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Date: Tue, 03 Oct 2000 19:24:39 +0900
From: Hiroto Matsuura <matsu@aeslab.energy.osakafu-u.ac.jp>
Subject: [PR-J 01167] Dorgon 2-(?)
To: PR-J@cre.ne.jp
Message-Id: <10010031024.AA03883@157.16.1.71.aeslab.energy.osakafu-u.ac.jp>
X-Mail-Count: 01167

河内のhiroこと松浦です。


夏のうちに完結しようと思っていたドルゴンヘフト第2話の
翻訳の続きです。

前回何処までやったかも忘れたので、重複ないし不足があるかも
しれませんが、ご容赦を。

おそらく、あと2回分ぐらいで第2話も終わりですが、
http://ha3.seikyou.ne.jp/home/teraner/pr/proc/proc.htm
にあるように独語版が第3サイクル(「島」)、
英語版も第2サイクル(M-100)に入ってかなり水をあけられて
しまっています。そこで、もしスキップして面白い話を訳せ
との要望があれば考慮します。

ちなみに、第3話の舞台はプロフォス、カスカルとサンダルが活躍し、
第4話と5話の舞台は<バジス>、ソマール人サムと一人のTLDエージェント
が活躍し、第6話には再びカウトーンが登場し、ローダン本人も<ソル>
で登場します。第1サイクル(モードレッド)は11話で完結です。
# 第3話はコンバット、第4が007と言えば雰囲気はわかるでしょうか?

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カウトーンにとって特別な日はNGZ1282年7月22日の早朝に始まったが、
彼は運命的な出会いを予想もしていなかった。彼はその夜、キャメロット
のインターネットでネットサーフィンをしていた。彼はやはりポートアーサー
から来ているツアントラ(Zantra)と言う名前の少女のメッセージを
受け取った。
彼は彼女の書き込みに好意を持った。彼女は率直で開けっ広げな
性格のようだった。カウトーンは勇気を振り絞って、一緒に映画に
行くことを持ちかけた。彼女も反対せず、彼らは8月7日のデート
の約束をした。
カウトーンは映画館に1時間も前に到着し落ち着き無く、心臓を
ドキドキさせて入り口ホールに腰掛けた。彼は長いブロンドの髪で
黒い服の女性を探してまわった。何人かの女性が傍らを通りすぎた
が彼女では無いように思った。一人の少女が彼に手を振った。
あれが彼女だった。彼は一目ぼれしたわけではないが、彼女は
非常に可愛かった。
「ハーイ、私、ツアントラ。」彼女は心に直に響くような声で話始めた。
彼女はタバコを吸った。彼は非喫煙者だったのでそれは好きではなかった。
かってペリーが言ったことには、人々がもっと敏感であった時期が
あったにもかかわらずタバコは再びファッションになってきている。
彼女は長い癖のない黒ブロンドの髪をしていた。皮膚は滑らかでひび一つ
ない。体は頑強ではなくほっそりしていた。1グラムの余分な脂肪もなかった。
カウトーンが気付いた唯一の点は少し長すぎる鼻であった。それは決して
醜い効果を持たなかった。彼女と映画館で過ごせは過ごすほど彼は
彼女が好きになったが、まともな会話を始めるには内気過ぎた。おまけに
彼は女性と過ごした体験が無かった。彼は彼女に何と言うべきかを
知らないだけであった。
さらに残念なことに彼女からイニシアティヴを取ることも無かった。
彼女はカウトーンの内面の緊張を知りもしなかった。
彼らは映画「Y-ファイル」が終わった後、町をしばらく散歩した。不幸にも
カウトーンは朝早く起きなければならないので夜中にはバンガローに戻らねば
ならなかった。彼らは地球のオペラを写しているホログラムスクリーンの
前でたちどまった。ツアントラは大層興味を示したようだった。
古いテラのイタリア語で歌われていたのでカウトーンには一言も
理解出来なかった。
「一体全体あれは何だい?」彼は知りたがった。
「愛・・・!」彼女は静かに答えた。
カウトーンは返事をしなかった。
「愛・・・一体それは何だ?誰も僕を愛してくれたことは無かった。」
彼は思った。彼はツアントラを見た。彼女は全く可愛かった。心臓が
早く鼓動した。「彼女が僕を愛してくれたなら。聞くのが怖い。
時間を置くべきだ。彼女は逃げ出したりしないだろうから。」
彼らはさよならを言った。カウトーンは自分自身と内気さに腹をたてた。
彼は彼女を失っていない様に望んだ。しかし彼の恐れは根拠のないもの
であった。

