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Date: Tue, 1 Jun 1999 21:35:09 +0900
From: "=?ISO-2022-JP?B?GyRCJC0kayQ3JCcbKEIg?=" <sakura_o@ma3.justnet.ne.jp>
Subject: [bun 00224] Re: 感想<初投稿 「プリズム」
To: bun@cre.ne.jp
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X-Mail-Count: 00224

こんにちは 砂倉 櫻です。
「プリズム」読みました。


正直言って、上手です。
オンライン作品を読んだりすると、ときどき「意味不明」な部分
に遭遇してしまうことがあるのですが、そういうこともなく、
主人公の行動や心理が明確に書けていてわかりやすい。
読後感も悪くない。フーゾクの内装や女の子の描写も厚く、それ
も興味を惹く・・・

が・・・。
はっきり言って、「感動しない」とも言えます。
横山さんがおっしゃるように、「この話、上手な人なら誰でも
書ける」という感じです。
「どこかで読んだ気がする」とも言えます。

お話を、なんだか、「空想で書いている」感じがするのです。
フーゾクのところは地に足がついているのですが、「昔、子供の
ころ年上の子供たちにオナニーを強要された」部分が、いかにも
「心理学の本に出ている幼少期のトラウマ」的に書かれている。
なんか、そんなんで読んだのをそのまま引き写したような、そんな
感じさえしてしまうのです。

はっきり言って、「そこまでされた」トラウマがどれほど人に
とって深刻なダメージを与えるか、作者は全然分かってないと
思います。もし自分がそうされたら、どうでしょう。
そうされる原因になった、「父の不在」をそうも簡単に許せます
か?

それから、主人公が男であるだけに、「父がどうして逃げたか」
理解できて、だから許せる、という部分も、どうも薄っぺらい。
それでうまうま許せてしまうのも納得できない。
そこで「お利口に納得して許してしまう」のが、本当にうすっぺ
らく感じてしまうのですよ。
「男だから、女である母に比べて許せる」のは分かる。でも、そ
こに行き着くまでに、何か、もうすこし主人公の無念というか
割り切れなさというかが書けていないと、全然この話は、
「単なる上手」でしかない。

同じように「上手」で、話は違うのにも関わらず、あつしさんの
お話と同じようなことを感じた作品が、以下のURLで読めます。
「彦根市」で募集している、「青年文学賞」の去年の佳作作品
「インディペンデント・デイズ」という作品です。
(このページの下の方をスクロールすると、第9回受賞作という
リンクがあって、そこから飛んでください。フレームなので、
その作品に直接飛ぶリンクが記入できないんです。)
http://www.city.hikone.shiga.jp/event/recruit/work/index.html

横山さんは、「その人でなければ書けない作品」が「プロの作品」
であるとおっしゃいましたが、そのとおりだと思います。

世の中に、「上手」な作品はたくさんありますけれど、俗に言う
「個性」がない場合が多いのです。
作品を頭の中でこね上げていて、自分が本当にそれを体験してない、
というか。
これを言うと、「いや、この作品の主人公の恋人は僕の恋人が
モデルです」とか言われるんだけど、そういう意味じゃない。
(そういう意味だとしたら、実体験を作品にした「ノンフィクショ
ン」しか感動を与えない、ということになってしまいます。)

そうじゃなくて、「普通、こんな状況なら人はこんな風に考え
たり行動したりしないなあ」とか思ってしまう作品があまりに
多いんです。
この作品もそう。
わたしなら、もし、自分が男性で、いじめられっ子で、上級生
にいじめられる、それも「オナニーを強要される」というよう
な性的なものだったら、ものすごく傷つくと思う。
そして、そんな人間だったとしたら、たとえその記憶を忘れて
しまっていても、たとえば、フーゾクの女の子に触られるときも
「一瞬体を固くする」とか、「こんな可愛い娘に触られているの
に、一瞬とても不快感を感じた」なんてことが起こるような気が
します。

自分がこの主人公だったら・・・と考えてお書きではいだろう、
と思うんです。
そして、そう感じさせるのが、「上手」だけど何かが欠けている、
という人の作品なのです。

人間は、他人の気持ちを本当には理解できないけれど、それを
想像することができます。
自分が創造したキャラクターではあっても、「こういう境遇で
こういう性格の人だったらどう行動するだろう、どう思うだろう」
ということを、わたしはいつも考えて書いています。
(そう書いているからといって、まだプロにはなれませんが・・・。)

こういう、「こういう人ならこういう場合こういう風に考え、行動
するだろう」というのには、正解はないです。
作者の人生経験や考え方によると思います。それが、「個性」なの
だと、わたしは思うのです。

それから、原稿用紙の使い方。
いろいろうるさく言う人は、言うと思いますが(一般的に、「」の
いちばん上は字下げしないそうです。「小説の書き方」みたいな
本には、「字下げしてはいけない」と書いています。ですが、これ
は字下げしてもいいし、そういう本もあります。)、そういうこと
は抜きにして、ひとつだけ気になったのは、「・・・」です。これ
はダメです。「……」や「…」を使うべきでしょう。


  ∧ ∧  砂倉 櫻
(≡^・^≡)sakura_o@ma3.justnet.ne.jp
    

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