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Date: Tue, 10 Oct 2000 10:32:10 +0900
From: Hiroto Matsuura <matsu@aeslab.energy.osakafu-u.ac.jp>
Subject: [PR-J 01174] Dorgon 2 -( last )
To: PR-J@cre.ne.jp
Message-Id: <10010100132.AA03898@157.16.1.71.aeslab.energy.osakafu-u.ac.jp>
X-Mail-Count: 01174

河内のhiroこと松浦です。


ドルゴンヘフト第2話の翻訳ですが、
最後が近づいたので一気に完成しました。
(最後に書いてあるようにドイツ語オリジナルから
1年以上も遅れたことになります。)
近いうちに、
http://ha3.seikyou.ne.jp/home/teraner/pr/proc/proc.htm
でウエブ版も公開します。

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ホーマー・G・アダムスはカウトーン・ディスペイアーの悲しい話を
終えた。アウレクとサムは明らかに心打たれたようであった。
「悲しい話だ。」ソマール人は反復した。
「それだけではありません、なにせ彼は生きているようですからな。」
アウレクは極めて冷静に指摘した。
ホーマーは彼のグラスのソーダ水を飲み干した。彼は頭を振った。
彼らは二つの基地を失った。ツアリトとガタスは残忍な攻撃を受け
その職員たちはむごたらしく殺された。彼らの知っていることと言えば
組織の名前「モードレッド」と一人のメンバー、カウトーン・ディスペイアー、
そして目的がキャメロットの破壊であることだけだった。
「ヴィルサル・セルはどうなりました?」シガトーン(Siggatone、訳注
サグギター人?)のアウレクは訊ねた。
ホーマーは眉をひそめた。彼は宇宙アカデミーの元教官についての
データを彼のシントロニクスで検索した。
「コンピューターによれば、ヴィルサルはまだクリニックにいて
カウトーン・ディスペイアーの死に苦しんでいるようだ。医療記録
は彼の精神の混乱がまだ増加していると述べている。彼は
自分が太陽系帝国に住んでいて太陽系元帥であると信じ込んで
いるのだ。」
アウレクは眉を上げソマール人を見た。彼はサムもまたキャメロット
にいて、少なくとも一人は知人がいることを喜んだ。ホーマー・G・アダムス
とは数日前に会ったばかりだ。とは言え、せむしのテラナーは好感が
持て、したしげに思えた。アウレクはサムからローザン(Rosan)と
ウイル(Wyll)のノルドメント(Nordment)夫妻が初めて長期休暇に
出かけたことを聞かされた。二人は豪華船<ロンドン>および
<ロンドンII>での冒険での仲間であった。
ジョーク・カスカルとサンダル・トークは乗員の訓練のために
<タクヴァリアン>に戻っていた。彼らは数週間前には丁度キャメロット
にいたが、今は新しい船の乗員を太陽系帝国の古い習慣に従わせようと
していた。
「ジル・リーカン、ネレスでの唯一の生き残りのキャメロット人の
事を話しましたね。おそらく、彼女が我々に何か話してくれるのでは
ないでしょうか。」サムが提案した。
ホーマーは手を振って反論した。
「あの女性は完全に狂っている。」細胞活性装置保持者は説明した。
「当時、我々は正気に戻そうと試みたが、彼女は意味をなさない
理解不能な戯言を発するだけだった。」
「ひょっとしたら、今は意味があるかも!やってみましょう。」
アウレクは言った。
ホーマーは賛成した。彼らはシフトを使ってリハビリテーション
クリニックに行った。
「ふーむ、カウトーン・ディスペイアーに係わった人間はみんな
ここに来るようですね。」アウレクはヴィルサルとジルを暗に示して
冗談を言った。
ジルはベッドの上に無関心で座り体を前後にゆすっていた。
ホーマーは彼女に話しかけたが返答は無かった。数分後、彼らは
この試みを打ち切ろうとしたがアウレクは早々にあきらめはしなかった。
彼はジルを掴み、彼女は大きく見開いた目で彼を見た。サグギター人
はそこに恐れと狂信を見たと信じた。
「カウトーン・ディスペイアーは生きている!」彼は大声で言った。
今度は彼女は反応した。その女性は金切り声で笑い始めた。
アウレクは耳を覆わねばならなかった。
「もうおしまいよ!あんたたちみんな地獄行きね!」彼女は怒鳴りたてた。
「キャメロットの最後を決定づけるのは彼の運命よ!彼は当時これを
予言したわ!」
「誰が予言したって?」三人は一斉に訊ねた。
けれどもジルはそれ以上答えなかった。彼女は立ち上がり駆け出した。
サムにけりを入れアウレクを引っ掻いた。監視人たちがやってきて
直ちに彼女を落ち着かせた。三人は落ち着かない状況に残された。

