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Date: Fri, 28 May 1999 22:29:59 JST
From: watanabe-thk@umin.ac.jp (渡辺 宙子)
Subject: [bun 00214] 質問及び投稿
To: bun@cre.ne.jp
Message-Id: <05282229.ME2522501@umin.ac.jp>
X-Mail-Count: 00214

 こんにちは。以前,自己紹介させていただいた「日蝕」を読みかけている
渡辺です。現代文学の中にも,擬古文のような作品がいくつか見られますが,
私としては,「日蝕」はその中では異色の,作者の知識を背景とした,興味
深い作品として読んでいます。
 
 さて,今回のmailでは,質問と作品の提示をさせていただきたいのですが
よろしいでしょうか?質問は,古谷さんに出すべきかもしれませんが。
 一生懸命HELPや古谷さんの説明を読んだのですが,理解力のないせいか,
今ひとつ理解しきれていません。ご迷惑をおかけしましたら,大変申し訳
ありません。
 今後とも,どうぞよろしくお願い致します。

 1)普通の投稿にもヘッダっているのでしょうか。
   HELPを取り寄せた限り,必要ないのかなぁ,とは思ったのですが。
   
 2)このMLの扱う内容は以下のようになっているようですので,誰かの
   作品について意見を述べあうだけではないのですよね。

取り扱う内容
------------
・実際の作品(失敗作含む)にもとづく分析と改定
・創作論・文章論に関する書籍やサイトの紹介
・具体的、あるいは抽象的な創作の方法論・技術についての紹介や検討
・創作・文章作成上の疑問についての質問と回答、それから派生する討議
・情報分散ネットワークを活用した、新世代の文章表現について

 3)対象作品は,どのようなものでも良いのでしょうか。
   
 やり方の検討,もしくは古谷さんの考え方を提示していただく必要がある
のかもしれませんが,たたき台として,以下,以前投稿して没になった童話を
提示いたします。自分で読んでいてもぐっと引き込まれるものがないと思うの
ですが,何が欠点なのか具体的に分かりません。興味があったらお読みいただ
き,鋭いご指摘,ご指導をいただければ幸いです。また,このような形式では
なくて,というのであればその点もご指摘下さい。どうぞよろしくお願い致し
ます。


