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Date: Fri, 11 Jun 1999 20:05:45 +0900 (JST)
From: toumi-6k@bd5.so-net.ne.jp (yasuko dote)
Subject: [bun 00292] 「陽炎の日」感想
To: bun@cre.ne.jp
Message-Id: <199906111105.UAA15559@mail.bd5.so-net.ne.jp>
X-Mail-Count: 00292

まずは、はじめまして。
先日からこのMLに参加させていただいてます十海といいます。
あつしさんの「陽炎の日」拝読しました。

 一気に最後まで読み通し、また読後感が爽やかで心地よかったです。
「関西弁」の使い方が効果的でしたね。歯切れがよくて軽快な中にも、どこかし
んみりさせられて…とりあえず以下に、「陽炎の日」を読んで感じたことを簡単
に書いてみます。

★魅力的だと感じた登場人物(あるいは実際に会って話してみたいと思った人)
『バア 光』のマスター
登場しているシーンが少ない上にセリフもあまり長くない人なんですが、かなり
しっかりとしたイメージが残ります。バーでなしにバアと言う、どこかレトロな
表記や、オーク材のドアと相まって、喜一がここの時間を、この人と語らった時
間を大事にしている理由を、自分の感覚で自分なりに感じる事ができました。

麻紀
一見無邪気だけど、かなり頭の中はくるくると目まぐるしく色んな考えが回って
る子じゃなかろうか。それでもなお、こんな風に振る舞えるあたりに、同性とし
ても魅力を感じてしまいました、はい。

ネギシくん
いやあ…何て言うか、彼は…その…いい人だ。

★印象にのこった描写
・最初に喜一が帰宅したシーンでの母親とのやりとり
・母が病気になる前と、なった後での布団のにおいの対比
 最初に読んで母親の様子がちょっと変だな?と感じたところに家が荒れてゆく
 様子が端的に示されて、後に具体的な病名や病院での会話が登場したときに、
 ああ、そうなんだと納得できた。
・家具や醤油さしの上にうっすらと降り積もった埃
(些細な事だけれど、母親の病気を強烈に感じた。)
・自分が好きで買ったはずのCDがよそよそしくつまらないものに見えるシーン
・『バア 光』の最後の日に陶器のビアマグで乾杯するシーン

・裸のまま、麻紀がカーテンをあけるシーン
(暗い部屋の中にさっと差し込む日光、光りに浮かぶ麻紀の裸身と、ここはぱっ
 と鮮明に頭の中に映像が浮かんだ。) 

 気になる点は、喜一のモノローグがちょっと長いかな、と。短い段落で区切っ
ていた方が読みやすいかな、と感じました。
 それから渡辺さんも書いておられましたが、確かに病院の対応が素っ気無い、
冷たい印象があります。が、ここは「素っ気無い」対応をしている方が演出効果
的に有効なのではないかとも。『欠けている』部分があるからこそ、読み手は色々
な事を感じられるのですから…(や〜このへんは、私も読んでて怒り爆発もので
した、はい。)

 読み進んでいるうちに、ごく自然に喜一に共感できたような気がします。

 ではこのへんで。

*十海/土手康子:toumi-6k@bd5.so-net.ne.jp*

    

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