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Date: Fri, 12 May 2000 17:55:00 +0900
From: "Take-chan" <takeco@mb.neweb.ne.jp>
Subject: [bun 00439] 改作:かけざん九九
To: <bun@cre.ne.jp>
Message-Id: <003f01bfbbf4$0853fec0$9a5fe6d2@computer>
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 小学二年生の沙織がリビングで宿題をしている。このくらいの年の子は
なぜかみんな食卓で宿題をしたがる。食卓にノートを広げ、独りで
ブツブツと念仏らしきものを唱えながら、目を宙に泳がせている。
父親の惣一はソファにねころんでナイター観戦、母親の孝美は
ファッション雑誌を何やら熱心に読んでいる。
 沙織が突然くるりと振り向いて、孝美に問い掛けた。
「ママ、掛け算を暗記しないといけないの。だから問題出して?」
 孝美は手にしている雑誌に目を這わせながら
適当に問題を出しはじめた。
「サンゴ」
「う〜〜んと、ジュウゴ」
「ハチシチ」
「ゴジュウロク」
「クシ」
「サンジュウロク」
「…じゃあ、シチシチ」
「シジュウク」
「ブー!!間違いだよ」
「え?…じゃあ、シジュウニ?」
「ブー!!」
 黙ってテレビを見ていた惣一が、たまりかねて口を挟んだ。
「おい、孝美。間違って憶えるからからかうのはやめろよ!!」
「…え?何?」
 孝美は初めて雑誌から目を上げ、夫を見やる。夫がなんのことを
言っているのか、皆目見当がつかないといった風情だった。
「・・・なんのことを言ってるのかわかんないの?お前さ、子供の頃、
七の段をスムーズに憶えらんなかったクチだろ?」
 孝美の顔がぱあっとあからんだ。パタリと雑誌を閉じて背筋を伸ばし、
ちょっと口を尖らせながら言い返す。
「ええ、そうよ。その通り。だってぇ。掛け算九九って、たっくさん憶えなきゃ
ならないのよ?キュウジュウキュウも憶えていられないって!」
「・・・お前・・・、かけ前九九って、いくつあるかもう一度言ってみろよ。
えっ?ククいくつだぁ?」
 あっと口を押さえて孝美は早口で言った。
「ハチジュウハチだってことくらい知ってたのっ!単なる言い間違いだって!」

オワリ

単なる家庭内の笑い話から「小作品」にするために登場人物を固有名詞に変え、
ディテールをちょこっといれました。そうすると今度はオチが弱くなってしまいまし
た。
オチを変えたのですが、まだ弱い。これからもうちょっと話の構成(オチも含めて)
をいじってみたいと思います。



    

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