の巻よりもう十年。シリーズも、ずいぶんと冊数も増えたものです。
力を背景としている恥ずかしいまでのまっすぐさ、という感もあることはありますが。よくある時代劇的な安心して読める感じの話です。困難や難題も、落ち着くところに落ち着くし。登場人物の我の強い掛け合いとドタバタも楽しい一作です。
イメージアルバムが出たってことは、あの時期の角川とはいえ、やっぱ売れたのかなあ。
2002年04月14日:10時24分59秒
「パンツァーポリス1935」 上川稔 / tatsu114
私が高校のころに出て、富士見ばっかりだなとおもいつつ手にとった都市シリーズ第一の都市です。
わたしのなかではいちばんおすすめだったりします
ただでさえ大空とか空中戦が好きなのにその上に、接近戦までできる戦闘機がごろごろ。
目を輝かせて読んでました。
そして主人公のヴァルターのとぼけたきゃらも笑いを誘って一掃お気に入りになった一冊でした。
今の都市シリーズしか知らない人にはこの原点を読むことをお勧めします。
2002年04月14日:10時01分19秒
『リバーズ・エンド』橋本紡 / sf
『リバーズ・エンド(川の終わり)』ですが最初『リバース・エンド』だとばかり思っていて、ラストになるまで気がつきませんでした。とほほ。最初にラストシーン近辺が来る構成だったしなあ。
現代日本っぽいある町で、さえないけど優しい男の子が、携帯メールで知り合った女の子。その娘が同じ学校のクラスに転向してきて……とボーイ・ミーツ・ガール。
その後の展開も含めて状況設定など実にダブルクロスっぽい感じで、そのままシナリオの前半にしてしまっても、それらしいような気も。ほのぼのとした恋愛と、ちいさな身近な痛みが大きな力変革へと展開する、基本を押さえた作品。
全体に先が読みやすく、ああ痛い展開になるなと予測してその通りに進む感じです。
続編が近いうちでます。これに続編があるのかー。と言う展開ではありますが、続編がなかったら、ただのポエムっぽい文体の痛い系まじったボーイ・ミーツ・ガールかも知れません。続編でどう化けるかを期待。
まあドキドキできるので、それだけで良しという気もしますけどね。みてらんねーぜー、うひー、という気になるというか。
2002年04月14日:01時57分14秒
Re: 『ヴァレリア・ファイル』谷甲州 / sf
サイバーパンクを谷甲州さんらしく消化し、かつライトノベルレーベル向けにアクションとドタバタを入れた感じ、でしょうか。泥臭い地に足のついた高度技術兵器による戦闘と、それらしい電脳戦が魅力です。
もともとは角川スニーカー文庫より五冊で出ていたシリーズを、一冊にまとめたものです。コンピュータの描写が、今になると昔よりも余計にそれらしく見えてしまうあたりが凄いところですね。データマイニングなんか近年のはやりだし。
2002年04月14日:00時31分12秒
『ヴァレリア・ファイル』谷甲州 / 銅大
『ヴァレリア・ファイル 上』 ISBN:4-12-500584-2
『ヴァレリア・ファイル 下』 ISBN:4-12-500595-8
著者: 谷 甲州著
出版:中央公論新社
私にとって谷甲州さんというと、まずこのヴァレリア・ファイルのようなSF作家さんである。とんでもないホラ話系から、技術者の視点から見た精緻な未来史にいたるまで、なかなかに楽しめる作家さんである。
しかし、谷甲州さんはそれだけではない。
山岳小説も書く。ストイックな男たちの物語が実にいい感じである。
私も学生時代は山登りをしていたので共感するところ多し。今の私は大学時代から20キログラムも太り、見る影もなくぶよぶよとしてはいるが。
架空戦記も書く。最近はこちらがメインになっているようである。満州事変にまでさかのぼって、大慶油田(もちろんこの世界では満州油田だ)がその時代に発見されたという、ちょっと目のつけどころが並ではない設定で、渋く歴史を改変していく。かわぐちかいじのジパングでこのネタは一気にメジャーになった。しかし、読み比べてみれば分かるだろう。リアルという言葉の意味が。
……なに、わからない? まぁ、実生活で役に立つ能力じゃない。気にするな。
一般小説も書く。
…
……
………
さ、次行こうか。
