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Date: Mon, 27 Dec 1999 23:14:48 +0900
From: "okaukio+mls" <jtz4046@e6.mnx.ne.jp>
Subject: [bun 00400] 週刊おかゆきお 第2版
Message-Id: <199912271412.XAA09078@e6.mnx.ne.jp>
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週刊おかゆきお
                       月曜発行
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 今週は2本立てです。
空飛ぶ葉巻 	その4 
明鏡のラビリンス 	その2

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	空飛ぶ葉巻	4
		おかゆきお

「ところで、なにかわかりましたか?」
 研究者らしい若い男が、ぼそりと、いったのだが。
 酒場の中でみんながびくっとした。巨大な社交場に針が落ちた音
が響き渡ったようであった。
 ママが、さりげなく有線の音量を上げる。
 高川はいろんなたくさんの情報チャンネルを持っているが、この
ところ、問い合わせばかりである。
 しかし、それが、今度は情報になって流れ出すのだ。「なにか、
あったあ?」
「……そう。それじゃ。……ん。またのもうや」

 片田舎村からきのう発信されたのは、正確には「片田舎の村では
異常なし」という一行だけであった。これが一夜あけて、内角総理
大臣に伝わるときには、「日本における葉巻観測はきのうと同様に
変化なし」と、なっている。
 ここで日本政府は特別にかたいなか村に注目していない。

 ところがアメリカでは変化があった。
「ここをごらんください。変化がないというのに、研究体制、警備
体制ともに増強されるばかりです」
「ああ。そのようだな」と、答えたのは大統領である。
「大統領。これは重大情報ですぞ」
 大統領の古くからの友人である特別補佐官は、報告書を突き出す
と、それでも足りないとばかりに、大きな大統領の机に身を乗り出
スように覆い被さった。
 そのとたん。
 机にしこまれた防弾ガラスがくるりッと跳ねあがってきて、補佐
官のハゲかけの頭にバチンとぶつかった。
 インクつぼや広げてあった書類が吹っ飛び、
緊急事態の警報が発せられて、SG(スペシャルガード)が腰だめ
で拳銃を構えながら飛びこんでくる。そのわきを果敢にSC(スペ
シャルクリーニング)がモップを突き出しながら、追い越してきた。

 特別補佐官は書類を突き出した指をくじいて、頭にたんこぶを作
り、ぺたんとしりもちをついて呆然と目の前の机と大統領の方を見
ていた。

 SGが丁寧だが、断固として抱え上げ、部屋の隅に二人がかりで
運ぶと、大統領は苦しそうな声で、(笑いをこらえて)
「すまない。これは大統領機密だから、君にも教えることは出来な
かった」
 と、いった。ぼオッとしている特別補佐官に、さらにもうしわけ
なさそうに、
「それでも、前のはギロチンみたいに突き出した手を、はさんじま
うヤツだったんだ」
 ますます苦しそうに、言い訳した。
「……しかし。そんな、危険な仕掛けを……」
 うめくように特別補佐官・友人は言った。
「ああ…。前任の大統領には机の上に乗り出してくるような友人は
いなかったようだ」
「うーん。……そうですか、……では、はさまれた手は……」
「きれたよ」
「むーーん……」
 真っ青になる友人・補佐官に、
「ジョウクだよ。その、…冗句だよ……」
「…………。……その冗談はいただけませんな」
 と、脅しかけるような補佐官であったが、――ああ、そう言えば
前任の補佐官がクビになってから、しばらく、右手をギプスで固め
ていたっけ。――
 クソー……。あの野郎オレにはなにも言わなかった……。

 特別補佐官は痛むおでこをさすりながら言った。
「この状況で、何も無いと言う事は、なにかの隠蔽工作に違いあり
ませんぞ!」
「そう。……。そうかね。……」苦しそうに大統領は言った。「…
…よし。評価分析チームを集めてくれ……」

 その返事を聞くと、特別補佐官は満足そうに退出した。


		つづく
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	明鏡の迷宮(ラビリンス) 2 
			おかゆきお

 一晩中歩くのだと腹を決めてしまえば、歩くのもまた余裕が出る。
 歩くのは足にまかせて、ゴリラマンの頭脳はかってに働き出した
ようだ。
「いろんな可能性の中から一番おもしろくネェのを選んでやしない
か?」
「いや。そんなことはないよ」
 ロボットボーイは表情を付けるのやめ、冷静な声でいった。
「ほんとにそうかい? それにしても、まったくおまえのシャベリ
は人間そっくりだぜ」
 それから、なにか言いよどんで、一番言いたくないことを何とか
ほかのことに置き換えようとしたような間があいた。
「とくにおれの気持ちを考えることもしないって事なのか?」
「そりゃ……」いかにも時間を稼いでいるようにボーイはいいよど
んだ。

 ――まったく考えないよ。だってぼく達は一体じゃないか――
 ボーイのロジックゲートはフル回転でしていた。これは難問だ。
 ゴリラマンの呑みこんだ気持ちはどの程度のものだったのか?
 どんな方向へ向かう感情なのか? 
 そして、ボーイは前提条件が間違っていることに気付いた。
 ボーイとゴリラマンは当然、別な存在だ。
 ゴリラマンをコントロールしてふたりの利益になるようにしなけ
ればならない。
 ゴリラマンは二人の利益があるから我慢しているのだ。
 今まで不満を感じても口に出さなかったのだ。
 ならば、いわせておこう。
 しかし、ポツリポツリと、恨み言を言いつづけるゴリラマンは一
向に収まる気配も無く。ボーイは二人の関係が壊れる危険を感じた。
 何とかしなければならない。卒業試験で、完全に関係が壊れてし
まうことは珍しくは無い。だからこそ、この誕生試験をいい成績で
通過すれば、もう二度と試されるコトは無いのだ。


「まって。……子猫の鳴き声が聞こえる」
「へん。それがどうしたってんだよ」
「なんか困っている。弱々しい泣き声だよ」
「……ねこ。って、子猫だってなぜわかるんだよ。そんな泣き声な
んかいつだって聞こえてるんだ。ご都合よく! 聞こえてきたよう
なようなこというや!」
「救助信号は優先情報なんだよ」
「……っんな。猫なんか連れて歩けないぞ」
「そんなことないと想うけど、無視するの?」
「え……」
 足を動かすスピードは変わらなかったけど、ゴリラマンは黙った。

		つづく

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 ぜひ、感想などお聞かせください。

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週刊おかゆきお
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