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Date: Sat, 18 Dec 1999 12:25:39 +0900
From: "k" <ui@peach.plala.or.jp>
Subject: [bun 00385] いやいや、まいりました。
To: <bun@cre.ne.jp>
Message-Id: <002f01bf4907$fe5befe0$45a999d2@fmv>
X-Mail-Count: 00385

こんにちは。Kです(「カー」じゃないです
よ)。
言いたくありませんが、青田さんと、きる
しぇさんと、あつしさんの、わたしの発言に
対する返事を読んで少し感動しました。
ひとつ思ったことは、真剣に思ったんなら、
「やっぱ言ってみるもんだな」ということで
す。
このたった三通のメールでそれぞれの方の価
値観、人柄がめちゃくちゃよく伝わってきま
す。
皆さん三人ともが熱いもの、暖かいものを
持っていて私の心をどきどきさせた。
めずらしく無駄ではない時間を過ごせた。
本当にありがとうございました。
ところで本題ですが、まずきるしぇさんの作
品を詳しく批評しないといけませんね。
今わりと冷静になって考えてみれば、私がき
るしぇさんを攻撃するために用いた理屈のほ
とんどがそのまま私自身に当てはまるものだ
ということは悲しいくらいに深く納得でき
ちゃったりします。きるしぇさんが今回の
メールの中で反論してることには、ほとんど
間違いがありません。・・・いや、私として
は本当に恥ずかしい限りです。青田さんの言
うとおり、覚悟が足りない。謙虚さが足りな
い。戒めます。
また話がそれてしまいましたが、ようするに
私が言いたかったのは、あれほどきるしぇさ
んは、人の作品について、主人公の成長がな
いとか、甘えてるだけとか言っておきなが
ら、「あんたの作品だってぜんぜんそんなこ
と書けてないじゃん」ってことなのです。
特に「K」ですが、作品の中で「K」は「「こ
の国は貧しい」と独り言をつぶやいたそうで
すが、私に言わせれば「貧しいのはあんたの
心だ」って感じです。
この作品はただ単にひとつの状況を書いただ
けにしか過ぎません。「Kという人は自分の
身かわいさのあまり、一生皇帝に頭の上がら
ない人生を送りました」おわり。
葛藤がない。
戦いがない。
踏み出す一歩がない。
深い闇がない。
深い悲しみもない。
ぜんぶ「ぺけぺけでした」って言ってるだ
け。
作品を書くことによって作者自身が戦ってい
ない。
きるしぇさんの言うとおり、もちろんこうい
う作品だって小説の世界にもいっぱいある
し、それが悪いわけではない。
私は、小説に比べて、映画やマンガやアニメ
が劣っているなんて少しも思っていない。
ただし、それぞれの媒体には、それぞれの媒
体特有の長所や短所がある。
きるしぇさんの書いている作品には、自ら労
力を使って「読む」ほどのことは何ひとつと
して書かれていない。
小説である限り、それは読者が読まなければ
何もはじまらない。「読む」ということはそ
れだけで「労力」をようする。
きるしぇさんの作品には、「労力」を使う価
値のあるものが何ひとつとして含まれてない
のだから、いや、正確には作者自身が『含ま
せようとして戦っていない』のだから、それ
はもっと、イージーな媒体、より「労力」が
少なくてすむ媒体、寝転がって見てればいい
だけとか、一話読み終えるのに、二分もかか
らないとか、つまり、私の印象ではマンガが
一番適していると思う。
マンガならば、メインターゲットの読者層が
自然、低年齢化してくるので、絵に描いたよ
うな「ストーカー」が、絵に描いたように、
最後に「ピストル」を持ち出しても許され
る。けれど小説の世界でそれをやるのだった
ら、はじめから、「これはお子様向けで
す」って言っておいてからにしてほしい。も
しくは「きわめて想像力の乏しい人向けで
す」と、一言ことわっておいてからにしてほ
しい。だって、そのような注意書きもなし
で、しかも、他人に対するえらそうな批評を
見たあとに作品を読んでしまった私の感想
は、「おいおい、本気で、正気で、こんなも
ん書いて、しかも人に見せようと思ったんか
いな。冗談きついな」というものだったんで
す。マジで時間損したと思った。
まあでも、変なタクシーが出てきて、ドイツ
将校が出てくる話。あれはなかなか良かっ
た。
少しだけ伝わってくるものがあった。
こいつも少しは戦ったのかもしれんなと思っ
た。
何かを伝えようと思ったのかもしれないなと
思った。
でもまだまだお子様だ。歪んだお子様だ。人
の目ばかりを気にしてる。
私の作品には、致命的なほどに、読者に対す
る配慮が欠けている。読者の視線が欠けてい
る(もちろん私自身は十分にヒントを出して
いるつもりだけど)。
でも、人の目を気にするということと、自分
の気持ちを伝えようとすることは決して同じ
ではない。
きるしぇさんの作品には、まさか、誰かに、
本気で伝えようとしていることがあるなどと
は到底信じられない。
正直言って、こんな作品を書いていて、よく
も、人の作品を見て、主人公がどうとか、わ
かったようなこと言えたもんだと、本当に強
く思う。
仮にもし、きるしぇさんが、他人の作品に対
して、主人公に成長がないとか、甘えてるだ
けとか、そのようなえらそうなことを言わな
かったとしたら、きるしぇさんの作品は褒め
られてしかるべきものだと思う。
もちろん、言うまでもなく、致命的に、徹底
的に、一番大切なものは欠けているが、あえ
て「それを書くつもりはないのだ」と言って
しまうならば、間違いなく、どれも良く出来
た作品だ。実に小さなことにとらわれて、大
きなものを見失って、うまく、姑息に書けて
いる。
結論としては、今回の騒ぎに関しては、すべ
て私の幼稚さ、未熟さ、覚悟の足りなさ、辛
抱の足りなさ、などがもたらしたものだと思
う。
それは恥ずかしい。
強烈に恥ずかしい。
でもやっぱり、それを認めてもなお、このよ
うな作品を書いて発表している人間が、あの
ような種類の批判をしてはいけないと思う。
人の作品のことを言う前に自分の作品のこと
を見てみろと思う。
それは今回のあつしさんのメールを読んで
も、やはり同様に強く思う。
おそらく、あつしさんは私よりも大人なのだ
ろう。
残念ながら、私は大人ではなかったのでこの
ような騒ぎを起こした。

まあ、でも、話は変わりますが、こういう
のって楽しいと思う。真剣さがいい。
そう考えてくると、やはり、きるしぇさん
も、ただただ真剣なだけなのだから、私も、
本当に感情的になることなんてなかったんだ
と思う。
恥ずかしい。
本当に恥ずかしい。
本当に浅はかだった。
実は問題のメールを送った直後にもう一度す
ぐに、きるしぇさんの私の作品への批評を読
んでしまって、その時点でさっそく、「し
まった。早まった」と思ったんです。
ただし、間髪いれずに送らずにはいられな
かったというのもまた事実であったわけでし
て、それがまた恥ずかしいのでありますが。
おわり。




    

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