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Date: Fri, 30 Jun 2000 05:20:07 +0900
From: Hiroto Matsuura <matsu@aeslab.energy.osakafu-u.ac.jp>
Subject: [PR-J 01065] Dorgan-2(?)
To: PR-J@cre.ne.jp
Message-Id: <10006292020.AA03638@157.16.1.71.aeslab.energy.osakafu-u.ac.jp>
X-Mail-Count: 01065

河内のhiroこと松浦です。


お忘れになった方も多いと思いますが(笑)、ドイツ行きの前後
の多忙に紛れてほっぽり出していたDorgon heft #2の続き
です。(何処まで投稿したが忘れたので、重複あるいは欠損
があるやもしれません。)

# これで#2全体の60%。
# 英語版でも第1サイクル(#1〜11)を終わったというのに
# 随分水を空けられたなあ。(自爆)

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ペリーは最終試験の日に自ら現れた。レジナルド・ブルとグッキーはペリーの
傍らに立っていた。試験は理論的パートと実践同様の模擬パートからなっていた。
理論的パートは複雑な作戦からなっていた。試験はほんの数名の候補生だけ
が合格するように設定されていた。模擬戦闘では彼らが互いに戦うことを
要求された。カウトーンはシルケとヘーゲルを「射殺」した。アンドレは
アレンをうまく料理した。カウトーンは二人の間の対決を巧みな策略で
けりを付けた。最後に実践飛行でのレースがあった。惑星系やキャメロット
の異なる区域を飛び回らねばならなかった。再びカウトーンとアレンの
対決になり、再びネレス生まれの男に凱歌が上がった。カウトーンは
過去10年間でもっとも優秀な成績で卒業した。今や最後のパーティが
行われているところであった。
アンドレは平静に戻って二人の女性を連れてパーティにやってきた。
セリナ(Celine')は自分用に、快活なブロンドのマリッサ(Maryssa)は
カウトーン用に。マリッサは均整の取れた体と生まれ付きの美貌を
備えていた。赤と黒の引き締まったドレスは突き刺すようなネックレスと高いヒール
と相まって息をのむ美しさを強調していた。カウトーンはしばらく言葉を
失っていた。これまで彼の題目には女性は入っていなかった。
「これは勝者へのお祝いさ。」アンドレは笑って言った。
ペリーは宴会の前にスピーチを行い全ての候補生を賞賛した。中でも彼は
カウトーン・ディスペイアーにお祝いの言葉をかけ、彼の際立った才能に
賞賛をあびせた。その後でペリーはカウトーンに個人的な会話を
申し込んだ。
「君には感心させられたので私は君を援助したい。」ペリーは一言で
言った。
カウトーンは驚いた。彼はペリーが教官であり相談者であるヴィラサル・セル
を罷免したことで少し憤慨していたからだ。けれども、おそらくヴィラサルは
大風呂敷を広げすぎたのだろう。
「何と言っていいかわかりません。」彼は注意深く答えた。
ペリーは優しくほほ笑んだ。親しみ深い表情は若いキャメロット人に
安堵感を与えた。
「時間をかけて考えたまえ。他により良い選択肢がないなら、私が君の
世話をしようか?私のバンガローに住んでも良いのだよ。」
「おお・・なんと気前の良い。なぜ貴方がそうして下さるのですか?」
「私には君の潜在能力がわかる。グッキーはミュータント能力すら
探知している。」ペリーは説明した。「君がよければ我々でこれを
開花させることが出来る。8歳の少年の夢として、君の最大の夢は
我々の側にいることだと言わなかったかね?今私は君にこの機会を提供
しよう。」
その言葉はカウトーンに影響を与えた。今、19歳の少年はほほ笑んだ。ペリーは
カウトーンに手を差しのべ、彼は受け入れた。
「随分長い間わが家に若者を迎え入れる日を待っていた。といっても
私が年寄りとは思ってくれるなよ。」