ライトノベルで紹介するくらいであるから、この作品を読むのに難しい知識は必要ない。ちょっと難しそうなところは、一通りの説明はしてくれる。
何より、ライトノベルに必要な躍動感がある。それを生み出しているのが個性的な登場人物たちである。
まず、ヴァレリア。軍で開発されたサイボーグ。記憶を失い、その記憶を探している。さらには自分の記憶が軍のテストで使用されている事を知り、記憶を破壊して回るようになる。敵には冷徹。味方には優しい。しかし谷甲州さんのキャラクターの常として一人で動き回る癖がある。
物語の視線が置かれているMK。日本人の元大学生。ドロップアウトしてネットワークに埋もれているデータから価値のある物を掘り出して生活している。腕の立つハッカー。たまたまヴァレリアと会い、彼女の手助けをすることになる。
レティ。17才だが21才と偽ってOLをしている。MKよりもさらに腕の立つ天才ハッカーなのであるが、対人コミュニケーション能力は0を通り越してマイナスである。やることなすこと、とにかくケタはずれのパワーで物語を押し通す。彼女が可愛く思えてきたら、MK、きみも終わりだ。
2巻から登場のジョーズ。職業は殺し屋。なんというか、最初は実にインパクトのあるクレバーな殺し屋だったのだが、レティのおかげで後半はどんどんキャラがおこりんぼさんになっていく。
この4人が各々の特技を生かして行動するのである。
どんな些細な事件でも、しっちゃかめっちゃかの大騒ぎになる事は間違いない。
しかもこの四人、いずれも協調性はあまりない。レティにいたっては破壊して回っている。よって、何が起こっているのか読者にも分からない事がしばしばである。谷甲州さんの作品ではいつもの事ではあるが。
それに、これが重要なのだが、なんだかんだ言ってもこの作品は面白い。ちょっとライトノベルと呼ぶには正直、歯ごたえがありすぎる感がなきにしもあらずだが、たまにはこういうのを読まないと、頭がシフォンケーキになっちゃうぞ。
2002年04月09日:19時09分12秒
Re: 『ランブルフィッシュ』三雲岳斗 / sf
読んでないので感想は書けないんですがまあ、とりあえず購入案内だけでも(営業)
2002年04月09日:18時56分57秒
風の歌星の道 / たゆ
風の歌星の道 (前)(後) 冴木忍 角川スニーカー文庫 480円 ISBN4-04-413801-X 初版平成4年 十四版平成8年
卵王子カイルロッドもそれなりに意表をつく展開で楽しかったのですが、
この本も面白いですね。
のっけから弘司さんのイラストでずるずるっと惹かれてこのごろ読み始めているのですが、
ソードの笑いえくぼが良いです。のっけから悪人になりきれない芯の通った生き方、ということで
レティシアもそれに惹かれたのでしょう。
信用しきってます。
そのわりにはソードが人生の厳しさを通そうとすると仕置きしている辺りが彼女たるゆえんですが
妖魔を飼い慣らす少女、玄奘三蔵法師レティシアに、
盗賊ソードが孫悟空の頭輪、もとい首輪をつけられてしまって護衛につき、
道々のハプニングを乗り越えてユニークな道連れを得て、
と、ここまでしか読んでいませんが、先行き面白そうです。
レティシアの口調や姿形はファンタスティックフォーチュンのディアーナを思わせるものがありますが、
王女の風格と怖いもの知らず、話の進みでどう転がっていくのか楽しみだったりします。
ラストについてはまだ。
サウンドトラックも出ているそうです。
2002年04月04日:21時44分52秒
『ランブルフィッシュ』三雲岳斗 / 銅大
『ランブルフィッシュ 1 新学期乱入編』 ISBN:4-04-424102-3
『ランブルフィッシュ 2 中間試験暴走編』 ISBN:4-04-424103-1
『ランブルフィッシュ 3 場外乱闘恋心編』 ISBN:4-04-424104-X
(角川文庫 角川スニーカー文庫)
著者: 三雲 岳斗
まず、この本を読んでいない方のために、買い方を指導させていただく。
シリーズを続けて読むにせよ、途中で放り出すにせよ、最初に1巻と2巻は合わせて購入し、連続して読む事。
なんとなれば、1巻と2巻は上下巻のようなものであるからである。