                                        

                                       *

                                        



                                        
デジャベイ(Dejabay)星系は無人であった。大気を持つ唯一の惑星は
砂漠惑星デジャベイIであった。モードレッドの基地はこの荒れ果てた
惑星にあった。巨大な格納庫が地下に作られテラー(terror)級の
重戦艦の着陸を可能にしている。
<バーダン>はナンバー1の命令でこの星区に接近し、すでに
着陸体制に入っていた。直径3.5kmのクエーサー級の戦艦は堂々と
地面に降り立った。
<バーダン>の周りには直径「わずか」1kmの他の7隻が立っていた。
これらはモードレッドの指導者たちのものであった。全部で9人の指導者
がいた。彼らは全てナンバーを持っていた。首領はナンバー1で、その正体
は誰も知らなかった。ナンバー2はカウトーン・ディスペイアーで
ナンバー1の右腕になっていた。
ハッチが開きディスペイアーはタラップをゆっくり歩いて降りた。歓迎委員は
既に彼を待っていた。基地の司令官、ジョーグ・ロッド(Jerg Rodd)は
銀灰色の騎士の前で敬礼した。
「デシャベイIに貴方をお迎えできて光栄であります!」
「つまらないお世辞は止めて会議室に案内せよ。」ディスペイアーは
陰鬱に返答した。
ジョーグは内心たじろいだ。汗が彼の額を流れた。ディスペイアーは
予断を許さない。彼は失敗には死でもって罰する。ナンバー1以外の誰も
この仮面の下に誰がいてどんな運命が彼に起こったのかを正確には
知らない。
それ以上自分自身を売り込むような試みはせずに、ロッド司令官は
上官を部屋に案内した。そこには他のナンバーたちが既に待っていた。
ただ一人、ナンバー3だけが任務の途中で時間までにここにはこれない
だろう。
デニス・ハーダー(Dennis Harder)、ナンバー7でテラナーである、は
ディスペイアーをなめるように見た。彼は黒いキャメロット人の好敵手
であった。彼は現実家でディスペイアーが彼らに語った運命やその類の
ものは信じていなかった。ディスペイアーは立ったままを好んだが、他は
椅子に座った。
部屋は暗かった。中央には彼らが座った大きな机があった。机の正面には
モードレッドのシンボル、めらめら燃えている炎の中の城、を写す鏡の壁
があった。ナンバー1はその背後にいた。彼は副官たちを歓迎し会議が
始まった。
「我らは作戦の最初の成功を論じるためにここに集まった。」ナンバー1は
開催を宣言した。
たずねられることなしに、カウトーン・ディスペイアーは話始めた。
モニターが明るくなり、最初の2つのキャメロット基地の最後の様子を
示した。
「私はツアリトとガタスの基地を破壊した。」彼は報告した。「我々の
仕事の露呈は最小限に押さえられた。キャメロット基地は完全に
破壊された。ツアリトにおける敵部隊は全て抹殺された。ガタスでは
我々の事を不死者どもに知らせるため数人のキャメロット人をわざと
逃がした。」
聴衆は静かにうなずいた。
ナンバー4のラサルのアルゴン(Argon von Lasal)、アコン人で
<ゲッチスバーグ(GETTYSBURG)>の司令官、は立ち上がり、論評を
加えた。
「ディスペイアーはうまくやったようだ。私はすぐに彼の後に続こう。
スフィンクス(訳注:アコン人ならドローワーと言うべきでは?)と
アルチェス(Archez)の基地の攻撃はすでに予定済みだ。」
アコン人は自分の種族に対する哀れみを感じていないようであった。
モードレッドの支持者は全て自分のテログループの理念を確信していた。
彼らのほとんどにとって、金と権力が最も大事であった。幾人かは
天の河銀河を変えようとしていた。ディスペイアーは後者に属していた。
彼の動機はキャメロットへの憎しみと天の河で起こっている事件の推移を
変えたいと言う衝動であった。彼は何かを成し遂げたかったのだ。
「キャメロットはもう終わったも同然!我らが占領するのだ!」ナンバー6
のホラチ・ディーベルズ(Horach Diebels)が叫んだ。
しかし、ディスペイアーはそのスプリンガーの言葉を否認した。
「どんなことがあっても不死者どもを過小評価してはならない。ペリーと
アトランは深淵の騎士だぞ。偉大なる宇宙のパワーが彼らと共にあるのだ。」
デニス・ハーダーは笑い転げ始めた。
「ディスペイアー、我らに宇宙のパワーと魔法についての馬鹿げた
迷信をわけ与えたまえ。天の河で唯一の魔法はギャラックス(Galax、訳注:
NGZ時代の通貨)だけだ!」
銀色の騎士はナンバー7に歩み寄った。彼は手を上げ神経を集中した。
ディスペイアーはハーダーに自分の首に手を回し締めさせた。ナンバー7は
暗示に従った。彼は息を切らして喘いだ。
「思うにお前の信仰不足は嘆かわしい、ハーダー。お前もギャラックスと
同様に大宇宙の機構の中では取るに足らないちっぽけな歯車にすぎない。
お前には宇宙のパワーと魔法の背後に何があるかなど絶対にわかるまい。」
「もうよかろう、ディスペイアー!放してやれ。」ナンバー1が介入した。
一方では彼はこの教授を大いに楽しんだ、他方ではカウトーン・ディスペイアー
はやり過ぎてはいけない。
「仰せのままに・・・!」
「はい!」ハーダーは息を切らして呼吸した。
そこいる人々の間に静寂が支配した。ディスペイアーは再び自らを
印象的に一目をおかせた。
「戦力を出し惜しみするのは無用だ。我らの次の目標はオリンプ。」
ナンバー1は背後から決定した。
「しかし、議題はプロフォスについてのはず。」アラ・オラン・タズン(
Ara Oran Tazun)、ナンバー5、は発言した。
ディスペイアーも同じく驚いた。彼はすでに特殊工作員を訓練していた
のだ。
「計画段階は終わったと思う。ナンバー7の助言通り、我らは銀河系を
経済的に弱めるべきだろう。そのためにオリンプを攻撃しようではないか。」
「オリンプを攻撃?実現不可能な計画です!」アルコン人エロン・クオーター
マギン(Eron Quartermagin)、ナンバー9、は口をはさんだ。
クオーターマギンはアルコン皇帝とのコネクションを持つためモードレッド
の重要人物になっていた。
「キャメロット基地は重要な工場の近くにあり、破壊されねばならない。」
ナンバー1は命じた。「工場もまたしかり。カウトーン・ディスペイアーが
指揮を取れ!」
カウトーンはこの重要な一撃を指揮することに誇りを覚えた。
「誰がプロフォスのキャメロット基地の破壊を行うのですか?」
「ナンバー8!」
この声でがっしりとしたエルトルス人が耳をそばだてた。ベン・トライル(
Ben Trayir)は<沖縄(OKINAWA)>を指揮していた。彼女もまた基地を地上から
抹殺するのに十分な工作員を有していた。
「ディスペイアー、オリンプへの攻撃の後、キャメロットへビデオメッセージ
を送るのだ。これからがお前の仕事の始まりだ。成功の報告を期待するぞ。」
モードレッドの神秘的な首領は会議を終えた。
ナンバー8とナンバー2はおのれの任務に取り掛かった。