                                       *

安心したことに、彼女はすぐ後に電話してきた。彼は彼女をキャメロットの
高官のパーティに招待した。ペリーはカウトーンがガールフレンドを
連れてきたことに何も言わなかった。それどころか、彼がようやく
誰か友人を見つけたことを喜んだ。しかし、カウトーンの長期にわたる
問題は生き残っていた。彼は彼女に愛を告白するには全く内気過ぎた。
パーティの後で彼らはローダンのバンガローのバルコニーに座った。
ツアントラは手すりに立って下を見下ろした。ローダンの所有地は
断崖の真上にあった。そこからはポート・アーサーの素晴らしい眺めが
一望できる。都市は星をちりばめた空の様にきらめいていた。カウトーンは
単なる友達であるとはいえ、彼女の傍らで満ち足りて幸福な感じを覚えた。
時が二人を一緒に連れていってくれたらと望んだ。
「美しい景色ね。」彼女は静かに言ってカウトーンを見た。彼女の大きな青い目
はカウトーンの心臓をこれまでに無くどぎまぎさせた。
「ああ、キャメロットは美しい世界だ。」彼は答えた。
「他にももっと美しい世界があるわ。その一つに私はすぐに行こうと
思っているの。」ツアントラは言った。
「何だって?」彼は知ろうとした。
「私はシヴェリガー(Sverigor)に行きたいの。子供の頃、其処にいたのよ。
美しい世界よ。私はキャメロット基地の職場に応募するつもりよ。」
彼女は説明した。
「でも、君は学校の教育も終えていないじゃないか。
キャメロット基地での資格を別にしても!」
ツアントラは再び彼に向き直った。彼はほとんど彼女とキスしそうに
なった。
「何人かに相談したわ。彼らの考えでは私はそこでも同じように
必要な訓練を受けられるそうよ。キャメロット人は規則に関して
テラナーほど堅物じゃないの。」
「大いなる利点だね。」カウトーンは同意した。
「そう、まさにね!」
「シヴェリガーはキャメロットから随分遠くだね。そんなに急がなくても。」
「この愛する惑星に住むことが私の一番の望みなの。」彼女は言った。
「いつの日にか私がキャメロット基地の指揮をとるかもしれなくてよ。」
カウトーンは手すりに歩いていって町を見下ろした。彼はさしあたり
愛の告白を控えようとした。もしそうすれば物事が不必要なまでに
複雑になるだろう。彼らは座り心地の良いデスクチェアーに腰掛けた。
「君のことをもっと話して。」カウトーンは頼んだ。
ツアントラは彼の希望に従った。彼女はカウトーンより一つ若い。
彼女はキャメロットで成長した。両親はすぐに離婚した。父親とは
コンタクトが無い。彼女は母と義父と一緒に住んでいる。彼女の生活は
カウトーンほど悲しいものではない。彼女は「よくある」問題を
抱えているだけだ。彼女が愛した最後のボーイフレンドは数か月前に
彼女を捨ててそのことで少し落胆している。
マリッサの様に彼女は恋愛について彼より体験を積んでいる。
「でもどんな女の子でもそうだろう。」彼は考えた。
会話の間にカウトーンは彼女が何か特別な人のように感じた。彼らは
多くの観点を共有していた。二人とも人生で何かを達成しようと
していた。カウトーンにとって、彼が死んで誰も彼のことを覚えていない
としたら最悪であった。
二人は長い時間を過ごしたが何も起こらなかった。彼女が帰宅したとき、
カウトーンはまた何時間もテラスに立ってポート・アーサーを
眺めていた。彼は夢の女性に出会ったと確信した・・・。