  「あめやさんのはなし」

 さいきん,さくらがおかの公園に,あめやのおじさんが来ています。おじさんは,ぼう
とはさみときれいな色水をつかい,動物,アニメのキャラクター,乗り物,なんでも作っ
てくれます。
 さいしょ,さくらがおか小学校のせいとが,おじさんのお店の前に集まるようになりま
した。何日かすると,よその学校のせいと,中学生や近所の大人たち,学校の先生も,お
じさんの店に来るようになりました。多い日には,10人くらいの人が,店の前で,おじ
さんのあめを作る様子をながめているのでした。
 お店といっても,よくおまつりに行くとあるような,ちょっと大きめのテントの小屋で
す。おじさんは,小さなトラックにテントとあめ作りの道具をのせて,毎日公園に来るの
です。
 あめはほそいぼうの先についていて,1本150円します。いぬやねこといったふつう
の形のあめが,お店の前に何本かならんでいます。でも,子どもたちがほしいのは,目の
前で作ってもらう自分だけのあめです。150円は,子どもたちにとってはちょっとした
ぜいたくです。だから,おじさんにあめを作ってもらう子は,しあわせです。
「おじさん,あめを作って。」
 おじさんはぶっきらぼうにこたえます。
「どんなあめだい。」
 あめを作ってもらう子は,自分のすきな物で,友だちにじまんできるような物を,いっ
しょうけんめい考えます。おじさんは,どんなにむずかしいちゅうもんをされても,ちょ
ちょいのちょいっと,ぼうとはさみとふでを動かして,すてきなあめを作ってくれます。
「これでどうだい。」
「どうもありがとう。」
 できあがったあめは,ある時はかわいくて,ある時はかっこよくて,まるで本物のよう
にいまにも動きだしそうです。まわりで見ている人たちが,
「すごい」
とか
「すてき」
とほめてくれるので,作ってもらった子は,とくいまんめんです。
 子どもはよろこんでいますが,さくらがおか小学校の先生たちはちょっとなやんでいま
す。ある日,しょくいんかいぎで,あめやのおじさんのことが話題になりました。
「外で作っているけれど,ばいきんが入ったりしないかしら。体に悪いようならば,お店
はやめてもらいたいわ。」
 ある女の先生がいいました。
「あめを持っている子を,いじめる子がいないでしょうか。」
 べつの女の先生がいいました。
「学校にお金を持ってきてはいけないといっているのに,お金を持ってきて,帰り道にあ
めを買っているせいとがいます。」
 ある男の先生がいいました。
「でも,子どもたちはよろこんでいます。」
 べつの男の先生がいいました。
 先生方は,うーん,とうなって校長先生を見ました。校長先生も,うーん,と考えまし
た。ちょっと考えてから,校長先生はいいました。
「まだ,おなかをこわしたとか,あめの取り合いをしてけんかをしたという話は聞いてい
ませんので,しばらく様子を見てみましょう。でも,おなかをこわした子どもがいたら,
すぐにほうこくして下さい。それから,一回家に帰ってから,あめやに行くように,それ
ぞれのクラスで注意して下さい。」
 そして,校長先生はほかの先生方に聞きました。
「この中で,そのあめやに行った先生はどのくらいいるのですか。」
 すると,なんとほとんどの先生が手をあげました。
「とても,なつかしい感じがするんです。」
 ある先生がいいました。校長先生はにこにことわらいました。
 しょくいんかいぎはぶじにおわりましたが,その数日後,また,あめやのおじさんにか
んけいする大じけんがおこりました。なんと,となり町の小学校の女の子が消えてしまっ
たのです。そして,あめやのおじさんが女の子をゆうかいしたのではないかといううわさ
が広まったのです。
 さくらがおか小学校は,女の子が消えたじけんの話でいっぱいです。2年1組では,う
わさずきのさきちゃんのまわりに女の子たちが集まって,話をしています。
「きのう,おじさんのところにけいさつが来ていたよ。」
「そうそう,あめやのおじさんが行く町では,かならず子どもが一人消えるんだって。そ
して,子どもが消えると,いつのまにかおじさんもいなくなっているんだって。」
「あのね,女の子がいなくなる前に,ねこが何びきかいなくなっているんだよ。そして,
ねこがいなくたった次の日に,そのねこにそっくりのあめが,おじさんのお店で売られて
いたんだって。」
「あ,そのねこ,知っている。みけねこでしょ。さいきん,見ないと思ったんだ。」
「そういえば,きのう,かわいい女の子のあめがお店にあったよ。」
 話をしていた女の子たちは,そこで顔を見合わせました。なき虫のえみちゃんが,なき
そうな顔でいいました。
「ゆうかいされた子,あめにされちゃったのかなぁ。」
「そんなことできるはずがないだろ。」
 とつぜん,そばで遊んでいたりょうくんが口を出しました。そして,いっしょにあそん
でいた男の子たちと,さきちゃん,えみちゃんたちにいいました。
「よし,今日みんなで,おじさんの店にたしかめに行ってみようぜ。」
 男の子たちはおもしろそうに,さんせい,といいました。女の子たちはちょっとしんぱ
いそうに,どうしようかとそうだんしました。 その日のごご3時30分,おじさんの店
のまわりに,2年1組のせいとが8人ほど集まりました。おじさんはいつものように,ぼ
うをくるくると動かしてあめを作っています。
 「よし,おれ,あめを買ってくる。」
 りょうくんは,150円をにぎりしめて,いいました。
「おじさん,あめを作って下さい。」
「どんなあめを作ってほしいんだい。」
「おれの形をしたあめを作って下さい。」
 2年1組のともだちが,守るように,りょうくんのまわりに集まります。だって,りょ
うくんがあめにされてしまったらたいへんですから。
「ぼうや,目の前にいる人をあめにするのは,むずかしいんだぞ。」
 おじさんの目が,ぎらりと光ったように見えました。みんなは,むねがドキドキするの
を感じました。
 さっそくおじさんは,まだ形になっていないあめのついたぼうを取り出しました。りょ
うくんもみんなも,おじさんがあめを作るようすをじっと見つめています。2本のぼうを
くるくるまわして,はさみでちょきちょき切って,色をつけて,いつのまにか,りょうく
んにそっくりのあめができあがります。
「できあがったよ。」
「どうもありがとう。」
 それは,本当に今にも動き出しそうな,りょうくんのミニチュアでした。
「うわぁ,そっくり。とってもかわいいね。」
 思わずさきちゃんが,いいました。
「りょうがここにいるのに,そっくりのあめができるじゃないか。」
「やっぱり,あめにするためにねこや女の子がさらわれるといううわさは,うそだったの
ね。」
 おじさんが聞いていることもわすれて,みんなが口々にいいました。みんな,うわさが
うそだと分かって安心しました。だって,おじさんは,りょうくんにそっくりなあめを,
りょうくんをさらわずに作ったのですから。
 次の日の朝の新聞に,ゆくえふめいになっていた女の子が見つかった,というきじがの
りました。おじさんがお店をだしている公園のベンチにねかされていた女の子を,夜,会
社帰りのサラリーマンが見つけたというのです。女の子は,ゆくえが分からなくなってい
た3日間のことを,まったくおぼえておらず,はんにんのそうさはこんらんしているとの
ことです。
 学校では,りょうくんがみんなと話をしています。
「ほんとうなんだよ,家に帰ってお母さんにあめを見せようとしたら,ぼうだけになって
いたんだよ。」
「りょうくんが食べちゃったんでしょ。」
 さきちゃんがいいます。
「食べてないよ。本当にあめだけが消えちゃったんだよ。」
 さきちゃんが,ちょっと考えてからいいました。
「ねぇ,ゆくえふめいになった女の子が,あの公園で見つかったでしょう。りょうくんの
話も,たしかめてみたいし,もういちど,おじさんの店に行ってみない。」 
 そこで,りょうくん,佐々木くん,さきちゃん,えみちゃんは,今日もおじさんのお店
に行くことにしたのです。
 あめは買わないで,帰り道に通るだけにしよう,と4人が公園の前を通ると,そこには
おじさんのすがたもおじさんの店もありませんでした。おじさんの店のあった場所はがら
んと空いており,ただ,ねこが1ぴきこちらをじっと見ているのでした。
 さて,みなさんはこの話をどう思いますか?

 おしまい
    

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