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Date: Tue, 29 Jan 2002 23:49:32 +0900
From: soundoff <netmel@mbp.sphere.ne.jp>
Subject: [bun 01017] 春のはじめは嵐と寒さ
Message-Id: <200201291452.XAA03970@mbp.sphere.ne.jp>
X-Mail-Count: 01017

	 みなさん、こんにちは。
 まだまだ寒いですね。陽ざしはだいぶ強くなってきたようです。
 まだまだ続きます。読んでください。



わたしの恋の終わりは始まり  -1h  おかゆきお


「いらっしゃい。わあ、コーラ君も一緒なのね。さあどうぞあがって」
 コーラ君。クラス会で託された手紙を渡したら帰るつもりだった。まあ、カルピスちゃんが由乃ちゃんと仲良しなのだからすぐに帰らないだろうとはわかっていた。でも、カルピスちゃんとコーラ君のあいだならサヨナラに遠慮は要らない。気楽にさよなら。それじゃまたあとで。特別カルピスちゃんのほうに用事でもあれば別だが気楽にわかれることが出来る。だからあとはカルピスちゃんに任せてさようなら。するつもりだった。
 ところが由乃ちゃんの歓迎にしまった。と後悔するコーラ君でした。
 トラに睨まれたねずみみたいなものか、とにかく由乃ちゃんは歓迎一色ですぐには帰れない。ああ、これは大変な事になった義理の世の中はつらい。義務を果たさなきゃならない。クラスのみんなんから託された気持を届けるのだ。なんて義務感も心の底にあってぐずぐずと二人のあとをついて由乃ちゃんの家にあがりこむことになって。どうも居心地がわるい。コーラ君です。

 しかし、コーラ君についている悪魔はフル回転で働いています。
 いきなり、この家の何かが悪魔に語り掛けてきました。

「光がこの森の中にもさしこんできたのです。何処へ行くのか気持ちが定まらずただぐずぐずしていたんです」
「光がさしこんで来たんです」
「光がわたしにも」
「導かれて」
「光が」
 悪魔も軽くこんにちはと挨拶した。気持ちはわかったどこにも行きたくなかったんだろ。いったいどうしたと言うんだ。この家にたどりつく前にはどこに居たんだ。聞かせてくれ。

「この近くに古い塚があります。恋人はここで会おうといった。会おうといって恋人と別れたのです。ああもう一度会うまでわたしは動けなかった」

 まるで別世界だ。重層世界。だな、時間を超えて古い昔の事件につながってしまっている。
「少年よ。ヒマそうだな。この娘に集中して印呪を結べるかい」悪魔はコーラ君に語り掛けた。
「うるさいな。二人の会話を聞いているんだよ」
「何を言ってるんだ。いまにも睡眠状態に突入始祖大明神だぞ。ほら、眠気座間市にやってみろよ。ほらほら、」

 コーラ君。しぶしぶ、由乃ちゃんのほうを見ながら印呪を作ります。
「あら、なにやっているの」上機嫌な由乃ちゃんの興味津々のはしゃいだ声の質問が出ました。
 眠気ざましと悟られたくないコーラ君。ぐっと組んだ掌に力をこめます。意味はわかりませんがかっこいい。
「コーラ君は教会の子なんでしょう」と由乃ちゃんが聞きます。
「うん。そうだよ」
「教会の子がこんなことしていいの」由乃ちゃん楽しそうに聞きます。
「いいんじゃない。こっくりさんもやってたよ」
「えーッ。男の子がぁ」由乃ちゃんは興味津々ほほを染めてこっくりさんのことを聞きたがります。カルピスちゃんは。ずいぶん昔の事だなぁ。と思い出したのですが言葉に詰まってしまった。あの時何か黒い影のようなものが3人の囲んでいるテーブルの周りを覆ってテーブルの上の白い紙だけが光っていた。怖かった。
「ね、教えてこっくりさんに何を聞いたの」
 さあ。なんだったかなぁ。カルピスちゃんは遠い目になって回想してみますが。なに一つ思い出せません確かにこっくりさんやってたことは目に浮かぶのですが。
「なんだったかなぁ。思い出さないや」
「そうっか。思い出せないくらいなら大切なことでもなかったんだね」
「うん。でもこっくりさんが降りてきたのだけはしっかり覚えているなあ」
「降りてきたのはどんなこっくりさんだったの」
「う〜ん。なんかちがう感じの力みたいで仲間じゃない。と相手にされなかった。でも怖かった。怖かったけどまたこっくりさんやってる娘もいたけどわたしはもうそれっきりこっくりさんはやっていないわ」
「怖いけど不思議なことってあるよね」
 なんだか今日の由乃ちゃんはいつもと違います。
 コーラ君は手持ち無沙汰か両手を胸元で組んだり解いたり。いつもだったら、帰りなよと声をかけるカルピスちゃんですが由乃ちゃんの顔がうれしそうなので、ついついコーラ君の無聊を無視している。コーラ君もなんとか居眠りもせず行儀よくしている。
「ね。この町に住むのは初めてなんでしょう」とカルピスちゃんは質問しました。
「ええ。おばあさんの家だから遊びに来た事は何度もあるけど」
「それじゃあ。ちょっと散歩しない」
「えっ。嫌だなぁ」さっきまでの上機嫌はどこ行ったのか、渋り出す由乃ちゃんです。
「この近くの公園に行こうよ。史跡公園だよ」コーラ君が言いました。



 にきぎやかな街からちょっと歩いたこんな近いところに鬱蒼とした暗い森のあるのは以外だった。
 そこには隠すように苔むした古塚がひっそりと息を潜めていた。

「どうだい何か感じないかね」と悪魔が言った。







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おかゆきお    
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