                                       *

彼らはしばしばデートを繰り返し、カウトーンは彼女を信用するようになった。
彼はもうずっと前から恋に落ちていたのだが、彼女が本当に好意を持ってくれ
ているのか、彼と同様に彼女が彼を受け入れているのか、はまだ知らなかった。
まだ無条件に彼女がそうしたわけではなかった。
彼の20歳の誕生日の直前、NGZ1282年、9月26日、彼らは彼女の家で
再び出会った。カウトーンはここ何週間と言うもの彼女のことしか
考えられなかった。彼は訓練さえさぼった。しかし、ペリーはにやりと笑って
これを無視した。
その日、ペリーは少し気が滅入った様子であったか、カウトーンにその理由
を話さなかった。カウトーンとツアントラは1日中テラ公園で過ごした。太陽が
まだ暖かい日を落とす秋の素晴らしい日の一日であった。時々カウトーンは
誰かが彼の幸運を妬んでいるかのような感じを感じた。彼は自分に向けられた
悪意に満ちたさげすむような視線を感じた。
彼らが帰宅したとき、ツアントラは嬉しい電話を受けた。人材調整官は
彼女にペリー・ローダンがシヴェリガーのキャメロット基地に対する
彼女の応募を受け入れたと話し、彼女の幸運を祈った。
これはカウトーンにとってショックであった。彼は問題がひとりでに
解決することを望んでいた。今や、ツアントラが10月始め、より正確には
彼の誕生日である10月1日にシヴェリガーに向けて出発するのは明らか
だった。彼女はおおはしゃぎだった。しかし、カウトーンは嬉しいはずが
なかった。今なお自分自身を持ち直そうとした。
「ほかならぬ自分が彼女の喜びに水をさすことが出来ようか?」彼は
考えた。
ツアントラは彼にシヴェリガーのビデオテープを見せた。カウトーンは
彼女としばらく会えないことを知っていた。少なくとも彼自身が
シヴェリガーに行けるようになるまでは。けれども、そのためには
ある種の地位が必要であった。彼はペリーの好意に甘えたくはなかった。
「ペリー・ローダン!どうして彼は僕の背中を刺すようなことが
出来たんだろうか?彼は僕がどれだけ彼女を愛しているか知っていたはず
なのに。彼女こそ僕の唯一の幸運なのに・・・。」
ドアのベルがなってツアントラの友人が入ってきた。
アルネ・オークワード(Arne Awkward)だった。彼は喜び一杯で彼女を
抱擁した。カウトーンはしだいに除け者の様に感じ始めた。アルネは
レーザーポインター(laser pointer)をもてあそんだ。彼はカウトーンが
彼女と二人で過ごそうとしていた最後の時間に現れた。カウトーンは
密かに込み上げるものを押さえていた。怒り、憎しみにつながる制御できない
怒り、が再び起こった。ロビーの破壊者やあのマリッサに対して感じた
憎しみ。アルネと彼はほとんど言葉を交わさなかった。カウトーンは
まだカウチに腰掛けあきらめていた。彼は自分が何も出来なかったことを
知っていた。彼は今ツアントラを失った。すぐに彼は再び独りぼっち
になるだろう。
「なぜ、アルネが来てから黙っているの?」彼女はすこしいらいらして
たずねた。
「僕は彼のことを全く知らないし、君たちが話している話題もそうさ。」
彼は弁解しようとした。「他に何を話せと言うんだい?」
「おしゃべりに夢中になっちゃったわね。じゃあ、家まで送っていくわ。」
「ノー!僕は一晩中ここに居たいんだ。」と彼は考えたが、「ああ、
それは助かる。」と言ってしまった。
彼女はシフトの所に行った。センサーの幾つかが欠けていたのだ。
シフトは生け垣に囲まれた車道に停めてあった。そのため彼女は
交通が分からなかった。中は寿司ずめ状態だったのでカウトーンは
一緒に入る事が出来なかった。彼は外に立ちツアントラが出てくるのを
待った。考え込んで空を見上げ、星を見つめていた。カウトーンは
その瞬間嫌な感じを覚えた。数秒後、彼の気分はさらに悪くなった。
もう1台のシフトが右手からあらわれ、ツアントラのシフトと接触した
のだ。
運転手達はカウトーンに対し怒り、彼に責任をなすり付けた。
ツアントラはなぜ彼が警告してくれなかったかを知りたがったが
哀れな若いディスペイアーはそこに立って謝ることしかできなかった。
他に何が出来たと言うのか?彼はきまりが悪かった。彼は彼女に
さよならを言い、歩いて帰宅した。ペリーは家にいなかった。彼は
まだキャメロットの役所にいたのだ。
彼はほとんど眠ることが出来なかった。朝一番に彼女に電話した。
彼は罪を感じて再び彼女に謝った。彼女は冷たく遠慮がちの様に
感じられた。彼女はシヴェリガーでの新しい住所すら教えなかった。
彼女はNGZ1282年10月1日に出発した。カウトーンの人生最悪の日
であった。