                                       *

パーティは今やたけなわであった。ブリーは大いに楽しみウルグス(Vurguzz)
を次々に空けていった。とは言っても口当たりの良い17%のやつで、眠りこけて
しまうような58%の混ぜ物ではなかった。彼はビール、ウイスキーそしてラム酒
も手当たり次第に空けていった。アランだけがこのどんちゃんさわぎで
細胞活性装置保持者に対抗しようとしているように見受けられた。完全に
酔っ払って彼はシルケを引き寄せ彼女と共に自室に消えた。
マリッサはそれまで他の男と踊っていた。カウトーンは戻ってきて
今日のパートナーを探した。彼女は手を振って合図した。音楽のリズムに
あわせて踊る美女を見て彼の心拍数は高まった。彼はこれまで踊りを
習ったことが一度もなかった。そのようなものにはお金をかけていなかった。
彼にはこれまでダンス教室に一緒に通うようなガールフレンドもいなかった。
まごつきながら彼はほほ笑みかけ、自分の不器用な様を説明しようとしたが
彼女はダンスフロアーに引きずり出して励まして踊らせた。彼は大馬鹿者の
様に感じたが彼の飛び回る様を誰も注目していないようであった。
マリッサは見るからにそれを楽しんでさえいた。
その後m歌が終わって、彼女は疲れてバーに向かった。
3人の男たちが彼女にを誘った。彼女は彼らとちょっと戯れたが
すぐに再びカウトーンに向き合った。彼はなぜこの女性が
自分を気に入っているのか分からなかった。アンドレが彼をほめて
いたのに違いない。
「ペリーはあなたと何を話していたの?」彼女は知りたがった。
「彼は僕に教育と援助を申し出たのさ。僕は彼のバンガローで
住むことになったんだ。」
マリッサは言葉をなくした。
「あなたは本当の英雄よ、おちびさん。」彼女は彼を崇拝した。
彼女は体を寄せつけた。
「そんな人こそ私にふさわしいわ。」彼女はささやきかけた。
カウトーンはほとんどふるえ始めた。彼はちょっと笑ったが何というべきか
わからなかった。
彼女はビールを一びん取って一気に空けた。そうしてタバコを吸った。
カウトーンは煙に咳込んだ。彼女は静かに笑い、ダンスフロアーに
再び彼を引きずり出した。
二人は踊りながら近づいた。
「あなたはこれまで何回寝たことがあるの?」彼女は静かに
たずねた。
「何だって?」
「ベッドのことよ!」
「女性と?」
「女でも、男でも、犬でも、ブルー人でもトプシダーでも、
私は誰とでもオープンよ。」
これを聞いてカウトーンは胃にけいれんを覚えた。テラナーとブルー人が
するさまをほとんど思い描くことは出来なかった。
彼はマリッサの質問にまだ答えていないことを思い出した。
「これまで女性と寝たことはないんだ。男や犬や異星人ともね。」
彼は皮肉に付け加えた。
マリッサは抱擁を振りほどいた。
「冗談でしょ。もう二十になるのに童貞なの?」
「そう・・・だけど?」
彼女は笑い転げた。彼女は彼を笑い飛ばした。始めは彼も笑ったが
連れ合いの良く通るふるまいは彼を不快にした。彼女の笑い声が
大き過ぎて多くの人々がこれに気がついた。
「ご免なさい、でも全くなんてことでしょう。」彼女はあざけって言った。
カウトーンは彼女の馬鹿笑いを共有出来なかった。彼はダンスフロアーで
凍った様に立ちつくした。ロビーが壊されて以来感じたことの無い
ものを感じた。憎悪!
彼はその女を軽べつした。
「どうして彼女は僕を笑えるんだろう?」彼は自問した。「豚のように
不平を言って女とベッドでいちゃつくのに熱心でないからと言って?」
カウトーンは頭を振ってダンスフロアーを離れた。マリッサはとっくに
彼を見捨てていた。彼女は次の候補生に身を委ねて熱烈にキスを交わしていた。
「望むらくは、彼がアッカローリーやヒュプトン人(Hyptons)と寝たことが
ありますように。そうすれば彼女も満足だろう。」カウトーンは思った。
夜は全く荒廃していた。再び彼は他の人が楽しんでいるのに孤独であった。
ペリーはパーティを抜けようとした。彼好みの音楽ではなかったし、
ブリーほどアルコールをのむことを楽しめなかった。
カウトーンは彼に近づいた。
「明日から一緒に住んで良いですか?」
「もちろん。」ペリーはほほ笑んで返答した。「歓迎する。」
「この少年はもっと良い生活をする権利がある。」彼は考えた。
「両親の運命を考えただけでも・・・。」