                                       *

カウトーンはオリンプの作戦を速やかに終えようとした。地球と並んで
経済の中枢となっているこの重要な惑星はツアリトよりずっと堅固に
守られている。ガタスとは違って、人口の多い惑星では気付かれずに
作戦を始めることは出来ない。キャメロット基地は主要大陸の
首都トレードシティにあった。巨大都市の背後には山岳地帯が広がっている。
カウトーンはいくつかの事実に目を止めた。太陽はボシックの星として
知られている。オリンプの直径は11114km。自転周期は28.6時間で
重力は1.03g。平均温度は摂氏34度。天候は、赤道部での激しい嵐を別にすれば、
常に明るく太陽に照らされている。
<バーダン>は超空間を離れただちに未知の勢力より送られた隠れ蓑を
動作させた。
「コーレイ提督、惑星に接近しキャメロット基地に照準を会わせよ!」
ディスペイアーは全てのキャメロット基地の座標を正確に知っていた。さらに、
キャメロットについての情報もあった。銀河系の勢力グループに所在を
知られていないというペリーの利点はモードレッドに対し無効であった。
<バーダン>は秒速15万キロでオリンプに向かって飛行していた。
次第に速度をゆるめていった。<バーダン>は防衛艦隊に気付かれる
ことなくこれをやりすごした。カウトーンは惑星上のキャメロット人を
走査した。彼らは最後が迫っていることを知るよしもなかった。
<バーダン>は大気圏に突入し停止した。
「目標捕捉!」ディスペイアーは命じた。
「準備完了、サー!」
「撃て・・・!」
これまた隠れ蓑に守られたトランスフォームロケット(transform rocket)
が発射された。それは急速にトレードシティに接近した。<バーダン>は
すでに向きを変え軌道を離れていた。
「爆発まで30秒。」ケネス・コーレイ提督が報告した。カウトーンは
自ら秒読みをした。探知機が爆発を記録するために送られた。
20秒。
トレードシティからの映像が示された。日曜日であった。ほとんどの人々は
休暇であった。ロケットは小さな破壊力しかないとは言え半径500メートル
内のあらゆるものを破壊するだろう。
10秒。
カウトーンは再びオリンプの人々を走査した。彼らはまだ生活を楽しんでいたが、
数秒後には創造主と対面するだろう。
ロケットは爆発5秒前に目に見えるようになった。それは目標に直撃した。
巨大な爆発が都市をゆるがした。火と煙のきのこ雲が、かつてキャメロット
基地と工場の会った場所のおよそ200メートル上空に立ち上った。
目標を達成して<バーダン>は現場を離れた。カウトーンはアンドロイド
を使ってキャメロットにビデオメッセージを送っていた。