                                       *

たった一人悲しみにくれて彼は公園をさまよった。彼の夢は全て一瞬にして
砕け散った。ツアントラはシヴェリガーに出発した。さらに悪いことに、
彼の不注意から彼女は二度と会おうとはしないだろう。始まる前に
終わってしまった。他の人々ならそれが人生と言うものさ、他にも女性が
いるだろうと言うかもしれないが、彼にとっては違った。彼はもう一度
チャンスがめぐってくるとは思えなかった。彼は身の回りに孤独感を
感じていた。
涙が彼の顔を流れ落ちた。彼はつま先をたてて木に向かってわめきながらけりを
入れた。
「攻撃する相手がちがうぞ、カウトーン・ディスペイアー坊や。」
暗やみの中で一人の男が言った。
彼はゆっくりと近づいた。すぐにカウトーンは彼が誰かわかった。ヴィルサル・
セルだった。
カウトーンは彼の出現に驚いた。
「あなたはここで何を?」
「お前を助けに来た。」
カウトーンは顔から涙を拭いた。ヴィルサルはしたしげな微笑を浮かべて
1本の丸太に腰掛けた。カウトーンはその隣に腰掛けた。
「彼女は他のみんなのようにお前を失望させた。」彼は話した。
「どうしてそれを?」
「私はお前に関心があってずっと観察していた。」ヴィルサルは説明した。
初老の夫婦が暗やみから歩き出してきた。カウトーンとヴィルサルは
彼らが消えるまで見つめていた。カウトーンはため息をついて沈みこんだ。
「何が起こるものやら・・・。」
「お前はたった今悲しい体験をした。もう一度だ、もしそう言うならば・・・。」
カウトーンは驚いて彼を見た。
「何だって?」
ヴィルサルはカウトーンの肩に手を置き激しく揺さぶった。
「お前が生まれてこのかた、誰もがお前に不意打ちを食わせてきた。
誰もが嘘を言い、お前を騙してきた。ツアントラやペリーだって
お前に好意を持っている振りをしたにすぎない。」
カウトーンはヴィルサルが正しいと知っていた。人々は繰り返し
彼を打ちのめしてきた。みんなが彼を汚物の様に扱った。彼は
ペリーとツアントラだけは違うと望みをかけていたのだ。彼らは
新しい家族になるかもしれないと。しかし、事態は急変した。
「けれど・・・きっとみんな僕が悪いんです・・。」カウトーンは
もの憂げに言った。
ヴィルサルは見下したように言った。
「そうなら、ペリーは目的を果したわけだ。お前は捕らわれているわけだ!」
「そうじゃありません・・・。」少年は反論した。「僕はえこひいき
されたくないだけです!」
「私も昔はそう考えていた。私は忠実だったが彼は私を見捨てた。
彼はお前への興味を次第に無くしている。お前は彼の気まぐれに
さらされている。不死には退屈が伴うので、かれはお前をつかってそれを
紛らそうとしているのだ。」
「そんな・・・そんなことはありえない。」
「もしそうでないなら、彼はもっとお前の感情を考慮していただろう。
彼はこの少女がお前にとって全てであることは知っていた。しかしだ、
彼は彼女の出発を許可した!」
カウトーンは立ち上がり再び泣き出した。つかの間の間、彼の世界は
順風であった。しかしそれを可能にした当の人物がこれを奪い去った
のだ。ペリー・ローダン!
「今こそ強くならねばならない。やつらはお前を望まない。これらの
無知でませた生き物どもはお前の生涯にわたってお前をこまらせてきた。
やつらは愛すべきもの貴重なものなら何でもお前から奪い去ってきた。
社会とそのリーダーの一人ペリー・ローダンはお前の生涯をめちゃくちゃ
にした。」
カウトーンは黙った。
「彼はお前に嘘をついた。それとも彼はお前の両親の死について真実を
お前に語ったかね?」
この言葉に若いネレス生まれの男は耳をそばだてた。
「彼は両親が事故で死んだと言いましたが。」
「彼らはキャメロットの犠牲になったのだ。ペリーは彼らにネレスに
軍事拠点を築くように命じたがおかしな生物がそのあたりには
暮らしていた。危険にもかかわらず彼らは逗留命令を受けたのだ。
その後、彼らはこの未知生物によってもっともむごたらしい様で
殺されたのだ。そしてペリーは何もしなかった。」
再びカウトーンの体内に憎しみが生じた。なぜペリーは彼に話さなかった
のか?なぜ嘘をついたのか?それともヴィルセルが嘘をついているのか?
いや!彼はいつも正直でカウトーンに親切であった。キャメロット人は
こぶしを握り締めた。
「お前の怒りがわかるぞ。憎しみをぶちまけろ。ペリーはそれに
対する償いを受けろ!用意は良いか?」
彼はつかの間考えを巡らし、自分の感情を探った。恐れ、激怒、そして
憎しみに満ちていた。何度も何度も彼はひどい扱いを受けてきた。
今やそれを止める時だ。彼は復讐をしようとした。カウトーン・
ディスペイアーは何時でも用意はできている!
「ああ、何時でもどうぞ!どうしたら復讐できる?」
ヴィルサルも立ち上がった。彼は腕を外套の中に入れた。
「そう、奴は今日は帰宅してすぐにバンガローに居るだろう。そこで
お前は奴の暴政から銀河系を救うのだ。」
「俺には奴を殺せないかもしれないが、すぐには忘れられないような
教訓を与えてやろう。」