1巻だけ読んで「なんだ、今一つ盛り上がらないなぁ」と思って2巻を読まない、というのはたいへんな損失である。必ず、合わせて読み、その上で続きを読むかどうか決めてほしい。
なんでそんな中途半端な作りになっているんだと私に怒ってもしゃあない。作者だって苦しんでいるはずである。1巻と2巻はわずか2ヶ月で連続して発行されているところからしてもおそらくまとめて書いて、それを2冊に分けたに違いない。
じゃあなんでそんな1冊の話を2冊にしたんだ。配分ミスじゃないか。アメリカのペーパーバックだったら1冊で出すぞ。ハヤカワだってそうだ。などと作者や出版業界を怒ってもしゃあない。シリーズがだらだら長く続くのはいいが、1冊が分厚いのはライトノベルユーザーの忌避感を買うらしい。嘘だと思うのなら、お手持ちのライトノベルのページ数を確認することをお奨めする。
それにれっきとした理由だってあるのだ。
登場人物が多いのである。
まず絶滅危惧種なヤンキーな主人公。何も考えていない馬鹿。キャラ立ちはきわめて良し。
ツッコミ性格なヒロイン。あれこれ考えるが最後はブチ切れるタイプ。
ヒロインの友人。明るくてのんびりやさんに見えるが、ちょっと重い過去あり。
主人公の親友。天才。主人公がどこまでイクのか興味津々。読者もそうだっ。ちなみに美少年だっ。個人的にポイント高いぞっ。
主人公たちの指導教官。童顔だが性格はイケズ。不幸にならなきゃいいけど。
主人公と一緒に編入してきた元自衛隊のパイロット。こいつもけっこう暗い過去あり。詳しくは2巻を参考だっ。
主人公と一緒に編入してきた設計士の少年。もちろんこいつだって曰くありだ。
主人公の学校で最強を謳われるパイロット。美形である。もちろんこいつに何かないはずがない。
以上。とりあえず1巻に出てくる何かありそうなメンバーだけ集めてみました。しかも2巻以降、増えやがるのである。
しかし、これだけなら別にキャラが多いとかそういうのはなさそうである。じゃあなにが原因なのかというと、この物語の根幹にかかってくる。
「有人の戦闘ロボットを使った模擬バトル」
にすべてはかかっている。
そう、これは現代でもしばしば行われている「ロボットコンテスト」、通称ロボコンのお話なのである。主人公たちの通う「恵里谷闘専」は、そういう戦闘ロボットを扱う人間を育成する学校で、試験はチームに別れて対戦勝ち抜きというのである。
だから、ロボットを設計する人間から整備する人間からチューンする人間からパイロットからとりまとめの雑事をやる人間から、1チームだけでも大所帯になってしまう。これが、登場人物の増加の原因である。
しかし、なぜにロボット。
それは1巻冒頭の、湾岸戦争クライマックスの『砂漠の剣』作戦で説明される。
圧倒的優勢なままソ連兵器を蹂躙して進む多国籍軍。わけても主力のアメリカ軍戦車部隊。
それをたかだか1個小隊で粉砕していく謎の新兵器。
それが――巨大人型兵器だったのである。
大砲の弾を避け、戦闘ヘリの対戦車ミサイルをくぐりぬけ、宙を跳び、戦闘ヘリを一撃で砕く。
ア・リ・エ・ナ・イ・兵・器。
だが、それはそこにいたのだ。
そして、歴史が変わる。有人ロボット兵器は陸上兵器の主力となり、それを開発する技術者の養成も行われる。そして何より平和な国では、ロボット兵器の戦いがショーとして、賭事として行われている。
それが
本当は、どんな力を秘めた物なのか
分からぬままに
おそらく、この物語、ただのロボコンでは終わらない。最後には人類の歴史を左右する大事件になる。そこに幾つもの思惑を絡ませながら。
そして、事態がカタストロフへと向かうその時に。
きっと。
我らが馬鹿が。
すべてを一刀両断にしてすかっと終わらせてくれるのではないか。
そう期待しつつ、私はこの作品を読んでいる。
2002年04月04日:20時43分15秒
「よろず電脳調査局ページ11」東野司 / sf
『よろず電脳調査局ページ11 青の妖精』を読了。人情電脳世界SFのミルキーピアの世界での、続編シリーズの三作目。このシリーズ好きなんだけど、今回とくに、短編向きの話を引き伸ばした感があって。少したるいかなあという気もします。まあ枚数は案外少ないので中編だと思えば良いのかも知れません。