                                       *

アダムス、アウレク、そしてサムは過去数日、ほとんど眠れなかった。
ツアリトとガタスへの攻撃後数日は何も起こらなかった。おそらく
モードレッドは他の目標を追いかけているのだろう。ロルフ・フリードベル
がビジネス旅行からたった今戻ってきた。かれはソルから18000光年ほど
離れた惑星ツリマン(Turiman)でのTAXITに対する取り引きを停止してきた。
最初の悪いニュースはジル・リーカンの死であった。彼女は自殺したのだ。
死体の写真はそこにいる人すべてに衝撃を与えた。キャメロット女性は
目を見開き自分の動脈をかみ切っていた。保安上の理由から、アダムスは
ヴィルサル・セルにも事件を伝えたが、その男は老けて、疲れきって
弱々しかった。彼は脅威にも助けにもならなかった。
3人の男は再び会議室に座っていて、そこに第二の悪いニュースが届いた。
一人の士官がアンドロイドからカプセルに詰めて受け取ったビデオを
持ってきた。それはモードレッドからのものであった。アダムスは
モードレッドがキャメロット基地の座標ばかりではなく主要惑星まで
知っていることにショックを受けた。モードレッドから安全な場所は
何処にも内容に思える。
騎士に似た姿がホログラムに現れた。
「お久しぶりだ、キャメロット人諸君!特にペリー・ローダン。
もっとも彼は居ないようだが。私はカウトーン・ディスペイアー。
ご覧の通り、私は変わった、ローダンのおかげだ。」
彼の言葉にあざけりと軽べつが読み取れるだろう。
「オリンプの基地はたった今破壊された。工場と通行人も巻き添えに
なった。当然のことながら、諸君はショックを受けたろうが
まだまだ続くぞ。諸君等はモードレッドと妥協点を見いだすことは
出来ない。我々はすでにキャメロットに処罰を科した。その罰とは完全なる
抹消だ!」
ホログラムは消えた。アダムスは蒼白になった。かれはシントロニクスに
走っていってディスペイアーのメッセージの真偽を確かめた。彼の
言うことは正しかった。オリンプのキャメロット基地はもはや
存在しない!

                                        

                                        

モードレッドはすでにキャメロットにかなりの損害を与えた。カウトーン・
ディスペイアー、キャメロットの新しい大敵の暗い運命を見てきた。
英雄たちがモードレッドに対して行った行動はラルフ・ケーニッヒによる
第3話「キャメロットの危機」で語られる。



このエピソードは1999年8月16日に貴方の元に届けられるだろう。

                                        

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(c) 1999 PROC All rights reserved. 
ドルゴンサイクルは非商用のファン作品である。
主編集:Holger Ho"pfl、翻訳:Thomas Steinborn、評論:Ju"rgen Menge、
カバー画:Stefan Lechner、著作:Nils Hirseland。
ペリー・ローダン宇宙のあらゆる権利はVPM in Rastatt, Germanyに属する。

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Hiroto Matsuura@Osaka Pref. Univ., Energy System Eng.
松浦寛人@大阪府立大学工学部エネルギー機械工学科
e-mail: matsu@energy.osakafu-u.ac.jp
Tel   : 081-(0)722-52-1161(ext.2229)   Fax   : 081-(0)722-59-3340
 
    

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