                                       *

ペリーは疲れ憔悴しきっていた。彼はスコッチをグラスに注ぎ、彼の
大きなバルコニーのデッキチェアに腰掛けていた。彼は静寂と
ポートアーサーの景色を楽しんでいた。背後にカウトーンの
静かな足音を聞くことができた。
「私のいないここ数日はどうだったかね、カウトーン?」彼は
したしげにたずねた。「楽しんだとおもうが。」
「彼女は行ってしまった!」
「誰がいったって?おお、ツアントラのことかね?気の毒だと思うが
彼女は優秀・・・。」
「あんたの命令のおかげで彼女は出発できたんだ。」彼は大声で
遮った。「なんで僕にそんなことをしたんだ?」
ペリーは向き直り立ち上がった。彼はカウトーンに向かってゆっくり
歩き彼を落ち着かせようとした。彼はこの少年がいかに神経質になって
いるかを正確に見て取った。
「私には何もできない。私は彼女が仕事につくことを拒否できない、
君が彼女を愛しているからと言って。事態を解決するのは君の仕事だ。
これができないなら、君にすまないと思う、カウトーン。」
「あんたは底無しのうそつきだ。」彼はわめいた。「あんたは僕の気持ちなんて
これっぽっちも考えてなかった。あんたは両親がむごたらしく虐殺された
事も話さなかった。」
ペリーは誰が彼にこの情報を与えたのかは知らなかったが、それを否定
しなかった。
「私は君を守るため真実を告げなかったんだ。落ち着くんだ!」
「おお、その通り。ペリーは情け深い。」
カウトーンはペリーの顔に唾をはいた。
「自分を取り戻せ、カウトーン。」
ペリーは顔から唾を拭き取りグラスをわきにおいた。彼はカウトーン
のベルトにタゴル剣の木刀を認めた。
「思い知らせてやる!」カウトーンはペリーに叫ぶと次の瞬間には
彼の顔を打ち付けた。
細胞活性装置保持者はよろけて壁にもたれた。彼は鼻から出血して
いた。カウトーンは彼に襲いかかった。キャメロット人の腕はペリー・
ローダンの首をに巻き付き締め上げた。かろうじてペリーは彼を
振り払った。彼はようやく再び息をすることができた。その時には
彼の敵が再び襲いかかった。今度はペリーはカウトーンの胃袋に
カウンターのキックをいれた。あえぎながら彼は床に崩れ落ちた。
ペリーは警備員に警報を鳴らそうとしたが、その時分子破壊剣(
Disintegrator sword)が彼の傍らをかすめた。ペリーは打撃を避けようとし、
トレーニング室に駆け込んだ。カウトーンは彼を追跡した。ペリーは
第二の剣をつかむとそれを動作させた。
「カウトーン、正気に戻れ、冷静になれ。」
「今となっては俺を隷属させようというお前のたくらみは遅すぎる。
彼がやっぱりただしかったんだ。」
「誰が正しいって?」
カウトーンは質問に答えずローダンに剣で切りかかった。しかし今度は
彼は身を守る事が出来た。2〜3度は巧みな剣さばきでカウトーンを
防御に回しさえした。二人は戦いながら居間に戻ってきた。
カウトーンは再び攻撃的になってとうとうローダンの腕に一撃を
与えた。ペリーは痛みで叫び声を上げたが歯を食いしばって戦いを
続けた。カウトーン・ディスペイアーはほとんど満足感を感じた。
とは言え、ペリーは彼の目にはっきりと恐怖を見て取った。しかし
めくらめっぽうの激怒と積もり積もった欲求不満が支配していた。
「もう弱ってきたか、老いぼれ。」カウトーンは愚弄した。
「お前のような連中にはまだまだ負けん。」ペリーは返答し突きを
入れた。カウトーンは緑の光の中で剣を怪しく振り回し、多くの
建具に打撃を加えた。彼らの間で機材が燃え始めた。
「お前らみんな俺を犠牲にして甘い汁だけすいやがって。今こそ
借りを返してもらうぞ!」彼は目に涙を浮かべて叫んだ。
彼はペリーをバルコニーに押し出した。二人のタゴル剣は堅く
絡み合った。カウトーンはペリーにけりを入れ、二人は剣を落とした。
カウトーンは花瓶を手にとりペリーのこめかみに叩きつけた。
ペリーは手すりに向かって崩れ落ちた。怒りに溢れてカウトーンは
彼に走りより手すりから投げ飛ばそうとしたが、ペリーは体をかがめ
代わりにカウトーンが手すりを飛び越した。けれども、彼はかろうじて
片手でつかまることが出来た。彼は奈落の上にぶら下がっていた。
「ペリー、助けて・・・助けて!」彼は弱々しく言った。
ぺりーは彼が何処にいるのかほとんどわからなかった。先の打撃で彼は
ほとんど意識を失っていたのだ。彼はカウトーン・ディスペイアーの手の
所に行こうとしたが出来なかった。若いキャメロット人は手をすべらし
恐ろしい絶叫と共に奈落に落ちていった。
ペリーは意識を失ってへたりこんだ。