なんというか展開が調査ミッション型のTRPGみたいな感じで、起きていることのわりに危機感が弱いというのはあるかも。きちんと展開と弱さと成長・変化は押さえてるんだが、薄い感じで。もっとも、ほのぼのと楽しめるという意味ではいい感じなんで、そっちが狙いなのかな。
シリーズ世界は魅力的で、意味もなく荒廃していない、生活にコンピュータとネットワークが密着した近未来。事件は派手だけど登場人物に密接に関る話となってます。
2002年04月03日:18時35分05秒
Re: 『俺に撃たせろ!』火浦功 / sf
遅筆と面白さで有名な火浦功による、ハードボイルドのパロディ的なコメディ。例によって既に読んだ人むけに追加の作品(後日譚)が加わっております。
ハードボイルドは好きらしく『死に急ぐ奴らの街』なんかは、まともにハードボイルドな短編連作です。
2002年04月03日:14時38分28秒
『俺に撃たせろ!』火浦功 / 銅大
『俺に撃たせろ!』著者:火浦功 徳間デュアル文庫 505円+税 ISBN:4-19-905087-6
徳間デュアル文庫がライトノベルのレーベルかどうかは判断の分かれるところであろうが、火浦功さんの作品なのだからライトであると強弁する事はできなくもあるまい。
世間一般では、仕事をしないSF作家のトップに位置づけられている火浦功さんだが、あれは仕事を「しない」のではなく、仕事が「できない」のではないかと私は思っている。何か、こう、SFの神様か何かが啓示を下されないと、筆が進まないのではないかと。
実際、火浦さんの文章は独特の脱力系のテンポといい、繰り返しギャグの巧みさといい、よく練り込まれている。
間、というのを心得ていると言ってもいいだろう。
たとえば本書はこうはじまる。
俺の名は、アルツ・ハマー。
この都市(まち)の正義と平和を、一手にひきうけている男だ。
たぶん、そのはずだ。
お分かりいただけるだろうか。この、最後の「たぶん、そのはずだ。」で読んでいる人はがくっ、とくる。ツッコミ系の性格の持ち主ならおいおいおいおい、と通勤電車の中で読んでいておもわず声に出してしまい、周りの冷たい視線を浴びる事であろう。
一事が万事、この調子でアルツ・ハマーの活躍は続く。読んでいるうちに、もうどこまでいくのやら楽しみになってくるほどである。
しかも、困ったことに。
最後は、そんなアルツ・ハマーがカッコ良く思えてしまうのである。
おそるべし、火浦功。
2002年04月02日:17時44分38秒
Re: 『アリソン』時雨沢恵一 / sf
題名は物語の駆動役のヒロインの名前。死がわりとあっさり流されてる感じはキノといっしょかな。
実はIRCで(#もの書き 2002-03-21)「壁画一枚」うんぬんと言われていたので、関心をもって買ってしまったのでした。まあ、わたしゃ別にネタはこれでいいと思うけど、本格SFなら人間がみじめになるような何かが出てきたかもという気はします。
無茶と率直さと工夫(と都合よいコネと出会いと幸運)でガンガン突き進む、"一夏の冒険"ものっぽい感じですか。どんどん転がる事態と窮地、そんなんで成功するのかと突っ込みを入れつつも基本的に小気味良い展開。過去の悪行をさらっと想起したり口に出したりするのも、いい感じです。
2002年04月02日:12時40分00秒
Re: 『イリヤの空、UFOの夏:無銭飲食列伝』秋山瑞人 / sf
学生時代……とくに小学生時分あたりの悪さを思い出させる細部がいいんですよね。ライトノベル的な造形の人物を、しっかり地に足のつくように描き込んであるという感じ。その分、展開は派手でもなければ、手早くもないわけで、そのあたり本来の対象層はどう読んでるんだろうと思うことはあります。
2002年04月02日:12時10分39秒
すみません / 石頭
書籍の出版社、値段を書いて頂けた方が購入する際に便利なので、よろしければお願いします(できればISBNコードも)。>紹介する方
2002年04月02日:09時52分58秒
『アリソン』時雨沢恵一 / 銅大
この本を一言で紹介すると、
「人が死ぬ『アップフェルラント物語』(田中芳樹)」
となるであろうか。
どちらの作品も少年と少女がいて(いやそれを言うとたいていのライトノベルにはこの二つが存在するのだが)
どちらの作品も20世紀初頭の文明レベルで
どちらの作品もすごいお宝があって
