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Date: Mon, 11 Sep 2000 16:23:52 +0900
From: T.S <takeco@mb.neweb.ne.jp>
Subject: [bun 00474] それは確かにキラリと光った
To: <bun@cre.ne.jp>
Message-Id: <008101c01bc1$6ed58920$c85fe6d2@computer>
X-Mail-Count: 00474

「それはたしかにキラリと光った」
  (7月上旬、掲示板上でのいざこざに対する終息文を推敲しました)


 最近どうにも調子が悪かった。これが「スランプ」というものなのかと
思った。あんなに大好きだった作文がこれほど億劫になるとは…。
自分でも信じられなかった。
 言いたいことが伝わらない。ギャグは外す。焦って説明しようとして
ドツボにはまる。一体なんなんだろう。バイオリズムが
下がってるんじゃあないかと疑ってしまう。それとも天中殺?

 先日読んだ本の中に、こんな一文があった。
《私たち小説家は、懐中電灯を手にして暗闇の道を
捜し歩いている人のようなものだ。あるとき、ビール瓶のかけらが、
懐中電灯の光りを受けて強くきらめく。そのとき私は、材料と共に
主題を発見したのである。》
 字を目で追っても、文章が実感として伝わってこなかった。
似たような経験がなかったからだ。
「へ〜〜〜、そうなんだ。面白いこと言うね、あはは」と
他人事で済ませてしまった。

 ここ1〜2日の掲示板のやり取りは、初めての体験で辛かった。
うまく伝わらないというもどかしさ。自分は本当に相手の言うことを
理解できているのかという不安。でもどうしても私の考えを伝えたい
という強い欲求。もがけばもがくほど泥沼の中に沈んでいってしまう
ような恐怖。「もうだめだ。終わってるよ」という自己嫌悪。
 しかし私は今朝、ドツボの泥沼の中でもがきながら、
キラリと光る《何か》を発見した。夢中でもがいていた私は立ち止まり、
凝視した。確かにさっき、キラリと光った。
…あっ!見つけた。これだ。やった。

 私は何のために自己表現しようとしているのか、どうやらちょっと
見失っていたようだった。目先のことに囚われすぎていたのだ。
何を主張したいのか、なぜ主張したいのか、一生をかけて何を作品に
投影してゆくのか…。私の文章にとって「命」とも言うべき部分を
見失ってしまっていたのだ。スランプで身体の中にパンパンに
詰まった言葉がこれでもうすぐ流れ出してくる、
そんな兆しが出てきた。

S.T


    

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