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Date: Tue, 18 Jul 2000 16:33:33 +0900
From: "Take-chan" <takeco@mb.neweb.ne.jp>
Subject: [bun 00451] 「拝み屋さん」
To: <bun@cre.ne.jp>
Message-Id: <002f01bff08a$a807cda0$3b08ead2@computer>
X-Mail-Count: 00451

★「これも修行」と恥をさらします。文は他人の目に触れる事が上達の早道、
そのように考えております。感想をいただけたらとっても嬉しいのですが…。
全文は五回にわけて送信します。よろしくお願いします。
…それにしても恥ずかしいよこりゃ……        (たけちゃん)



「拝み屋さん」

 前厄になったとたん大病で入院。主婦の民子はすっかり迷信深くなってしまった。
あれから一年が経った。本厄を迎える今年、完全に気持ちを切り替えることが民子に
は出来ない。というわけで日課である朝のワイドショーを見ながら、今日も芸能人の
訃報にシンミリとしているのだった。

「あらま、この人も逝っちゃった。アラアラ、まだまだ若くてキレイだったのにね
え。人生なんてわかんないもんねえ。病気ってこわあい」

 まだ朝ゴハンが終わったばかりだというのに、オセンベをバリバリかじりながらお
茶をガブガブ飲む。最近ちょっと太ったようだ。食べ物をやたら食べるようになった
からだ。口をひっきりなしに動かしながらも民子の目はテレビにクギ付けである。だ
が頭の中は不安の黒い雲でいっぱいに覆われてしまっている。民子は自分の病気の再
発が心配でたまらなかったのだ。
 テレビの後の電話も日課である。相手は大抵母親だ。民子は直前に見た訃報を語り
つつ自分の不安をもまくしたてた。年老いた母親がうんうんと頷きながら言った。

「そういう時は拝み屋さんに観てもらうといいのよ」。

 良く当たるという評判の拝み屋さんを紹介するから、と母親は続けた。相談者が1
しか話さずとも、見えない誰かから話を聞いて10を知る。知る人ぞ知る拝み屋さん
なのだそうだ。民子は受話器をぐっと握り締めた。おせんべの粉がポロポロと落ちる
のもかまわず。
 数日後、民子は流行から大分外れた化粧と格好をして、いそいそと家に鍵をかけ
た。母の勧めに従って有名な「拝み屋さん」のもとを訪れるのである。初秋の昼下が
りのことだった。

……続く……



    

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