どちらの作品もお宝を狙う悪党に、少年・少女が果敢に立ち向かう
テイストは、古く懐かしいジュブナイルである。
でも、人が死ぬのである。
いや。『アップフェルラント物語』でも人は死ぬ。ばりばり死ぬ。田中芳樹さんはあっさり人を殺す。
でも、重みがちがう。
けっこうヘビーに人が死ぬのである。
こういうのが好きな人もいるだろうし、なんか肌に合わない人もいるだろう。
私は後者だ。私がライトノベルを読むのはいい気分になるためであって、人生について考えるためではない。それならもっと別の物を読んでいる。
それと最後に一つ。
壁画一枚で、世の中変わったりはしないと思うのだがどうよ。
2002年04月01日:13時57分52秒
『イリヤの空、UFOの夏:無銭飲食列伝』秋山瑞人 / 銅大
「ほらほら陰毛だ陰毛!! いんも―――っ!!」
……
のっけから失礼いたしました。花村くんが相変わらずいい味を出してます。出汁をとったらさぞかしうまかろうて。
ヤングアダルトは作者で買う、という人がいます。他ならぬ私もそうです。そして、秋山瑞人さんは、私にとってその中の一人であります。
……今のところね。
『イリヤの空、UFOの夏』、これは歴史改変SFと強弁すればできなくもない作品です。そしてSFだとするのならば、ライトノベル版『エンダーのゲーム』だとこじつけようと思えばこじつけられなくもありません。
ただ戦争のために調整され、訓練された14才の少女。
どこまでも日常が続いているようで、裏ではすでに戦争が始まっている、それでいて平和な世界。
その日常の中にどっぷりつかっていた一人の少年が、少女と出会う事から、物語は始まります。
そして、物語はごく普通の学園物のように、ラブコメ小説のように、進みます。
その裏に、暗い戦争の影をひきずりながら。
「無銭飲食列伝」は、これまでのストーリーでもとりわけ明るいテイストの、読んでいて大笑いできる作品に仕上がっています。文庫にはまだなっていませんが、『電撃hp 15号』に掲載されています。『イリヤの空、UFOの夏』のファンなら、この短編のためだけに買っても損はありません。というか買え。
ですが、夏にはやがて終わりがきます。
おそらく、読んでいる人の多くが、無意識に伊里野との別れを感じていることでしょう。
せめて、それまでの間に。
少女が、より多くの幸せを見つけられますように。
そして、
最後の最後で、浅羽の下駄箱に猫が入っていますように。
私としては、ただそれだけが望みです。
2002年03月31日:21時09分43秒
Re:『暁の天使たち』茅田砂胡 / sf
ちなみにC★NOVELS 2002年3月25日刊 暁の天使たちで冒頭20ページが読めます。リィとシェラがでてきて、連邦っすかー。ど派手に活躍してくれそうですな。
2002年03月31日:17時03分03秒
『暁の天使たち』茅田砂胡 / Prof.M
今月出たばかりの新作。前作のあとがきで予告された通り「学園物」です。
とはいうものの,『デルフィニア戦記』,『スカーレット・ウィザード』と人並み外れた(怪物呼ばわりされる)主人公が活躍する作品を書いてきた作者のこと,「普通の」学園ものであるはずもなく,今回の主役達も周囲を巻き込んでひと騒動起こしてくれます。
#怪物親父がいなくなったと思ったら,あの「怪物」の相手をさせられるとは不幸だねぇ>ダニエル坊や
独立した話ではありますが,会話の内容の端々に『デルフィニア戦記』,『スカーレット・ウィザード』を読んだ人でないと理解できない部分が多いのが心残りですね。
#追記:“王”と“女王”はこれから登場する模様。
2002年03月31日:12時36分24秒
Re: 『スター・ハンドラー』草上仁 / sf
『スター・ハンドラー』は異生物ハンター系スペースオペラをコメディを強めて変奏したような作品です。作者は短編SFの名手で、これまでも変な生物の登場する短編を多彩に出してきた草上仁。
最初はお馬鹿なネタに見えた(実際爆笑ものの)ガジェットや人物が、きっちり話の基本構造に食い込んで、問題解決や真相の伏線になってるあたりがさすがですね。危機また危機、強大で変な敵と、頼りになるようにみえない変な味方のてんこ盛りです。