数分後、警備員が到着し彼に医療処置を施した。何時間もの間、細胞活性装置
保持者は医療ステーションで目覚めなかった。彼はすぐにカウトーン・
ディスペイアーの行方を訊ねたが誰も彼を探していなかった。すぐに調査
チームがバンガローに送られたが、ずたずたになった死骸を見つけただけ
であった。
ローダンはカウトーン・ディスペイアーの喪に服した。家族生活が
軌道にのっていたに違いないのに。
ペリー・ローダンはカウトーン・ディスペイアーの悲しい章を早く
忘れたいと思ったが、これは彼にとってそれほど簡単ではなかった。
彼は若いキャメロット人に責任を感じていたし、彼にとっての息子の
ようなものだったのだ。とは言え、今や彼は死んでしまった。
彼はカウトーンの内面で何が起こっているかをほとんど理解できなかった。
人々は繰り返しカウトーンに辛くあたっていた。彼が本当の愛情を体験
した事は一度もなかった。欲求不満と激怒が彼の20年の生涯につもり
積もっていて、おそらく誰かがそれに火をつけたのだろう。
数週間後、ペリーも誰がこれに責任があるかを知った。ウィルサル・セル
は、ペリーへの彼の憎しみが一人の命を失わせた事を認め、自ら出頭
した。
かつての主席教官にたいする裁判は、彼が自らの罪を認めたため、速やかに
進んだ。彼はリハビリテーション医院に遅られ、そこで20年を過ごさねば
ならなかった。数カ月後、ツアントラ・ソリンガーはカウトーン・
ディスペイアーの死を知った。彼女は明らかに失望したようであった。
けれども、ペリーは彼女に彼女がカウトーンの生涯の恋人であったことは
告げなかった。
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Hiroto Matsuura@Osaka Pref. Univ., Energy System Eng.
松浦寛人@大阪府立大学工学部エネルギー機械工学科
e-mail: matsu@energy.osakafu-u.ac.jp
Tel   : 081-(0)722-52-1161(ext.2229)   Fax   : 081-(0)722-59-3340
 
    

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