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Date: Fri, 11 Jun 1999 18:37:35 JST
From: watanabe-thk@umin.ac.jp (渡辺 宙子)
Subject: [bun 00291] Re: 「陽炎の日」「感想」
To: bun@cre.ne.jp
Message-Id: <06111837.ME2502801@umin.ac.jp>
X-Mail-Count: 00291

 こんにちは、渡辺です。

 あつしさんの「陽炎の日」読ませていただきました。
読み口の良い作品で、一気に読むことができました。
うまいな、面白かったな、と思う反面、ちょっとひっか
かる部分もありました。私は小説の定石など分からない
ので、本当にほんの感想だけ書かせて下さい。

 まず、ぐんぐんと読み進める作品でした。前作の
「プリズム」を皆さんがほめていたのが分かりました。
構成も、話の進め方もうまいのですね。2週間でここ
まで仕上げるって、すごいと思いました。関西弁を使
っているところも、にくい、って感じです。関西弁の
おかげで、話が軽快に進んで行く感じがします。これ
が標準語で語られていたら、暗くて途中で読むのを止
めていたかもしれません。
 第2部最後の「立ち上る陽炎で、黒い袈裟が左右に
揺らめいた。」の表現、好きです。ここで終わっても
良かったのに、と思います。
 『バア 光』、これはモデルがあるのでしょうか。
うちの学校にもこういう店が欲しかったです。

 ひっかかったのは、暗い点。でも、これは好みです
よね。青春って暗い時代なのでしょうから、しょうが
ないですけど。特に第3部、お父さんは落ち込んだま
まだし、無邪気なはずの麻紀は『光』最後の日に現れ
ないし(麻紀の存在が救いになることを期待していま
した)、なんの希望も持てないままお話が終了してし
まうので、個人的に後味が悪いというか、あ、でも、
好みですよね。
 あと、喜一君は19才か20才のはずなのに、老成
していますね。私や私の友達は20才の頃、もっとガ
キっぽかったですが、都会の子って、そうなのかなぁ。
 麻紀の心理がつかみきれないのも、気になりました。
無邪気だとか、あどけないとか、子どもっぽさを強調
しているけれど、「違うの。私だって色々考える時は
あるわ。」の辺りを読むと、それなりに考えているよ
うにも思います。子どもっぽいというのは、喜一の視
点から見てなのかなぁ、でも、本当に子どもっぽいの
かなぁ、最後、なんで彼女は『光』に来なかったのだ
ろう、彼女の性格だったら来ても良いのに、と色々考
えてしまいました。 
 お父さんが、ただただ弱気になるのも気になります。
病院のフォローが悪い。実体験を踏まえてならしょう
がないですけど、病気の患者さんのメンタルヘルスも
大切ですが、家族のそれも重要です。家族が健康で協
力的でなければ、より良い看護はできません。心療内
科や精神科は、最近、その辺りを配慮していると思う
のですが。特に、亭主が付き添いで病院に来ていて、
病状が悪くなっていく奥さんを見て、落ち込んでいく
なんて、病院は何をしているんだ!!とこれが実話な
ら怒り爆発です。

 以上、拙い感想ですいません。何か、後半のひっか
かった点の方が長くなってしまいましたが、ほんと、
読んでいて面白かったです。
   
    

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