                                       *

次の何週間かはおそらくカウトーン・ディスペイアーのまだ若い生涯で
最良の時であった。
彼は細胞活性装置保持者が与え、そして教えた贅沢を心から楽しんだ。
彼はダゴルの戦闘術と徒手防御を分子破壊剣の扱いと同様に学んだ。
グッキーは彼のミュータント能力を伸ばそうとしたが、あらゆる憎しみや
欲求不満がカウトーンに残っていることを発見し、中断した。ネズミ
ビーバーはペリーに警告し、カウトーンをまず精神的に訓練すべきだと
考えた。
ペリーはイルトの勧めを受け入れ、カウトーンとの個人的な会話の時間を
多くとった。カウトーンは真の友人を持ったことが無くいつも恥をかかされ
ていたことがわかった。彼は自分が悪い間違った扱いを受けていると
感じていた。それゆえ、彼は多くの人々に対する自然な憎しみを育んで
きた。それにもかかわらず、彼はいつの日にかむくいられることを信じて
人々を助け何か良いことをしたいと思っている。
彼はペリーに多くのこと、例えば、彼の唯一の友達はロビーであったことや
他に友人のいないことを打ち明けた。
二人は居間に腰掛けていた。暖炉のちらつきは落ち着いた光を与えていた。
「時に思うんです、本当の家族がいたらなあって。」カウトーンは言った。
「わかりますか、母と父です。」
ペリーは静かに彼の話に耳を傾けた。
「そして夢に見るんです。理想とする少女と出会い、彼女を家につれて帰り
両親に紹介する様を。そして一緒にクリスマスを過ごすことを夢に見るんです。
実際、僕は楽しいクリスマスを過ごしたことがないんです。」
不死者はカウトーンの肩に手をおいた。
「今年はきっとすごせるさ。」彼はほほ笑んで言った。
カウトーンはそれを切望した。ペリーは知っていた。カウトーンの心の
憎悪は愛情と情愛によってのみ消滅出来ると。
「奇妙ですね。僕は両親を全く知らないのに夢の中では正確に思い描く
ことができるんです。彼らは叔母や叔父とは違っています。彼らは
優しく思いやりがあります。」
「うむ、彼らは実際そうだったよ、カウトーン。」ペリーは答えた。
若いディスペイアーは驚いて彼を見た。
「あなたは僕の両親を知っている?」
「ああ。それほど親しかったわけではないが、彼らは優れた科学者で
素晴らしい人たちだった。」不死者は説明しカウトーンが質問を
続けないように願ったが、彼は続けて言った。
「彼らはどのようにして死んだのですか?叔父と叔母はそれについては
ほとんど話してくれませんでした。彼らはある事故の犠牲になったと
言うことですが。」
ペリーはいつかこの質問が来るのではないかと恐れていた。
「そう、その通りだが・・・。」ペリーは実際のところ嘘なのかどうか
知らずに嘘をついた。話題は不快なものになった。
「彼らに何が起こったのですか?」
「私も正確には知らない。わかっているのは乗員が惑星ネレスで事故で
死んだことだけだ。君だけが生き延びロボットによってキャメロットに
つれて来られたのだ。」
ペリーは何か嘘をついていると考えると良い気がしなかった。しかし
彼は少年を恐ろしい真実から遠ざけようとした。いずれにせよ
彼らはそれほど知っていたわけではないのだ。4人のキャメロット人が
事故と見なされた奇妙な状況下で惑星ネレスで死んだ。残りのキャメロット
人たちはキャメロットに帰還しようとした。しかし、宇宙船が軌道に到着した
時には、明らかに工作ロボットに殺された死体だけが見つかった。
唯一の生存者は当時まだ小さな赤ん坊だったカウトーンと気の狂った
ジル・リーカンという女性だけであった。ネレス人たちの話によると
カウ・トーンという名前の異人がかかわりがあったが、キャメロット人
たちの出発の直後に姿を消して以来、再び姿を見せたことはない。
彼はカウトーンにこれら全てを話せなかったしそのつもりもなかった。
彼は別の話題に興味を引き付け、その夜を落ち着いて過ごすことが出来た。