上巻では、主人公がひたすら不幸のジェットコースターに乗り、困った仲間たちとひどい目にあう展開。下巻では、悪人たちの楽しい計算違いと、エスカレートする事態、奮闘する主人公たちが見物です。
さて、続編がもう出てたのか。買わないと。
2002年03月31日:12時07分19秒
『スター・ハンドラー』草上仁 / 銅大
カバー折り込みの、著者紹介がふるっている。
『著書多数。絶版も多数』
ああ、そうだ。確かにそうだ。私は草上仁さんがハヤカワから出したSF短編集はすべて持っているが、今ではこれらを手に入れるのも難しいだろう。
とはいえ、死んだ子の年を数えるのも虚しいばかり。人は未来に生きるのだ。
草上仁さんは1959年生まれであるから、作家としては脂がのりきっている時期であろう。本作品も、昔ながらのとぼけたノリは健在である。
動物を調教する学校を最低の成績で卒業し、就職とお金に困っていたヒロインは、とあるきっかけである会社に就職し、ちょっとかわった猛獣の調教を行うことになる。
かけねなしに凶暴で
素数+1の群れを作る猛獣である。
だからにして調教も命がけである。
「ぼくらは今、素数じゃない」
うわぉ。
しかも、これがただのジョークではなく、きちんとお話の中で意味を持つのである。さすがオチを心得た作家さんである。
仲間や、登場する他の連中も、まともな人間は一人もいない。皆、どこかおかしい。いかれてる。そのいかれ具合もまた、楽しい。
めでたいことに、本作はシリーズとなり、今月になって、『さまよえる海 上』が発売となった。この調子で、がんがんいってもらいたい。
ライトノベルでは珍しい、手練れの一作である。
読んで損はないぞ。
2002年03月30日:10時26分07秒
bk1に角川スニーカー文庫入荷 / sf
販売仲介しているオンライン書店ビーケーワン(7000円以上の注文は国内送料無料)にて2002年04月の角川スニーカー文庫が入荷しております。
2002年03月30日:09時17分39秒
『ガンダムエース』:名もなき戦士の物語 / 銅大
機動戦士ガンダム。
放映から20年以上。いまなお、ゲームにプラモにTVにOVAにマンガに、そして小説に新しい作品が登場するという、おそるべき作品。
何がまぁ、そこまで人の心を掴むのか、魅力はいったいどこらへんにあるのか、それはさておいて。
今回紹介するのは、ガンダムの雑誌――本当にガンダムだけの雑誌なのである――『ガンダムエース』の4号から掲載がはじまった、『名もなき戦士の物語』である。
これは一年戦争、いわゆる最初(ファースト)の『機動戦士ガンダム』における戦いで、TVやビデオでは登場しなかった、無名の戦士たちに焦点をあてた短編小説である。
その最初を飾るのは
『ボール・パイロット 133−28』
著者:鷹見一幸(時空のクロスロード)
イラスト:緒方剛志(ブギーポップ)
著者もイラストも、立派にライトノベルである。
しかし
しょっぱなからボールっすか。そら早い者勝ちですが。
ちなみにガンダムを知らない方のために紹介しておくと、ボールというのは、その名の通り、ボールの形をしたロボット(?)で、申し訳程度の手(マニュピレータ)がついていて、頭のてっぺんに、大砲がのっかっているという実に脱力系のデザインをしている。
なんでも、宇宙空間の作業用ポットに大砲と火器管制を載せただけという、現実で言うならジープやトラックに武装を施した兵器である。
当然、使い捨て。
損耗率、高し。
TVの画面でも、戦っている場面はたいていやられている場面である。頼むからビグザムにケンカを売るのはやめて欲しい。つーか、やめれ。
しかし、使い捨て兵器であっても、そこにはパイロットがいるわけで。パイロットにだって、それまでの人生があって、戦争が終わったらこうしたい、ああしたい、という思いがあって。
けれど戦場はあくまで無情で。
人の思いも、夢も、すべてを飲み込んでいく。
味方だけでなく、敵のものも、また。
それなりにしんみりとする作品である。
ガンダムを知らないという方にもおすすめ。
2002年03月30日:08時50分22秒
ライトノベル雑談所 開設 / sf
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