                                       *

カウトーンにとって特別な日はNGZ1282年7月22日の早朝に始まったが、
彼は運命的な出会いを予想もしていなかった。彼はその夜、キャメロット
のインターネットでネットサーフィンをしていた。彼はやはりポートアーサー
から来ているツアントラと言う名前の少女のメッセージを受け取った。
彼は彼女の書き込みに好意を持った。彼女は率直で開けっ広げな
性格のようだった。カウトーンは勇気を振り絞って、一緒に映画に
行くことを持ちかけた。彼女も反対せず、彼らは8月7日のデート
の約束をした。
カウトーンは映画館に1時間も前に到着し落ち着き無く、心臓を
ドキドキさせて入り口ホールに腰掛けた。彼は長いブロンドの髪で
黒い服の女性を探してまわった。何人かの女性が傍らを通りすぎた
が彼女では無いように思った。一人の少女が彼に手を振った。
あれが彼女だった。彼は一目ぼれしたわけではないが、彼女は
非常に可愛かった。
「ハーイ、私、ツアントラ。」彼女は心に直に響くような声で話始めた。
彼女はタバコを吸った。彼は非喫煙者だったのでそれは好きではなかった。
かってペリーが言ったことには、人々がもっと敏感であった時期が
あったにもかかわらずタバコは再びファッションになってきている。
彼女は長い癖のない黒ブロンドの髪をしていた。皮膚は滑らかでひび一つ
ない。体は頑強ではなくほっそりしていた。1グラムの余分な脂肪もなかった。
カウトーンが気付いた唯一の点は少し長すぎる鼻であった。それは決して
醜い効果を持たなかった。彼女と映画館で過ごせは過ごすほど彼は
彼女が好きになったが、まともな会話を始めるには内気過ぎた。おまけに
彼は女性と過ごした体験が無かった。彼は彼女に何と言うべきかを
知らないだけであった。
さらに残念なことに彼女からイニシアティヴを取ることも無かった。
彼女はカウトーンの内面の緊張を知りもしなかった。
彼らは映画「Y-ファイル」が終わった後、町をしばらく散歩した。不幸にも
カウトーンは朝早く起きなければならないので夜中にはバンガローに戻らねば
ならなかった。彼らは地球のオペラを写しているホログラムスクリーンの
前でたちどまった。ツアントラは大層興味を示したようだった。
古いテラのイタリア語で歌われていたのでカウトーンには一言も
理解出来なかった。
「一体全体あれは何だい?」彼は知りたがった。
「愛・・・!」彼女は静かに答えた。
カウトーンは返事をしなかった。
「愛・・・一体それは何だ?誰も僕を愛してくれたことは無かった。」
彼は思った。彼はツアントラを見た。彼女は全く可愛かった。心臓が
早く鼓動した。「彼女が僕を愛してくれたなら。聞くのが怖い。
時間を置くべきだ。彼女は逃げ出したりしないだろうから。」
彼らはさよならを言った。カウトーンは自分自身と内気さに腹をたてた。
彼は彼女を失っていない様に望んだ。しかし彼の恐れは根拠のないもの
であった。
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Hiroto Matsuura@Osaka Pref. Univ., Energy System Eng.
松浦寛人@大阪府立大学工学部エネルギー機械工学科
e-mail: matsu@energy.osakafu-u.ac.jp
Tel   : 081-(0)722-52-1161(ext.2229)   Fax   : 081-(0)722-59-3340
 
    

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